実施 2024.08 ・ 更新 2026.08.17
返信テンプレ5,000件超を生成AIで検索、星野リゾートの新人が早期デビュー
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- メール対応がベテラン頼みになっている
- 過去の文例を探すのに時間がかかる
- 新人が独り立ちするまでが長い
どのようなAIの取り組み?
5,000件を超える返信テンプレートの検索と返信文の下書き作成を生成AIに任せ、新人オペレーターの早期戦力化につなげたAI取り組み
業種
宿泊施設運営(観光・サービス)
取り組み領域
宿泊予約センター/メール問い合わせ対応
使ったAI
生成AI搭載のオペレーター支援ツール「KARAKURI assist」
主な成果
新人が早期に業務デビューし、ベテランを超える数のメールに対応
星野リゾートの宿泊予約センターが、メールでの問い合わせ対応に、カラクリ株式会社の生成AI搭載オペレーター支援ツール「KARAKURI assist」を採り入れた取り組みです。長年かけて積み上がった返信文のテンプレートは5,000件を超え、ブランドや施設ごとに入り組んだ階層で管理されていました。導入後は検索機能でテンプレートを呼び出せるようにしたうえで、生成AIが社内ナレッジを参照して返信文の下書きを作り、新人が書いた文章を校閲する役割も担っています。夜間や休日といった就業時間外に返信文を作り貯めする運用に加え、「OMO」「界」「BEB」の3ブランドでは専門チームを設け、食事や営業時間といった普遍的な問い合わせへの自動返信で正答率80%を目標に掲げて運用が始まっています。
出典:星野リゾート全施設の宿泊予約センターが、生成AI導入で顧客対応力を強化 | カラクリ株式会社のプレスリリース 発行元:カラクリ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
星野リゾートの宿泊予約センターは、電話対応の効率化やAIチャットボットの活用によって生産性を高めてきた一方、メールでの問い合わせ対応は経験のある担当者に依存しやすい状態が残っていました。5,000件を超えるテンプレートはブランドや施設ごとに階層化されており、新人が適切な一通にたどり着いて返信を仕上げるまでには相当な時間を要していました。しかも拠点の拡大にあわせて採用を強化しており、新人が増えていくことが見込まれる状況でした。
編集部の見立てでは、この困りごとの核心は文面の在庫が足りないことではなく、その在庫を使いこなす手がかりが個々の担当者の記憶の中にしかなかった点にあります。5,000件という数はむしろ蓄積の厚みを示すものですが、どの場面でどれを選ぶのかという判断が言語化されないままだと、資産は増えるほど探す側の負担へと姿を変えていきます。採用を強めるほどその負担が組織全体に広がっていく構造だった、と読むこともできるでしょう。
どうやって、うまくいったのか
生成AIに社内ナレッジを参照させたうえで文面を組み立てさせる設計が、この取り組みの土台になっています。汎用的な文章生成にそのまま任せれば、体裁は整っていても自社のルールや施設固有の言い回しから外れた返信が出てきかねません。既存のテンプレートやナレッジを参照元として与えるやり方は、長年積み上げてきた資産を捨てずに再利用しながら、独自の専門用語にも沿わせるための現実的な選択だったと考えられます。
自動返信の対象を、食事や営業時間といった普遍的な問い合わせから始めた線引きも効いています。宿泊の問い合わせには、個別の事情に踏み込む相談から、答えの決まっている確認までが混在しますが、後者に限れば「正解」を定義でき、正答率という尺度で運用の質を測れるようになります。ブランドごとに専門チームを置き、80%という具体的な水準を掲げて走り出す進め方は、AIの守備範囲を管理できる大きさに切り出す工夫といえます。
AIの出力を送信物ではなく下書きとして扱い、人が確かめる位置に置いた役割分担も見逃せません。新人が書いた文章をAIが校閲する使い方は、指導役がつきっきりにならなくても書き方の基準が伝わる経路をつくります。就業時間帯に縛られず返信文を作り貯めておく運用にしても、担当者が業務に入った時点で作業が途中まで進んでいる状態を用意する発想であり、人手を置き換えるのではなく人が着手する地点を前に動かす設計です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
膨大なテンプレートの検索が容易になったことで、2024年4月に入社した新人が早期に業務デビューを果たしています。さらに、新人がベテランを上回る数の問い合わせメールに対応するまでになり、品質の担保とスピードの維持が形になりつつあります。なお、普遍的な問い合わせへの自動返信の正答率80%は、運用開始にあたって掲げられた目標値です。今後は自動化で生まれた時間を、顧客一人ひとりに寄り添う「人間味のある一言」を添えることに振り向け、満足度をさらに高めていく方針が示されています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、答えの材料はすでに社内に大量にあるのに、その所在が個人の経験に紐づいてしまっている業務です。問い合わせ対応に限らず、提案書のひな型、社内規程の照会、修理・保守の回答例など、過去の文書を探す時間が仕事の大半を占めているなら、検索と下書きをAIに寄せる余地があります。参照させる資料の質がそのまま出力の質になる以上、古い文面や誤りを含む文書が現役として残っている環境では、まず参照先の整理から入る必要があるでしょう。
一方で、この事例のように成り立つには、答えが一定に定まる問い合わせと、個別事情の判断が必要な相談とを切り分けられることが前提になります。宿泊のように条件が一件ずつ違い、交渉や例外対応が多くを占める領域まで同じ枠で扱おうとすると、正答率のような指標そのものが置きにくくなります。手始めとしては、直近1か月に送った返信メールを見返し、どれが「誰が書いても同じ内容になる回答」だったのかに印を付けてみる。その割合が、AIに任せられる範囲のおおよその輪郭になります。
この事例は2024年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:顧客対応・サポート
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
カラクリ株式会社
「カスタマーサポートをエンパワーメントする」をブランドパーパスに掲げ、大規模言語モデル(LLM)のカスタマーサポートへの実用化を目指した事業を展開。2018年よりtransformerを用いた言語モデルBERT、2022年からはGPTを含む大規模言語モデルの研究を実施し、カスタマーサポート特化型AI「KARAKURI」シリーズの開発・提供・運営を行う。主力の高精度AIチャットボット「KARAKURI chatbot」は高島屋、SBI証券、セブン-イレブン・ジャパン、SmartHRなどに採用。2018年ICCサミット「スタートアップ・カタパルト」入賞、2020年「Google for Startups Accelerator」採択、2023年「AWS LLM開発支援プログラム」採択。資本金1億円、未上場、代表取締役CEO 小田志門。
星野リゾート
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
