実施 2022.09 ・ 更新 2026.08.17
マルエツの来店客予測AI、気象データ活用で年間約1100時間の工数削減
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘頼みの需要予測から抜けたい
- 天気で客足が読めず売れ残りが出る
- 予測とシフト作成に時間を取られている
どのようなAIの取り組み?
1kmメッシュの気象データを学習したAIで来店客数の予測を自動化し、年間約1,100時間の工数削減につなげたAI取り組み
業種
食品スーパーマーケット(小売)
取り組み領域
来店客数予測/発注・レジシフト管理
使ったAI
気象データを学習したAI来店客予測モデル(機械学習)
主な成果
客数予測・入力の工数を年間約1,100時間削減
首都圏で305店舗を展開する食品スーパーマーケットのマルエツが、2週間から2か月先の来店客数の見積もりを、AIによる自動配信へ切り替えました。採用したのは、ウェザーニューズの気象データ提供・分析サービス「WxTech」の来店客予測データです。1kmメッシュの過去天気予報、店舗ごとの過去の来店客数やセールなどのビジネスデータ、曜日やイベントを含むカレンダー情報の3つを機械学習させた独自の予測モデルが、最新の1kmメッシュ天気予報を取り込みながら、日々の天候変動に加えて台風や大雪のときの買い控え傾向まで織り込んで客数を算出します。マルエツは全店舗へ先行導入したうえで、発注システムとレジのシフト管理システムへ段階的に連携。現在は自動配信・自動入力された予測客数を管理職が確認し、地域催事など特別な事情があるときだけ修正する体制で運用しています。
出典:小売・飲食事業者向けに「来店客予測データ」を提供開始 、食品スーパー「マルエツ」が先行導入 | Weathernews Inc. 発行元:Weathernews Inc.
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
以前は、店舗の管理職が前年の実績と自分の経験をもとに2週間から2か月先の客数を見積もり、その数字を発注システムとレジのシフト管理システムに手で打ち込んでいました。担当者によって精度にばらつきが出て、入力作業そのものにも時間がかかる。ここまでが表に出ていた症状です。
ただ、編集部の見立てでは、この困りごとの本質は手間の多さよりも、客数という一つの数字が発注と人員配置の両方を動かす起点になっていた点にあります。見積もりを外せば、売れ残りによる食品ロスと品切れによる機会ロスが同時に生じ、レジ要員が余るか足りないかも決まってしまう。しかも客足を大きく揺らす天候は、店長がどれだけ経験を積んでも制御できない外部要因です。個人の勘の優劣ではなく、305店舗分の判断を人の感覚でそろえ続けること自体に、そもそも無理があったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
1kmメッシュという細かさの気象データを予測モデルの入力に据えた設計が、この取り組みの起点になっています。店舗の過去客数やセール情報だけを学習させれば、天候で説明できるはずの変動まで「読みにくい揺らぎ」として残ってしまいます。外部の気象データを別の入力として持ち込み、しかも商圏の広さに近い解像度でそろえたことで、揺らぎの正体を切り分けられるようになったと考えられます。台風や大雪のときの買い控えという消費者側の行動傾向まで学習対象に含めている点も、単なる天気の反映にとどまらない設計の意図がうかがえます。
予測値を出して終わりにせず、発注システムとレジのシフト管理システムへ自動で流し込むところまでつないだ判断も見逃せません。精度の高い数字が出ても、それを人が画面から画面へ写している限り、入力の負担は元の場所に残り続けます。全店舗へ先行導入したうえでシステム連携を段階的に進めた運びからは、予測の妥当性を実データで確かめながら、業務の流れを少しずつ置き換えていく手順の踏み方が読み取れます。
人の役割を例外対応だけに絞り込んだ運用の組み立ても、この仕組みを回し続ける支えになっています。地域催事のように、モデルが学習データとして持ちようのない事情は現実に存在します。全部を人が見直す運用でも、全部を機械任せにする運用でもなく、人が手を入れる場面を「モデルが知り得ない情報を持っているとき」に限定した切り分け。これによって確認が形式的な作業に流れにくくなり、管理職の判断が本当に必要な場面へ集中します。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
月間の客数予測精度は95%以上という水準を保ち、305店舗全体で管理職が予測値に手を入れた割合は0.5%にとどまっています。客数予測と入力にかかる工数は年間で約1,100時間削減され、自動発注の精度向上やレジシフトの最適化にもつながりました。マルエツは今後、他システムとの連携をさらに深め、店舗オペレーションの効率化や販促施策への活用を進めていく方針を示しています。修正率0.5%という数字は、現場が予測を信頼して受け入れている度合いを映したものとも読めます。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、需要が天候や曜日、イベントで動く業種のうち、拠点ごとの実績が数字として残っていて、予測を受け取る先が発注やシフトの仕組みとしてすでにある場合です。この事例で工数が減ったのは、予測が当たったからというより、当たった数字が人手を介さずシステムへ届く経路をつくったからだと考えられます。
逆に、予測の行き先が担当者の手元の表計算ファイルで、そこから各システムへ転記する作業が残っているなら、精度が上がっても作業時間はあまり動きません。拠点数が少なく過去の客数データが数年分そろわない場合や、地域行事や催事の影響が売上の大半を占めるような業態も、モデルが学習できる規則性が薄く、修正の手間が予測の手間を上回る可能性があります。
手をつけるなら、大雨や大雪だった日の客数が平常時と比べてどれだけ動いたかを、昨年の数字で数日分だけ突き合わせてみる。天候と需要の関係が自社のデータにはっきり現れるかどうかは、それだけでも見当がつきます。
この事例は2022年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ウェザーニューズ
気象データ提供・分析サービス「WxTech®(ウェザーテック)」を展開する企業。1kmメッシュの天気予報を活用した「AI来店客予測モデル」を開発し、小売・飲食事業者向けに「来店客予測データ」をクラウド経由で提供している。代表取締役社長は草開千仁。
株式会社マルエツ
出典・参考情報
小売・飲食事業者向けに「来店客予測データ」を提供開始 、食品スーパー「マルエツ」が先行導入 | Weathernews Inc.
発行元:Weathernews Inc.
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
