実施 2023.10 ・ 更新 2026.08.17
住友化学が全従業員6,500名へ自社専用の生成AI、検証で最大50%の効率化
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社外に出せない資料でAIが使えない
- 文書作成や校正に時間を取られている
- AIを配っても現場で使われない
どのようなAIの取り組み?
機密情報を扱える自社専用の生成AIチャットを全従業員へ展開し、事前検証で最大50%以上の業務効率化を確認したAI取り組み
業種
化学メーカー(製造業)
取り組み領域
全社のオフィス業務・研究開発データ分析
使ったAI
自社専用の生成AIチャット「ChatSCC」
主な成果
事前検証で最大50%以上の業務効率化を確認
化学メーカーの住友化学が、生成AIを使った自社専用のチャットシステム「ChatSCC」を開発し、約6,500名の全従業員を対象に運用を始めました。最大の特徴は、入力した情報が外部に漏れない環境を自前で構築した点にあります。これにより、機密性の高い技術アイデアの創出や、研究・製造データの分析といった、独自情報を扱う業務までAIの適用先に含められるようになりました。あわせて、利用頻度の高いプロンプト集の配布、効果的な指示文の書き方の共有、順守すべきルールの明文化、初心者向けの教育動画の公開といった社内支援も進めています。導入前には約200の典型的な業務パターンで検証が行われ、最大50%以上の効率化が確認されています。
出典:社内向け生成AIサービス「ChatSCC」の運用を開始~飛躍的生産性向上と独自データの有効活用を目指す~ | 事業・製品 | 住友化学株式会社 発行元:住友化学株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
同社は中期経営計画で「デジタル革新による生産性の向上と事業強化」を掲げており、素材の創成から応用、生産プロセスの設計まで、幅広いデータと知見をもとに事業を運営しています。その裏側で、日々のオフィス業務や研究・製造データの分析にかかる工数が積み上がっていました。
ただ、これを単純な「作業時間が多すぎる」という問題として読むと、この事例の勘所を外してしまうように思います。編集部の見立てでは、本質はむしろ、AIを当てられる範囲が業務の周辺部に限られていたことにあったのではないでしょうか。素材開発や生産プロセスの設計に関わるデータや技術アイデアは、そのまま外部のサービスに投げられる性質のものではありません。つまり、最も工数がかかり、最も効果が見込める領域ほど、汎用の生成AIでは手を出せない領域だった。工数の問題の下にあったのは、この適用範囲の壁だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
入力した情報が外部に出ない専用環境を自社で組み上げたことが、この取り組みの起点になっています。これはセキュリティ対策という守りの話にとどまらず、AIをどこまでの業務に使わせるかという適用範囲を決める設計判断でもありました。この環境があるからこそ、技術アイデアの創出や研究・製造データの分析という、事業の中核に近い作業までAIの対象に含められます。安全に使える範囲を広げることを先に片づけた順序が、後の展開を素直にしたのではないでしょうか。
対象をいきなり約6,500名の全従業員に広げた展開の仕方も、この事例を特徴づけています。一部門に絞った試験運用を長く続けるのではなく、約200の典型的な業務パターンで事前に効果を確かめたうえで全社に開くという段取りです。どの業務にどう効くかを机上で決め切らず、用途の発見そのものを現場に委ねた設計と読めます。
そして、ツールを配ることと、現場が使えるようになることを別の課題として扱った点も見逃せません。利用頻度の高いプロンプト集や指示文の書き方の共有は、初めて触れる人が最初の一問を作れずに離脱するのを防ぐ手当てです。順守すべきルールを明文化した措置も、禁止事項を並べるためというより、機密を扱える環境で「どこまでなら使ってよいか」の線を見えるようにし、萎縮を解く働きをしていると考えられます。教育動画まで含めて支援を束ねた構えは、定着を運任せにしない姿勢の表れです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
導入に先立って約200の典型的な業務パターンで検証が行われ、最大で50%以上の業務効率化が確認されました。文書作成や校正、プログラムのソースコード生成といった一般的なオフィス業務で負担が軽くなっています。今後は、社内の各組織に蓄積されたナレッジを連携させる仕組みの整備や、特定分野のデータで追加学習させた特化型モデルの構築も視野に入っており、汎用の対話から自社固有の知見の活用へと軸足を移そうとしている段階と読めます。
うちでも使える?
参考にしやすいのは、外に出せない情報が業務の中心を占めていて、そのせいで生成AIの利用が周辺業務に留まっている組織です。顧客情報や独自ノウハウを扱う領域なら、業種が違っても構図はよく似ています。文書作成や校正のように、担当者が変わっても手順が大きく変わらない作業が積み上がっているほど、効果は見えやすくなります。
一方で、そのまま真似しにくい条件もあります。専用環境の構築は相応の投資と運用体制を前提にしますし、この事例が効いた背景には、研究・製造データという活用先が社内に厚く存在していたことがあります。AIに渡せる自社データがまだ散在していたり、部署ごとに形式がばらついていたりする段階では、環境だけ整えても使いどころが見つかりにくいはずです。従業員ごとの慣れの差も、支援策なしには広がる一方でしょう。
まず試すなら、自社で「外部サービスには入力できない」と判断している情報の種類を一つ取り上げ、それが関わる作業のどこまでをAIに任せてよいか、社内の線引きを一枚の文書にしてみる。ルールの形が見えてから環境を選んでも、順番として遅くはありません。
この事例は2023年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
住友化学株式会社
素材の創成から応用、生産プロセスの設計に至るまで、幅広いデータと知見に基づき事業運営を行う企業。中期経営計画における戦略の一つとして「デジタル革新による生産性の向上と事業強化」を掲げている。
出典・参考情報
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