実施 2019.04 ・ 更新 2026.08.17
ドローンとAIで稲の生育を診断、収量最大3割増を目指す福島の実証実験
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 人手が足りず畑を見回れない
- 天候が変わり勘が当たらない
- 病害虫に気づくのが遅れる
どのようなAIの取り組み?
衛星測位に対応したドローンとAIの画像解析で稲の生育や病害虫を診断し、収量最大30%増を目標に検証を進めているAI取り組み
業種
稲作(農業)
取り組み領域
生育管理・病害虫防除
使ったAI
画像解析AIと発生予測AI(NTT研究所「corevo」)
主な成果
収量最大30%増と品質向上を目標に実証実験を継続中
福島県の農場を舞台に、NTTグループとふくしま未来農業協同組合、ドローンを手がける株式会社エンルート、日本農薬株式会社などが共同で、稲作向けのスマート営農ソリューションの実証実験を進めています。ドローンで撮影した稲の画像をAIが分析して生育ステージを判定し、最も効果が見込める追肥のタイミングを特定する取り組みに加え、広い範囲を写した画像から病害虫や雑草の種類と対処法を判断する仕組みも検証の対象です。さらにNTT研究所のAI技術「corevo」を使い、画像や位置情報、気象データを組み合わせて病害虫の発生を予測する日本初の技術検証にも挑んでいます。掲げられているのは収量最大30%増と品質向上という目標で、現時点では実績ではなく検証の段階にあります。
出典:準天頂衛星みちびきに対応したドローン及びNTTグループのAI技術を活用したスマート営農ソリューションの実証実験を開始 | NTTデータ | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP 発行元:NTTデータ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
就農人口の減少で現場の手が足りない一方、地球温暖化に伴う気候変動によって、熟練の農業従事者が長年かけて身につけた施肥のタイミングなどの経験則が当てにならない場面が出てきました。これまで目立たなかった病害虫が増えるという変化も起きています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの核心は人手の数そのものではなく、判断のよりどころが二重に失われつつあることにあります。経験則は「去年までと似た気候が今年も来る」という前提があって初めて役に立つ知識です。その前提が崩れれば、ベテランが現場に残っていても答えを出しにくくなる。人が減るという問題と、勘が効かなくなるという問題は別々に見えて、実際には「誰の、どの判断を、何を根拠に引き継ぐのか」という一点で交わっているのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
熟練者の頭の中にある判断をそのまま真似させるのではなく、画像から答えの出る問いに置き換えた点が、この取り組みの設計の要だと考えられます。追肥をいつ行うかという問いは、本来「稲がいまどの生育ステージにあるか」という観察の結果から導かれるもので、ドローンで撮った画像をAIが分析してステージを判定する仕組みは、この観察の部分だけを機械に肩代わりさせています。暗黙知をまるごとAIに移そうとすれば、学習させるのも精度を評価するのも難しくなりますが、判定できる形の問いにまで分解しておけば、確かめながら前に進められる。病害虫や雑草を種類と対処法まで含めて画像から判断する仕組みも、同じ考え方の延長線上にあります。
測位の精度を、AI以前の前提条件として押さえにいった判断も見逃せません。ドローンの自動運行に準天頂衛星「みちびき」の高精度な測位を使い、山間部などで生じやすい位置のずれを小さくする構成が採られています。画像の解析がどれだけ正確でも、農薬をまく場所がずれてしまえば現場での価値は失われるため、分析の結果を実際の作業へつなぐ経路を先に確保した形と読めます。
役割の分け方も、この規模の検証を成り立たせている要素でしょう。圃場と営農の知見を持つ農業協同組合、機体を手がけるエンルート、薬剤の知見を持つ日本農薬、AI技術と予測を担うNTT研究所、集まったデータを営農支援プラットフォーム「あい作」に蓄積するNTTデータと、必要な機能が別々の担い手に割り振られています。画像だけに頼らず、位置情報や気象データを重ね合わせて発生を予測しようとする組み立ては、AIに与える情報を増やすというより、屋外という条件のばらつきを説明できる材料をそろえにいく発想に近いと見ています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現時点で示されているのは実績ではなく目標であり、収量最大30%増と品質の向上を掲げて検証が続いています。集められたデータはNTTデータの営農支援プラットフォーム「あい作」に蓄積され、離れた場所にいる農業従事者と営農指導員がタイムリーに情報を共有し相談できる環境づくりが期待されています。対象とする品種や作物を広げ、全国や海外への展開も視野に入れた計画が置かれている点を踏まえると、今回の検証は結果を出すことに加えて、次の判断材料となるデータを残す設計になっているとも読めます。
うちでも使える?
応用の当たりをつけやすいのは、判断の手がかりが屋外の見た目に現れ、しかも対象が広くて人が回りきれない仕事です。作物の生育や病害虫のように、写真を撮れば材料が写るものであれば、撮影と判定を分けて考える進め方はそのまま持ち込めます。一方で、この事例は撮った画像から作業すべき場所を特定し、そこへ機体を飛ばして処置するところまでが一続きになっている点に特徴があります。判定の結果を人が読んで終わる業務では効果が限定的になりやすく、天候や通信環境に左右される屋外でデータを安定して集められるか、判定の精度を保つための学習データを継続的に確保できるかも、着手前に見積もっておきたい条件です。
小さく試すなら、いま現場でベテランが目で見て決めている判断を一つ選び、その判断の根拠が写真に写るかどうかを実際に撮って確かめてみる。写らないなら、写る形に問いを置き換えられるか。ここが応用できるかどうかの分かれ目になります。
この事例は2019年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社NTTデータ
本実証実験の代表機関としてプロジェクトを全体統括し、営農支援プラットフォーム「あい作」を中心とした機能開発・提供、ドローン運行管制システム「airpalette UTM」の開発・提供を担うNTTグループの企業。
株式会社アグリ鶴谷
出典・参考情報
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