実施 2023.03 ・ 更新 2026.08.17
大塚商会がAIで訪問先を提案、1年で商談約3倍となった営業データ活用
プロジェクト期間:3年以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 営業成績が担当者ごとにばらばら
- ためた顧客データを使いきれない
- 人を増やさずに商談数を伸ばしたい
どのようなAIの取り組み?
20年分の営業データをAIで分析し、訪問すべき企業を担当者に提案することで商談件数の増加につなげた事例
業種
システムインテグレーション(情報通信)
取り組み領域
営業/商談先の選定
使ったAI
予測分析自動化AI「dotData」(NEC)
主な成果
AI提案による商談件数が1年で約3倍の7万4300件に増加
システムインテグレーションを手がける株式会社大塚商会は、2001年から使い続けている営業ツール「セールスプロセスリエンジニアリング(SPR)」に、商談5000万件以上、売上明細12億件以上という規模のデータを蓄積してきました。この資産を営業成績のばらつき解消につなげるため、日本電気株式会社(NEC)の予測分析自動化AI「dotData」を採り入れ、分析の前段にあたるデータの下ごしらえを自動化しています。2019年からは独自の仕組み「AI行き先案内」の運用を開始し、分析結果をもとに各担当者へ訪問先企業を提案し、その予定をカレンダーへ自動で書き込む流れを整えました。あわせて、AIが示した分析結果の意味を分析部門と業務部門が一緒に読み解く工程も設けられています。
出典:AIが営業をサポート 社員数を増やさずに売り上げを伸ばす大塚商会の「秘訣」とは? 発行元:日本電気株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
営業のやり方が担当者ごとの判断に委ねられていたため、得意な領域と不得意な領域の差がそのまま成績の差として表れていた、というのが出発点です。加えて同社は、社員数を増やさずに売上を伸ばすビジネスモデルを続ける前提に立っており、一人あたりの動き方を良くする以外に打ち手が限られていました。
ただ、困りごとの中心はデータが足りないことではありませんでした。むしろ20年にわたる商談記録という、多くの企業がうらやむ量の資産がすでに手元にあった。編集部の見立てでは、本質的な詰まりは「蓄積された履歴が、明日どの会社を訪ねるべきかという担当者の行動にまで翻訳されていなかった」ことにあります。データは記録として正しく貯まっていても、次の一手を指し示す形になっていなければ、現場から見れば入力の手間が増えただけの箱に見えてしまいます。
どうやって、うまくいったのか
最も効いた工夫は、AIが提示した特徴量、つまりAIが判断の手がかりとして数値化した項目の意味を、分析部門と業務部門が共同で読み解く工程を挟んだことでしょう。予測モデルが弾き出す相関は、そのままでは現場にとって根拠の見えない指示になりかねません。数字の裏にある顧客の状況を業務側の土地勘と突き合わせて言葉にしたことで、提案は「なぜこの会社に行くのか」を担当者自身が説明できる情報へと姿を変えたと考えられます。納得感を後から補うのではなく、変換の工程として仕組みに組み込んだ点が要点です。
提案の出口を、営業担当者が日頃から触れている場所に置いた設計も見逃せません。AI行き先案内は既存の営業ツールSPRと連携し、訪問先の候補をカレンダーの予定として書き込む形をとりました。専用画面を開いて確認するという一手間を挟まない作りは、「AIを使うかどうか」という判断そのものを日々の動線から外してしまいます。新しい道具を現場に定着させる難所は、たいてい機能の優劣ではなく、この一手間の有無に潜んでいるものです。
分析の下ごしらえを自動化したことも、土台として大きな意味を持ちます。従来なら数カ月を要することもあった特徴量の設計が数日規模に縮まれば、精度そのもの以上に、仮説を試せる回数が変わってきます。市場や顧客の動きを追いかけるには、一度作り込んだモデルを長く使うより、短い周期で試し直せる体制のほうが噛み合うのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
AI行き先案内が提案した商談件数は、2020年上期から2021年上期までの1年間で約3倍にあたる7万4300件へ増えています。2021年第1四半期には全体の商談件数が8.4%増という数字も出ました。あわせて、複合機の稼働データとLED照明の受注に関連性があるといった、人手の分析では気づきにくい知見が次々と見つかっています。これは訪問先提案という当初の目的を超えて、社内に眠っていた関係性を掘り出す機能が働いた結果と読めます。現在はこの分析ノウハウが人材開発部にも渡り、社員のパフォーマンス測定など別の領域へ広がっています。
うちでも使える?
相性が良いのは、顧客とのやり取りが一定のルールで記録として残っており、かつ「次に誰へ連絡するか」の判断が担当者ごとにばらついている業務でしょう。編集部の事例考察でも触れられているとおり、製造業の需要予測や小売業の店舗開発のように、データに基づく意思決定が求められる領域には応用の余地があります。
一方で、そのまま真似るのが難しい条件もはっきりしています。この事例の土台には20年にわたって営業活動を記録し続けた履歴があり、同じ規模の蓄積を短期間で用意することはできません。また、AIの出力を意味づけできる業務側の担当者が分析に伴走できなければ、読み解きの工程は形だけになってしまいます。案件ごとの事情が毎回異なり、記録が担当者の手元メモに散らばっている業態でも、同じ形は成立しにくいはずです。
最初の一歩としては、大がかりな分析基盤より先に、自社の営業記録が「誰が・いつ・何を買ったか」を後から突き合わせられる粒度で残っているかを確かめてみてはどうでしょうか。そこが揃っていないうちは、AIに渡す材料そのものが成立しません。
この事例は2023年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社大塚商会
顧客のデジタル化や業務効率化をITで支援する企業。自社で導入して目利きをした技術や製品をソリューションに仕立てて顧客に提供する。2001年開始の営業ツール「SPR(セールスプロセスリエンジニアリング)」で全営業活動をデータ化し、2000年以降に商談5000万件以上、売上明細12億件以上のデータを蓄積している。
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