実施 2024.11 ・ 更新 2026.08.17
回答作成時間を約4割削減、東京海上日動が100万件の応対履歴を学ばせた対話AI
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 専門用語だらけの問い合わせ対応に時間がかかる
- 回答づくりがベテラン頼みになっている
- 過去の対応履歴が探せず埋もれたまま
どのようなAIの取り組み?
約100万件の過去の応対履歴を学習した検索AIと生成AIを組み合わせ、代理店からの問い合わせへの回答作成時間を約4割削減したAI取り組み
業種
損害保険(金融・保険)
取り組み領域
代理店からの照会応答・ヘルプデスク業務
使ったAI
照会応答特化の対話AI(検索AI+生成AI)
主な成果
1件あたりの回答作成時間を約4割削減
損害保険の代理店から寄せられる問い合わせは専門用語を含む込み入った内容が多く、回答を組み立てるまでに手間がかかっていました。東京海上日動火災保険は株式会社PKSHA Technologyなどと組み、2023年2月から自社業務に合わせた大規模言語モデルの設計とプロトタイプ開発に着手。照会応答業務に特化した対話AI「AI Search Pro」を共同開発しました。約100万件に及ぶ過去の照会応答履歴を投入してアルゴリズムを調整し、その履歴を学習した検索AIと生成AIを多段階に組み合わせる構成で回答の精度を高めています。AIは既存の代理店向け照会応答システムの中に直接組み込まれ、生成された回答例は社員が確認・修正したうえで代理店へ返す運用。試験運用と対象商品を広げた検証を経て、全営業部店などへの本格導入が始まっています。
出典:241129_01.pdf 発行元:東京海上日動火災保険株式会社、株式会社PKSHA Technology
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
代理店から届く問い合わせには保険特有の用語が入り組んでおり、一件ごとに文意を読み解いてから回答を組み立てる必要がありました。過去に似た照会があったとしても、その記録は膨大な履歴の中に沈んだままで、実際には担当者の記憶と経験を頼りに書き起こす場面が多かったと見られます。
編集部の見立てでは、ここでの詰まりは問い合わせの件数そのものではなく、答えの材料が社内に大量にありながら、必要な一件へたどり着く道筋が用意されていなかったことにあります。約100万件という履歴の厚みは、裏を返せば人手で辿るには大きすぎる山でもある。専門用語の壁は入口に現れた症状にすぎず、その奥にあったのは、蓄積された知識が個人の頭の中にしか索引されていない状態だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
約100万件の照会応答履歴をそのまま教材に据えた設計が、この取り組みの土台になっています。汎用のモデルに保険の言葉を後から覚えさせるのではなく、現場で実際に交わされたやり取りを学習素材にしたことで、日常的に使われる言い回しや照会の型がAI側に取り込まれます。さらに、履歴を学習した検索AIで関連する事例を絞り込み、そのうえで生成AIに回答文を組ませる多段構えにした点が効いています。探す工程と書く工程を分けたことで、生成AIが白紙から作文する余地が狭まり、根拠となる過去の事例に沿った回答へ寄せやすくなる構造です。
AI機能を新しいツールとして切り出さず、既存の代理店向け照会応答システムの中へ直接組み込んだ判断も、定着を左右する分かれ目でした。別画面のツールを立ち上げれば、社員は従来の画面とAIの画面を行き来することになり、使うかどうかがその人の意欲次第になってしまいます。操作を直感的な範囲に絞り込み、日常の業務動線の上にAIを置く設計であれば、デジタルに強い一部の社員だけの道具にはなりません。
生成された回答例を必ず社員が確認し、必要に応じて手を入れてから代理店へ返すというフローの設計も見逃せません。保険の照会は回答内容がそのまま契約者への説明につながるため、AIが事実と異なる内容を作り出した場合の影響が小さくないからです。AIの役割を下書きづくりまでと定め、最終的な判断と責任を人の側に残した線引きが、精度をまだ読み切れない段階から実務に載せることを可能にしたと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
試験運用ではまず自動車保険に係る照会を対象に検証が行われ、高い精度が認められました。その後、火災保険や傷害保険などへ対象商品を広げて検証したところ、約8〜9割のケースで「AI Search Pro」の有用性が確認されています。定量面では、社員が1件あたりの回答作成に要する時間が約4割削減されました。この結果を受けて全営業部店および代理店ヘルプデスク等への本格導入が始まり、今後はコンタクトセンターの照会応答業務への転用やグループ会社への横展開も見据えられています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、問い合わせと回答のやり取りが記録として残っていて、しかも回答に専門知識が要る業務です。社内規定が入り組んだバックオフィスのヘルプデスクや、製品仕様の照会が集まる技術サポートであれば、過去の応対がそのまま教材になります。逆に、問い合わせが電話や口頭で処理されて文字として残っていない場合、この方式の前提そのものが崩れます。回答が案件ごとの交渉や個別の判断で決まり、過去に同じ答えが見つからない領域も、同様に効きにくいはずです。
もう一つ見落としやすいのが、人が確認するフローを回すだけの余力です。回答案を毎回チェックする体制が取れないなら、正確性を担保する仕組みごと成立しません。まずは、いま使っている問い合わせ管理の画面に回答案を表示する欄を一つ足せるかどうか、システムの担当者に聞いてみるところから。
この事例は2024年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社PKSHA Technology
代表取締役は上野山勝也。複数の大規模言語モデルを統合的にカスタマイズできる環境を提供するソリューション「PKSHA LLMS」を提供し、東京海上日動火災保険と照会応答業務特化型対話AI「AI Search Pro」を共同開発した。開発にあたっては東京海上日動との合弁会社である株式会社AlgoNautと連携している。
東京海上日動火災保険株式会社
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