実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.17
看護記録の時間を実証で約40%短縮、音声認識と生成AIを組み合わせたがん医療
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 会議のあとに記録づくりが残る
- 同じ内容を何度も聞き直している
- 紙の記入と入力の二度手間
どのようなAIの取り組み?
音声認識と生成AIで会話から記録の下書き作成までをつなぎ、実証検証で記録時間の約40%短縮を確認したAI取り組み
業種
がん専門医療機関(医療・研究)
取り組み領域
看護記録/患者の問診・体調ヒアリング
使ったAI
音声認識AIと生成AI(IBM Watson Speech to Text、IBM watsonx.ai)
主な成果
実証検証でカンファレンスの記録時間が約40%短縮
日本アイ・ビー・エム株式会社は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所および大阪国際がんセンターと共同で、がん薬物治療の現場に向けた二つの生成AIを開発しました。ひとつは、患者が手元のスマートフォンやタブレットからAIアバターとの会話形式で体調を伝えられる問診生成AI。もうひとつは、看護カンファレンスと患者への電話サポートに用途を絞った看護音声入力生成AIです。後者は「IBM Watson Speech to Text」が会話を文字に起こし、日本語の要約に優れた大規模言語モデルを備えた「IBM watsonx.ai」がカルテ記録の下書きを作成、電子カルテへの取り込みまでを自動化しています。誤変換はシステム側の学習で補正し、最後に看護師が確認する流れです。カンファレンス記録を対象とした実証検証では、記録に要する時間が従来比で約40%短縮されました。
出典:IBM Japan Newsroom - ニュースリリース 発行元:日本アイ・ビー・エム株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
患者は自宅での体調を紙に手書きで残し、来院すれば医師と看護師から同じ質問を重ねて受けていました。医療従事者の側では、看護師一人あたりの記録作業が1日平均94分、勤務時間のおよそ2割に達しています。カンファレンスでも電話サポートでも、記録を残すことに気を取られて議論や会話そのものに集中しきれず、勤務が終わってから記録作業が残る状況が生まれていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は作業量の多さそのものではなく、対話する役と記録する役を同じ人が同時に引き受けざるを得ない構造にあります。話を聞く行為と書き残す行為とでは、求められる集中の向き先が違います。患者側で起きていた重複ヒアリングも、情報が生まれる場所とそれが蓄積される場所がずれていることの表れであり、根は同じところにあるのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
精度の担保をAI単体に背負わせず、システム側の学習と人の最終確認という二段構えに分けた運用設計が、この取り組みを実務に載せた要因と考えられます。音声認識は専門用語や固有名詞で必ず取りこぼしが出ますが、誤変換をシステム側で修正して学習させる仕組みが繰り返しの誤りを減らし、看護師の最終チェックがその日の記録の正確さを受け持ちます。精度が完全でなくても運用が回る形にしたことで、判断の基準が「AIが間違えないか」から「下書きとして使えるか」へ移ります。カルテという後戻りの効かない記録を扱ううえで、この責任の置き方には無理がありません。
適用先を看護カンファレンスと電話サポートに絞り込んだ点も効いています。どちらも会話の目的と参加者がはっきりしていて、そこで交わされた内容がそのまま記録の中身になる業務です。話す内容が定まらない場面まで汎用的に音声入力を広げるより、記録の型が決まっている業務から入るほうが、要約の質も効果の検証しやすさも確保できます。
患者側では、紙をなくすことよりも、体調を伝える手段そのものを会話に変えた設計が目を引きます。AIアバターとのチャットは音声入力にも対応しており、副作用で文字入力が難しい患者でも記録を残せます。規定の項目をなぞるだけの入力欄では取りこぼす症状を、会話の流れから自然に引き出せる点も生成AIならではです。入力された内容は電子カルテ端末と直接つながり、グラフやサマリーの形で一元化されるため、情報が生まれた時点ですでにチームで共有できる形をとっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
看護カンファレンスを対象とした実証検証では、記録に要する時間が従来比で約40%短縮されました。出来上がった記録の約8割が従来の手入力よりも優れていると評価され、その結果は学会でも発表されています。実運用の段階では、カンファレンスで1日あたり1病棟17分、電話サポートで看護師一人あたり2分という記録時間をそれぞれ約40%削減することが目標に置かれ、問診生成AIについては診察時の症状ヒアリングを最大25%軽減する目標が掲げられています。数値の意味は時間の節約だけではなく、記録に削られていた対話の時間を取り戻すところにあります。
うちでも使える?
応用しやすいのは、会話の内容がそのまま記録になり、記録の型がある程度決まっている業務です。介護施設のケア記録、問い合わせ窓口の応対履歴、現場の申し送りなどは、話す作業と書く作業が重なっているという点でこの事例と構造が似ています。
一方で、そのまま持ち込みにくい条件もあります。記録の誤りが安全や契約に直結する領域では、最終確認を担う人を必ず置く必要があり、その確認者を確保できなければ短縮できた時間が確認作業に戻ってしまいます。既存の基幹システムへ下書きを取り込むところまで設計しないと、AIが作った文章を人が転記する工程が新たに生まれてしまう点にも注意が要ります。個人情報を扱う以上、社内規程に沿ったネットワーク環境と、他社製システムとの安全なデータ連携の見通しも先に必要です。
まずは直近の会議や電話応対を一件だけ録音し、文字起こしと要約にかけてみる。出てきた下書きと、いつも自分が書いている記録を並べ、どこを直せば使えるのかを確かめるところから。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
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