実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.17
ソニー銀行、生成AIの誤情報を抑える回答テンプレートで進めるメール対応の効率化
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 問い合わせメールが増え続けている
- 担当者ごとに回答の質がばらつく
- AIの誤回答が怖くて使えない
どのようなAIの取り組み?
生成AIで誤った内容を含まない回答テンプレートを作り、カスタマーセンターのメール対応の効率化と品質の平準化に取り組んだAI事例
業種
銀行業(金融)
取り組み領域
カスタマーセンター/問い合わせメール対応
使ったAI
生成AI(回答テンプレート生成・検索)
主な成果
安全な回答テンプレートの業務利用を開始し、品質の平準化を推進
ソニー銀行のカスタマーセンターでは、顧客から届く問い合わせメールが増える傾向にあり、回答作成の迅速化と、担当者ごとに生じる品質のばらつきの解消が課題になっていました。同行は株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の協力を得て、メール対応業務における生成AIの活用検証と技術開発に着手します。正確さが強く求められる銀行業務では、AIが事実に基づかない内容を作り出すハルシネーション(もっともらしい嘘を生成してしまう現象)の防止が大きな壁になります。そこで採られたのが段階を踏む進め方でした。過去に高い頻度で寄せられた問い合わせメールのデータを素材に、生成AIで安全な回答テンプレートを作り出し、担当者がそれを素早く引き出せるよう検索精度を高める仕組みも併せて構築。ハルシネーションを回避するこの仕組みは特許出願中で、テンプレートはすでに実際の業務で使われ始めています。
出典:顧客対応業務での生成AI活用開始のお知らせ | ソニー銀行株式会社のプレスリリース 発行元:ソニー銀行株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
問い合わせメールの増加に対して回答作成が追いつかず、加えて担当者の間で回答の品質がそろわない。カスタマーセンターが抱えていたのは、この二つが同時に進行する状態でした。
一見すると片方は量の問題、もう片方は教育の問題に見えますが、編集部の見立てでは、両者は同じ根から伸びています。銀行の回答は、どこまで踏み込んで書くか、どの表現なら誤解を招かないかといった判断の連続で成り立っており、その判断基準が担当者一人ひとりの経験のなかに置かれていた。基準が個人の内側にあるかぎり、経験の厚い担当者は速く正確に書ける一方、そうでない担当者は確認に時間を取られ、書き上がった文面も揺れます。つまり、速さと品質のばらつきは別々の課題ではなく、回答の拠り所が形になっていないという一つの状態が、二通りの症状として表に出ていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
最も効いているのは、AIの出力先を顧客ではなく担当者に向けた切り分けです。生成AIに作らせたのは送信される回答そのものではなく、担当者が引き出して使う回答テンプレートであり、最終的に何を送るかの判断は人の側に残されています。この設計であれば、仮にAIの出力に問題があっても顧客に届く前に止まるため、誤りが許されない業務でも検証を前に進められる。完全自動化を最初のゴールに据えなかったことが、むしろ着手を可能にしたと考えられます。
次に、生成の素材を過去に高頻度で寄せられた問い合わせメールに限定した判断です。ハルシネーションは、AIが答えを持たない領域を埋めようとするときに起きやすい現象ですから、すでに回答の蓄積があり、聞かれ方も答え方も型が定まっている問いに範囲を絞れば、生成物が妥当かどうかを人が確かめられる射程に収まります。安全性を後工程のチェックだけで担保するのではなく、入力段階で扱う範囲を設計しているところに、この手法の要点があります。ハルシネーションを回避する仕組みが特許出願に至っている事実も、汎用のAIをそのまま使うのではなく、固有の仕掛けとして作り込まれたことをうかがわせます。
見落とせないのが、テンプレートを引き出すための検索精度に手を入れている点です。良い文例が用意されていても、探すのに手間がかかれば担当者は自分で書き始めてしまい、品質をそろえる効果は現場に届きません。生成と検索を一続きの仕組みとして組んだことで、テンプレートは資料ではなく実務の道具になっています。研究開発を担う組織であるソニーCSLと組み、検証と技術開発を並行させた体制も、こうした作り込みを可能にした条件と言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
生成された回答テンプレートは実際のカスタマーセンター業務で利用が始まっており、安全性を保ちながら対応業務の効率化と品質の平準化が進められています。今後はハルシネーションをさらに軽減する技術開発を続け、最終的にはメール回答の完全な自動生成を目指す段階です。削減率のような数値ではなく、厳密さを求められる現場でAIの生成物が日常的に使われている状態そのものが、この取り組みの到達点を示していると読めます。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、同じ趣旨の問い合わせが繰り返し届き、過去の質問と回答が記録として残っている窓口です。医療機関や法律事務所、行政の相談窓口、社内のヘルプデスクのように、答えを間違えられない領域ほど、AIに直接答えさせるのではなく回答の素材を作らせるこの形は検討に値します。
一方で、契約内容や交渉の経緯によって答えが一件ごとに変わる問い合わせでは、テンプレート化の効き目は弱くなります。また、この手法は過去データの正しさに全面的に寄りかかっているため、制度改定や商品改定が頻繁な領域では、古い前提のまま固定されたテンプレートが誤りを量産しかねません。作る仕組みと同じだけ、見直して差し替える段取りを用意できるかが分かれ目になります。
手始めとしては、同じ問い合わせに対する回答文を担当者数名分そろえて並べ、どこで表現が分かれているかを見てみてはどうでしょうか。そのズレの正体が、そのまま自社でテンプレート化すべき箇所になります。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:顧客対応・サポート
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
ソニー銀行株式会社
金融・保険業に属する未上場の銀行。代表取締役社長は南啓二、資本金385億円。生成AIなどの最新技術を活用した業務の高度化・効率化に取り組み、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所の協力のもと「生成AI等を活用した業務高度化に関するプロジェクト」を実施している。
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