実施 2018.10 ・ 更新 2026.08.17
AI画像検査で見逃し率0%、トヨタ自動車が熟練頼みの部品検査を任せるまで
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 目視検査の見逃しが怖い
- 検査を任せられる熟練者が減った
- AIの判定理由が分からず任せづらい
どのようなAIの取り組み?
深層学習による画像検査に判定根拠の可視化を組み合わせ、熟練技能に頼っていた鍛造部品の検査工程を自動化して見逃し率0%に到達したAI取り組み
業種
自動車部品製造(製造業)
取り組み領域
外観検査・磁気探傷検査
使ったAI
深層学習の画像検査システム「WiseImaging」
主な成果
見逃し率0%を達成し、検査体制を4名から2名へ
トヨタ自動車の本社工場鍛造部では、フロントハブの外観目視検査と磁気探傷検査(磁力を使って表面の微細な傷を浮かび上がらせる検査)を人の目で担っていました。省人化と人員の再配置が急がれる一方、一般的なマシンビジョンによる自動化では熟練の判断を再現できず、実用化を断念しています。そこで数十社を比較したうえで、判定根拠を可視化できる点と段階的な進め方の提案を評価し、シーイーシーの画像検査システム「WiseImaging」を採用しました。現場の従業員とベンダーの技術者が画像データを集めながら分類方法や学習のさせ方を詰め、判定の根拠を色の濃淡で確認しつつ精度を高めています。既存設備とのつなぎ込みまで一括で行い、検査工程で本稼働に至りました。
出典:トヨタ自動車株式会社 様 | WiseImaging | 導入事例 | シーイーシー VR+R 発行元:株式会社シーイーシー
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
フロントハブの検査は、外観の目視に加えて磁気探傷検査という熟練技能を要する工程を抱えていました。労働人口の減少を見据えれば、この技能を持つ人に検査を張り付けたままにはできず、より価値の高い仕事へ人を動かす必要があります。ただし機械に置き換える試みは一度つまずいており、マシンビジョンでの自動化では見逃し率32%、過検出率35%にとどまりました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは人手の数ではなく、良品と不良品を分ける境目が誰の中にもあるのに、それを設備に渡せる形で外に出せていなかったことにあります。ルールを書き下して判定させる方式が届かなかったという事実は、熟練者が見ている差が「明文化された条件」ではなく「画像上の微妙な特徴」だったことを示しています。数年にわたる自動化の停滞は、技術の不足というより、技能を機械に移す方法そのものが見つかっていなかった状態だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
判定根拠を色の強弱で示すヒートマップ機能を、導入の必須条件として選定段階から据えた点が、この取り組みの土台になっています。数十社を比べる際に可視化機能を評価軸に置いたということは、精度の数字だけでAIを選ばなかったということです。AIがどこを見て良否を分けたのかが画面上で確認できれば、現場は「当たった/外れた」ではなく「見るべき場所を見ているか」で判断でき、学習のさせ方を直す手がかりが得られます。ブラックボックスを避けるという方針が、そのまま改善の速度を決めていたと考えられます。
現場の従業員とベンダーの技術者が組んで、画像を集めながらデータの分類と学習方法を試行錯誤した進め方も要因の一つです。この体制の意味は、人手を厚くしたことではなく、熟練者の頭の中にある良否の見分け方を、教師データの作り方という具体的な形に翻訳する場をつくったところにあります。ルールとして書き出せなかった判断基準を、事例を積み上げる形で機械に移した流れと読めます。
AI単体で終わらせず、既存の稼働設備との連携やつなぎ込みまで一気通貫で手当てし、あわせて部内でAIへの理解を広げる働きかけを事前に行った設計も見逃せません。検査の精度が出ても、ラインの流れに組み込めなければ工程は止まったままです。使われる状態までを射程に入れた組み立てが、本稼働への距離を縮めました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検査工程で本稼働に至り、見逃し率0%、過検出率8%という判定精度に到達しています。二交代勤務で計4名が携わっていた検査体制は2名となり、省人化が実現しました。運用面では、面倒なプログラム設定を伴わず簡単な操作で扱えるため、現場が違和感なく日常業務に組み込める環境が整っています。今後は他の部品への磁気探傷検査の自動化展開や、教師なし学習・転移学習といった学習手法の活用も視野に入れられており、一度の導入で完結させない構えが見て取れます。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、良否の差が画像に写り、同じ形状の部品や製品が繰り返し流れてくる検査です。不良の写真がある程度の枚数集まり、判定の根拠を熟練者が画面上で指し示せる工程であれば、規模が小さくても同じ組み立て方は成立します。判定根拠を確認できる仕組みを選定条件に含めておくことは、企業規模を問わず効いてくる考え方でしょう。
一方で難しいのは、不良がごく稀にしか出ず学習に使える画像が溜まらない工程や、多品種を少量ずつ流していて同じ対象の画像が積み上がらない現場です。打音や手触り、匂いといった画像に写らない手がかりで良否を分けている検査も、この方式の射程からは外れます。既存設備とのつなぎ込みが前提になる点も、見積もりの段階で織り込んでおきたいところです。
まず試すなら、自社で不良と判定した現物を検査担当者に見てもらい、「どこを見てそう判断したか」を写真の上で指してもらうこと。その根拠が画像に写り込んでいるかどうかが、この手法に乗るかどうかの最初の分かれ目になります。
この事例は2018年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社シーイーシー
Deep Learningを活用した外観検査・画像検査システム「WiseImaging」を提供する企業。名古屋にも事業所を持ち、マルチベンダー対応で設備とのつなぎ込みを含む周辺開発まで一気通貫で対応する。
トヨタ自動車株式会社
出典・参考情報
トヨタ自動車株式会社 様 | WiseImaging | 導入事例 | シーイーシー VR+R
発行元:株式会社シーイーシー
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