実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.17
生成AIで通話後の入力作業を9分から6分へ、生命保険コールセンターの検証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- マニュアルが紙と複数ツールに分散
- 通話後の入力作業に時間を取られる
- 管理者が質問対応に追われている
どのようなAIの取り組み?
生成AIによるナレッジ検索と記録の自動作成で、コールセンターの後処理時間を9分から6分へ短縮した検証事例
業種
生命保険(金融・保険)
取り組み領域
コールセンター/オペレーター支援
使ったAI
IBM watsonx(生成AIによるナレッジ検索・回答生成)
主な成果
通話後の後処理時間を9分から6分へ短縮
はなさく生命保険は、保有契約件数の増加に合わせてコールセンターの運用を見直し、日本IBMの生成AIプラットフォーム「IBM watsonx」を使った業務支援の検証に取り組みました。日本IBMのClient Engineeringチームと共同で、アジャイル開発の進め方によるPoC(小規模な試験導入)を約1か月間実施し、ナレッジ検索・回答生成機能「照会サポート」のMVP(必要最小限の機能に絞った試作)を開発しています。この仕組みは社内マニュアルに加えて約款や厚生労働省の公開情報も参照し、商品改定に合わせて回答内容を自動で更新します。応答記録や対応スクリプトの自動生成も組み込まれ、検証の中でAIの正答率と後処理時間の双方に変化が出ています。
出典:はなさく生命保険株式会社 | IBM 発行元:日本アイ・ビー・エム株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
同社のコールセンターでは、答えの手がかりが紙のマニュアルと複数のツールに散らばっており、オペレーターが必要な情報にたどり着くまでに時間がかかっていました。その結果、判断に迷うたびに管理者へのエスカレーションが発生し、管理者1名が担当できるオペレーターは3名にとどまっていました。もう一方の課題は処理時間で、1件あたり通話が6分なのに対し、通話後のシステム入力などの後処理には9分を要していました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な問題は人手の不足ではなく、応対に必要な知識と記録の作業が、どちらも人の手を経由しないと完結しない構造にあったのではないでしょうか。通話より後処理が長いという時間の配分は、オペレーターの中心的な仕事が「顧客と話すこと」から「調べて書くこと」へ傾いていたことを示しています。管理者1名あたり3名という比率も、指導体制の設計というより、分散した情報を人が肩代わりしていた結果と読めます。
どうやって、うまくいったのか
約1か月という短い検証期間で、いきなり本番システムを作らずMVPまでを形にした進め方が、この取り組みの土台になっています。日本IBMのClient Engineeringチームとの共創という体制のもと、アジャイル開発の手法で業務要件を確かめながら組み立てる方式が採られました。注目したいのは、この検証で業務要件だけでなくシステムの運用・保守性まで同時に天秤にかけている点です。使えるかどうかだけを見て走り出すと、動いた後に維持できないという壁に当たりますが、その判断を検証段階へ前倒ししたことが、試作から先へ進む道筋をつくったと考えられます。
参照先を社内マニュアルに閉じず、約款や厚生労働省の公開情報まで広げたデータ設計も、回答の質を支える要素です。さらに商品改定時に回答内容が自動で更新される仕組みを組み込んだ判断には、改定を重ねる保険商品の性質を踏まえ、精度の維持を人の作業に依存させないという狙いが読み取れます。検索の仕組みは、作った直後がもっとも精度が高く、その後は情報の古さとともに劣化していくもの。更新の負荷を設計側に引き受けさせた点が、一度きりの実験で終わらせない条件になっているはずです。
支援の範囲を「調べる」だけで止めなかった構成も効いています。顧客情報と問い合わせの緊急度に応じて対応スクリプトを自動生成し、通話後には応答記録も自動で作るというように、探す作業と書く作業の両方に手を入れました。個々の機能を足し合わせたというより、1件の応対を始めから終わりまで一続きの流れとして捉え直した設計と言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検証を通じて、当初50%だったAIの正答率は80〜90%まで高まりました。応答記録の自動生成により、9分かかっていた後処理は6分へ短縮されています。管理者側については、エスカレーションの減少によって1名で6名のオペレーターを管理する体制が見込まれる段階で、まだ実現済みの数字ではありません。同社は今後、CRMシステムや音声認識技術との連携を進め、電話を受けて自動で応答するAI(ボイスボット)による次世代のコールセンター構築を目指しています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、答えの根拠になる資料が文書として存在し、その改定のタイミングがあらかじめ決まっている業務です。約款や規程、制度の告知のように更新の発生源がはっきりしている領域なら、この事例の自動更新という考え方をそのまま持ち込めます。逆に、判断の根拠が担当者ごとの経験に散らばっていて文書化されていない場合や、1件ごとに事情の異なる相談業務では、正答率という物差し自体が作りにくく、同じ進め方は当てはまりにくいでしょう。参照させたい情報が紙のままであれば、そこを先に片づける必要があります。
試すなら、直近の応対記録から、オペレーターが上長に確認した質問を数十件ほど拾い出し、手元のAIに同じ質問を投げてみるところから。正しく答えられた割合が、この事例でいう50%の位置にあたります。そこを起点にすれば、精度を上げるために足りないものが具体的に見えてくるはずです。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本IBM
生成AIプラットフォーム「IBM watsonx」やその中心製品「watsonx.ai」を提供する企業。専門組織 IBM Client Engineering が、アジャイル開発の手法を用いて顧客とともに約1ヶ月の共創活動でMVP開発・PoC検証を行い、カスタマー・サービス変革コンサルティングや保険業界ソリューションを提供している。
はなさく生命保険株式会社
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