実施 2023.06 ・ 更新 2026.08.17
三越伊勢丹のギフトEC、AIレコメンド売上3.2倍とIT未経験チームの内製運用
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- IT担当がいないままECを始めたい
- おすすめ商品の出し分けが勘頼み
- メール配信の手作業に追われている
どのようなAIの取り組み?
AIによる商品提案とメール施策の自動化を組み合わせ、ギフト専門ECをIT未経験のチームが内製運用した取り組み
業種
百貨店・EC運営(小売)
取り組み領域
ECサイト運営/デジタルマーケティング
使ったAI
Einstein(AIレコメンド・並び順最適化)
主な成果
レコメンド経由の売上が2年で3.2倍に伸長
百貨店大手の三越伊勢丹は、カジュアルギフト需要の広がりに合わせ、ギフトに特化したECサイト「MOO:D MARK」を新設しました。集められたのは百貨店のバイヤーを中心とする、デジタル事業の経験がないメンバーです。基盤にはセールスフォース・ジャパンのCommerce CloudとMarketing Cloudを採用し、商品の提案にはAI「Einstein」を使って閲覧履歴や購買行動から一人ひとりに合う品を出し分けています。商品一覧の並び順も訪問者ごとに変えるPredictive Sortを併用。誕生日月のクーポン配信やカート落ちのフォローといった施策は、Journey Builderで組んだシナリオによって自動で動く形に整えられました。導入時はベンダー担当者が伴走し、未経験のメンバーが自分でシステムを操作できるところまで引き上げるコーチングが行われ、運用を社内で完結させる体制づくりまでが進められています。
出典:株式会社三越伊勢丹 発行元:株式会社セールスフォース・ジャパン
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
新しい販売チャネルを作ること以上に重かったのは、それを誰が回し続けるのかという問題でした。プロジェクトに集まったのは売り場を知るバイヤーたちで、ECサイト構築の経験はありません。それでいて経営から示された条件は、1年という短期でのローンチと、環境変化に柔軟に対応できるサイトという二つでした。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質はメンバーのスキル不足そのものではなく、変わり続けることが前提の事業の手綱を社外に預けたまま走り出してよいのか、という点にあったと考えられます。ギフトの売れ筋も訴求の仕方も、季節と世代によって動きます。改修のたびに外部への依頼が挟まる形で立ち上げれば、売り方を判断する人と手を動かす人が離れ、変化への反応がその都度遅れる。短納期と柔軟性という一見別々の要求は、どちらも同じ弱点を突いていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
基盤選定の軸を「作り切る速さ」ではなく「あとから作り直せること」に置いた判断が、この取り組みの土台になっています。従来のウォーターフォール型ではなく、アジャイル型で迅速に開発でき、自社の要件に合わせて手を入れられる点が評価されて採用に至りました。1年という納期だけを見れば、仕様を固めて一気に仕上げる進め方のほうが管理はしやすいはずです。それでも変更を前提とする型を選んだことが、ローンチ後も自分たちで調整を続けられる余地を残しました。
ベンダーの関わり方を、納品ではなくコーチングとして設計した役割分担も見逃せません。セールスフォース・ジャパンの担当者が伴走し、IT未経験のメンバーが自力でシステムを操作できる状態まで手厚く引き上げています。ここで受け渡されたのは完成したシステムではなく、それを動かす技能そのもの。内製化を「外注をやめること」ではなく「使いこなす力を受け取ること」として組み立てた点に、この体制の要があります。
接客の判断をデータ側へ寄せた設計は、少人数の運用と相性がよい選択でした。Einsteinによるレコメンドと、訪問者ごとに商品一覧の並び順を変えるPredictive Sortは、誰に何を薦めるかという売り場の勘所を閲覧・購買の履歴に委ねる仕組みです。誕生日月やカート落ちといった条件で動くJourney Builderのシナリオも同じ発想で、人が都度判断していた部分を条件と履歴に置き換えています。人数を増やさずに一人ひとりへの提案を成り立たせる、力の配分の設計と言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
プロジェクト開始から約1年で新サイトがローンチし、IT未経験のメンバーによる内製運用が立ち上がりました。レコメンド経由の売上はサイト全体の平均40%、最高では48%を占め、オープンから2年後にはレコメンドによる売上が3.2倍へ伸長しています。メール施策の自動化によって会員登録後のフォローやメルマガ配信の手作業が減り、メールマガジンの会員数と同経由の売上はいずれも約4倍に拡大しました。加えて現場からは「この作業を自動化して効率化したい」といった提案が自発的に出るようになり、データに基づく施策づくりが根づきつつあります。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、扱う商品点数が多く、人手ではとても出し分けきれないECや通販の運営でしょう。閲覧や購買の履歴が日々たまり、会員登録やカート放棄のように「送る条件」が最初から決まっているメール施策を抱えている事業であれば、この事例と同じ構図が成立します。
一方で、そのまま持ち込むには注意が必要な条件もあります。商品点数が少なかったり購入頻度が低かったりして履歴が薄い事業では、自動での出し分けが効きにくくなります。またこの内製化は、ベンダー側が教育に相応の時間を割く前提で成り立っている形です。ツール利用料だけを見て契約すると、肝心のコーチングが抜け落ちて「使えない機能が並ぶサイト」になりかねません。担当メンバーが本業と完全な兼務のままでは、改善を回す時間そのものが確保できない点も現実的な壁です。
手始めに、直近数か月の注文データから「一緒に買われている組み合わせ」を数件だけ拾い出してみてはどうでしょうか。自動で薦める価値があるかどうかは、その手触りでおおよその見当がつきます。
この事例は2023年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
Salesforce
AI搭載の顧客管理(CRM)システムを提供する企業。統合プラットフォームにより、セールス・サービス・マーケティング・コマース・データ・アナリティクスなどの製品群と AI エージェント(Agentforce)を提供している。
株式会社三越伊勢丹
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
