実施 2025.08 ・ 更新 2026.08.17
シニア層の多い保険窓口に生成AIの電話応答、折り返し対応63%削減の実証実験
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 自動音声だと途中で電話が切れる
- 折り返しの電話対応に追われている
- 高齢のお客様が使える窓口にしたい
どのようなAIの取り組み?
生成AIを使った電話応答で、シニア世代の話すペースに合わせた対話を可能にし、1カ月間の実証実験で折り返し対応の63%削減を確認したAI取り組み
業種
少額短期保険業(金融・保険)
取り組み領域
コールセンター/電話の自動応答
使ったAI
生成AIのAIエージェント型ボイスボット(電話応答AI)
主な成果
1カ月間の実証実験で折り返し対応を63%削減
SBIいきいき少額短期保険は、シニア世代の利用が多い電話窓口の自動応答を見直し、モビルス株式会社が提供する生成AIベースの「AIエージェント型ボイスボット」(電話を受けて応答するAI)を、1カ月間の実証実験として運用しました。あらかじめ決めた質問順と分岐に沿って進むシナリオ型ではなく、相手の話す速さや言い淀みに合わせて対話の運びを変える方式へ切り替え、用件がはっきりしない問い合わせでも生成AIが意図をくみ取りながら必要な情報を聞き出す仕組みを組み込んでいます。あわせて、テレビCMの音声と通話相手の声を高い精度で聞き分ける技術を採用し、通話中のノイズによる認識エラーを抑える設計としました。実証実験では、AIだけで受付が完結した割合と、オペレーターによる折り返し対応の量が測定されています。
出典:生成AI活用の新機能「AIエージェント型ボイスボット」を提供開始、SBIいきいき少短に本導入決定電話口で顧客一人ひとりに寄り添い、人が応対しているような自然な対話で用件を特定し受付完結 | モビルス株式会社のプレスリリース 発行元:モビルス株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
電話窓口ではシニア世代の顧客が中心でしたが、従来のシナリオ型ボイスボットは、話すスピードが遅かったり言葉に詰まったりすると会話を自動的に終了してしまいました。手続きは途中で止まり、顧客はかけ直し、オペレーターは折り返しの電話をかける。この往復が、顧客のストレスと現場の負荷を同時に膨らませていました。背景にはコンタクトセンター業界全体の人手不足もあります。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は入電の多さではなく、機械が想定する話し方に顧客のほうを合わせさせていた点にあります。自動応答が担っていたのは「決められた順番どおりに話せる人」の受付までで、そこから外れた通話はすべて人の仕事として戻ってきていました。つまり、会話が切れた回数だけ人の作業が発生する構造そのものが、負荷の源だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
会話の主導権を機械側の台本から通話相手のペースへ移した設計が、まず効いていると考えられます。シナリオ型は想定される分岐をあらかじめ網羅する作り方をとるため、少しの沈黙や言い直しは「答えが得られなかった」状態として処理されてしまいます。生成AIを軸にしたエージェント型は、発話が途中でも文脈を保ったまま受け答えを続けられるため、話す速さのばらつきが会話の打ち切り理由にならなくなります。速く話せる人に合わせて窓口を設計しない、という判断がここに表れています。
もう一つは、自動応答の担当範囲を「用件の振り分け」ではなく「情報の聞き取り」まで広げた点です。用件が曖昧なときに生成AIが意図を推し量って質問を重ね、手続きに必要な項目を正確に引き出す。証券番号のように一文字の誤りが後工程を止めてしまう情報まで自動応答側で扱う構えをとったことで、通話が終わった時点で記録が使える状態になります。人が引き取る前提を最初から減らしにいった設計と言えます。
環境音への備えを機能の一部として組み込んだことも見逃せません。テレビCMの音声と顧客の声を聞き分ける技術の採用は、実験室ではなく生活の場からかかってくる電話を前提に、認識精度が崩れる条件をあらかじめ潰しておく取り組みです。開発を担ったモビルスが対話の仕組みと音声処理の両面を提供し、事業側が窓口の実態を持ち込む役割分担も、この前提の詰め方を支えていると見られます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
1カ月間の実証実験では、ボイスボットのみで受付が完結した割合が70%を超えました。聞き取った内容が正確に記録されるようになり、オペレーターによる折り返し対応は63%削減されています。とりわけ証券番号の聞き取り精度は高く評価され、音声で内容を確認して直す作業も半減しました。人が引き取る前提だった部分がそのまま縮んだ点に、この数字の意味があります。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、聞き取るべき項目が決まっている電話窓口です。契約番号や住所、日付のように答えの形が定まった情報を集める受付であれば、対話の順序が前後しても最終的に必要な項目がそろえばよく、相手のペースに合わせる方式と相性がよいと考えられます。既存の自動音声で途中離脱が目立つ窓口ほど、改善の余地は大きいはずです。
一方、回答が個別の事情に左右される相談は、この形をそのまま持ち込みにくい領域です。契約内容の解釈や条件提示のように、聞き取りではなく判断が必要な用件は、自動応答だけで完結させる前提を置かないほうが安全でしょう。また、聞き取った情報が基幹システムの項目と結びついていなければ、記録がどれだけ正確でも後工程の手間は減りません。通話環境も見落としがちで、背景音の実態を測らないまま導入すると、認識精度が想定に届かないこともあります。
まずは、自動応答が途中で切れた通話を数本聞き直し、どの一言で会話が止まったのかを確かめるところから。止まった箇所が「話す速さ」なのか「用件の複雑さ」なのかで、打つ手はまるで変わります。
この事例は2025年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:顧客対応・サポート
活用したデータ:音声・音響
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
モビルス株式会社
コンタクトセンター向けCXソリューションを開発・提供する企業。オペレーション支援生成AIサービス「MooA」や、有人チャット・ボイスボットなどのSaaSソリューション「モビシリーズ」を開発し、モビシリーズは500社以上に導入実績がある。東京証券取引所グロース上場(証券コード:4370)。
SBIいきいき少額短期保険株式会社
出典・参考情報
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