実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.17
年間約12億円の削減効果、住友商事が約9,000人へ生成AIを定着させた進め方
プロジェクト期間:半年〜 1年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 全社にツールを配ったのに使われない
- メールや資料作成に時間を取られる
- 社員のITスキルの差でDXが進まない
どのようなAIの取り組み?
普段使うOfficeアプリから呼び出せる生成AIを約9,000人へ一斉に配り、社内に活用文化を根づかせたAI取り組み
業種
総合商社(卸売・商社)
取り組み領域
全社の日常業務(文書作成・資料確認など)
使ったAI
Microsoft 365 Copilot(業務アプリ連携型の生成AI)
主な成果
業務時間を月約1万時間削減、年間約12億円のコスト削減
総合商社の住友商事は、社会に新しい価値を生み出す仕事に人と時間を振り向けるため、日々のルーティンワークの効率化に着手しました。選んだのは、普段から開いているMicrosoft 365のアプリケーションと連携し、慣れた画面からワンクリックで使える生成AI「Microsoft 365 Copilot」です。2024年4月、海外グループ会社を含む約9,000人を対象に一斉導入しました。旗を振ったのはIT企画推進部で、使って当たり前の状態をつくることを狙い、活用に意欲的な社員をCopilot Championに任命するなどの施策を重ねています。ITリテラシーに個人差のあった森林資源事業ユニットでは、段階を分けた研修と合宿を経て、実装に向けたルール作りまで現場側で進めています。
出典:コスト削減効果は年間約12億。住商の「生成AI活用」最前線 | 住友商事 発行元:住友商事
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
住友商事が向き合っていたのは、社会に対して新たな価値を創り出す仕事に注力したいのに、メールや会議、資料作成といった日常のルーティンワークが時間を占めてしまうという状態です。しかも事業領域が広い組織では、ITリテラシーの個人差も無視できません。森林資源事業ユニットのように、幅広い年齢層が同じ部門に所属している例もあります。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は作業量の多さそのものよりも、時間の使い方が個人の腕前に左右されてしまう点にあったのではないでしょうか。手際のよい人は資料を素早く仕上げ、不慣れな人は同じ作業に何倍もの時間を費やす。その差が積み上がると、組織全体としてクリエイティブな仕事に回せる時間が読めなくなります。約9,000人という規模で一斉導入という判断が取られた背景には、一部の得意な人だけが速くなる状況を避けたい意図があったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
日々開いているMicrosoft 365の画面から、そのままワンクリックで生成AIを呼び出せる形を選んだことが、この取り組みの土台になっています。これは、新しい道具を覚えるという負担を、既存の業務動線の中に溶かし込む選択です。約9,000人の一人ひとりに別のアプリを立ち上げる手間を求めずに済み、社内に蓄積された膨大なデータを扱える点も、AIと日常業務の距離を縮める方向に働いたと見られます。
ユースケースを配って終わりにせず、使いどころは社員自身に考えさせるという進め方も、定着の質を左右したポイントです。事務局が用意した正解を一律に配布すると、当てはまる業務を持たない人はその時点で離れてしまいます。活用に意欲的な社員をCopilot Championとして任命する仕組みは、推進役をIT部門の外側、つまり実際に業務を回している現場に置くことを意味しており、社内の意識改革を現場発で起こす狙いが読み取れます。
森林資源事業ユニットで採られた、基礎編と応用編に研修を分け、グループワークと合宿での発案を経て、DXワーキンググループでのルール作りへつなぐ段階設計は、リテラシー差のある集団を扱ううえで現実的な組み立てです。幅広い年齢層が同じ研修を一度受けるだけでは、操作を覚えた人と戸惑ったままの人に分かれます。基礎と応用を切り分けたうえで、契約書の比較や業界紙の要約といった自部門の具体的な題材を自分たちで出す場を設ければ、覚えた操作が担当業務と結びつきます。実装に向けたルール作りまで部門側で進める形は、使ってよい範囲を現場が自分で決められる状態をつくります。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
導入後、月間アクティブユーザーは約90%に達し、毎日のように使う社員も2,000人近くに広がっています。業務時間の削減効果は1カ月あたり約1万時間、コスト削減効果は年間約12億円。現場からは、数時間かかっていた契約書の比較や決算書の分析が約30秒で完了するようになったという声が上がっており、タイムマネジメントの改善や、新規事業のアイデア出しが速くなるといった、数字に表れにくい変化も生まれています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、全社員が同じ業務基盤を毎日使っていて、そこにAIを重ねられる環境がある組織です。文書の読み比べや要約のように、部門が違っても形の似た作業が積み上がっている職場なら、この事例と同じ考え方が働きます。逆に、業務が案件ごとの個別対応に寄っていて共通のルーティンが少ない場合や、扱う情報の機密性が高く利用範囲のルールづくりに時間がかかる場合は、同じ進み方にはなりにくいでしょう。推進役を現場側から出せるかどうかも分かれ目になります。IT部門だけで旗を振る体制では、Copilot Championのような役割は形だけのものになりがちです。
小さく始めるなら、この一週間で自分が何度も繰り返した文書の読み比べを一つ思い出し、その作業をAIに任せたときに何を確認すれば安心できるかを同僚と話してみてはどうでしょうか。使いどころを自分で見つける経験こそ、この事例が積み上げたものです。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
住友商事株式会社
総合商社。鉄鋼、自動車、輸送機・建機、都市総合開発、コミュニケーションサービス、デジタル・AI、ライフスタイル、資源、化学品・エレクトロニクス・農業、エネルギートランスフォーメーションなどの事業分野を展開する。森林資源事業ユニットでは、持続可能な森林経営と木材製品の供給をグローバルに行い、植林・育林・伐採、木材加工事業から製紙・燃料用の木質チップ・ペレットのトレードまで手掛ける。
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