実施 2023.02 ・ 更新 2026.08.17
ATM前の通話を検知率85%で捉えるAI画像分析、ゆうちょ銀行の特殊詐欺防止実証
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- お客様が詐欺に遭うのを防ぎたい
- 防犯カメラが記録用にしかなっていない
- 無人の場所で異常に気づけない
どのようなAIの取り組み?
ATMコーナーの防犯カメラ映像をAIが分析し、通話しながらの操作を捉えて画面と音で警告する仕組みを検証した、特殊詐欺の未然防止に取り組んだ事例
業種
銀行(金融)
取り組み領域
ATMコーナーの防犯・特殊詐欺対策
使ったAI
防犯カメラ映像のAI画像分析(画像認識)
主な成果
通話動作の検知率が約85%まで向上
ゆうちょ銀行は、SocioFuture、日本ATMビジネスサービス、警察庁と組み、ATMコーナーに設置済みの防犯カメラの画像をAIがリアルタイムで分析する仕組みを構築しました。利用者がATMの前で携帯電話の通話動作を取ると、AIがその動きを捉え、ATMの画面に警告を出したうえで警告音を鳴らし、注意を促します。2023年2月から11月にかけて関東圏の複数のATMで実証実験が行われ、社員が実際の画像を確認して誤検知の原因を分析し、AIの学習をやり直す作業が繰り返されました。全国への展開を見据え、警告表示は静止画から動画へ、警告音は機械音から著名人による音声メッセージへと作り替えられています。
出典:pr240304_01.pdf 発行元:株式会社ゆうちょ銀行、SocioFuture株式会社、日本ATMビジネスサービス株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
犯人が被害者に電話をかけ、ATMの前で操作を指示しながら送金させる。この手口が社会問題となるなかで、ゆうちょ銀行は関係各所と有効な対策を探していました。ATMコーナーに防犯カメラが設置されていること自体は、被害をその場で止める力にはなりません。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は、詐欺の兆候を見つけられないことではなく、兆候が表に出てから送金が終わるまでのわずかな時間に、その場で誰も割って入れないという点にあったのではないでしょうか。ATMコーナーは基本的に無人で、行員が常時見張っているわけではありません。カメラの映像は、被害が起きた後に経緯をたどるためには役立っても、進行中の被害に対しては沈黙したままです。手立てがまったくなかったというより、気づく仕組みと止める仕組みが、被害の現場で結びついていなかった。
どうやって、うまくいったのか
詐欺かどうかをAIに判定させず、「ATMの前で携帯電話の通話動作をしている」という一つの外形的な動きだけを検知対象に据えた設計が、この取り組みの土台になっています。誰と何を話しているかを見抜こうとすれば、判断材料はカメラの外側にあり、AIには手が届きません。一方、通話しながらATMを操作するという振る舞いは映像だけで判別でき、通常の利用ではあまり起きない動きでもある。手口の中身ではなく、手口に伴って必ず表に出る動作を拾うという割り切りが、無人のATMコーナーでも成り立つ仕組みへの落とし込みを可能にしたと考えられます。
精度を、最初から備わっている性能ではなく運用しながら育てるものとして扱った進め方も見逃せません。関東圏の複数のATMで2023年2月から11月まで検証を続け、社員が実際の画像を確認しながら誤検知の原因を分析し、その結果をAIの学習に戻す往復が重ねられました。実際に稼働しているカメラが捉える映像は、明るさも人の立ち位置も一定ではないため、現場の映像からしか見えてこない誤検知の癖を一つずつ潰す作業が欠かせなかったのでしょう。
検知の精度と、利用者に気づいてもらうことを別の課題として切り分けた判断も、実装面での要点です。AIが正しく捉えても、画面の警告が目に入らなければ意味を持ちません。だからこそ静止画の警告を動画に変え、機械音を著名人の音声メッセージに差し替えるという、AIの外側にある伝え方の改良に手が入っています。この取り組みが銀行単独ではなく、SocioFutureと日本ATMビジネスサービス、そして手口の実態を把握する警察庁を交えた体制で進められたことも、検知すべき動作の設定から現場の機器での見せ方までを一続きで詰められた背景にあると見ています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験を通じてAIの学習を繰り返した結果、通話動作の検知率は約85%まで向上しました。同時に、警告表示に利用者が気づく割合をどう上げるかが、次の課題としてはっきり浮かび上がっています。この二つが並んで出てきたことは、検知の精度が上がるほど、成否を分ける地点が「伝わるかどうか」の側へ移っていくことを示していると読めます。この結果を踏まえ、警告画面と音声をリニューアルしたうえで、対象となるATMへの全国展開を順次進めることが決まりました。
うちでも使える?
応用しやすいのは、すでに防犯カメラが動いている場所で、避けたい事態が起きるときに決まった外形的な動作が現れる業務です。小売の売場や工場、建設現場のように、危険や不正の直前に人の姿勢や持ち物が普段と違う形で表れる場面なら、同じ考え方が当てはまります。逆に、リスクの兆候が会話の内容や書類の中身にしか出てこない業務では、カメラの映像から拾える手がかりがなく、この方式は成立しにくいでしょう。検知した後に鳴らす警告や連絡先といった「止める側」の仕組みが用意できない場合も、通知が積み上がるだけで終わりかねません。
もう一つの前提は、誤検知を人が確かめて学習に戻す時間を業務として確保できるかどうかです。この事例でも9か月にわたり社員が画像を見て原因を分析しており、その手間を織り込めるかが分かれ目になります。まず試すなら、自社の現場で「これが映っていたら注意が必要」と言い切れる動きが一つでも挙がるかを、カメラの映像を実際に見ながら確かめてみてはいかがでしょうか。
この事例は2023年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
出典・参考情報
発行元:株式会社ゆうちょ銀行、SocioFuture株式会社、日本ATMビジネスサービス株式会社
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