実施 2023.12 ・ 更新 2026.08.17
生成AIで退院時の看護記録作成を42.5%短縮した総合病院の実証実験
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 記録や書類づくりに時間を取られている
- 人手不足で本来の仕事に集中できない
- 急ぎの文書作成が心理的な重荷になっている
どのようなAIの取り組み?
電子カルテの情報をもとに生成AIで文書の下書きを作り、退院時の看護記録の作成時間を42.5%短縮した総合病院の実証事例
業種
総合病院(医療)
取り組み領域
看護業務/退院時の記録作成
使ったAI
ユビーメディカルナビ 生成AI(文章生成・要約)
主な成果
退院時看護サマリの作成時間を42.5%短縮
恵寿総合病院が採り入れたのは、Ubie株式会社が提供する「ユビーメディカルナビ 生成AI」です。文章の生成・要約、音声認識、画像認識といった機能を備え、医療従事者の業務課題を支援するサービスで、同院はこれを退院時看護サマリ(患者が退院する際に看護の経過をまとめる記録)の作成に適用しました。電子カルテ上の情報をセキュリティを確保した生成AIに入力し、出力された文面を必要に応じて修正する、という流れです。2023年12月に医師・看護師・事務など15名のプロジェクトメンバーで実証実験を開始し、病院ごとの個別環境の準備やデータ学習機能をオフにするなど、ネットワークセキュリティに配慮した形で運用を進めました。その後、2024年2月からは活用範囲を大幅に広げています。
出典:恵寿総合病院、退院時看護サマリ作成業務に生成AIを適用した業務効率化の有用性を確認 | Ubie株式会社のプレスリリース 発行元:Ubie株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
高齢化と人口減少を背景に医療現場の人手不足が進むなか、タスク・シフト等の影響もあって看護師の業務負荷は高い状態が続いていました。人員配置基準をかろうじて満たしながら業務が成り立つ——恵寿総合病院が生成AIの検討に入った出発点は、この綱渡りのような状況です。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は書類作成そのものの長さよりも、退院という予測しづらいタイミングで発生する文書業務が、目の前のケアの合間に割り込んでくる構造にあったのではないでしょうか。同院が業務効率化と並べて、現場の心理的負担を減らすことを目的として掲げていた点は示唆的です。時間だけを見れば分単位の作業でも、いつ来るか分からない仕事を抱えている感覚は、その分数以上に人を消耗させます。
どうやって、うまくいったのか
電子カルテの情報を生成AIに入れ、出てきた退院時看護サマリを必要に応じて直す。うまくいった理由の中心にあるのは、この二手しかないフロー設計だと考えられます。白紙から文章を組み立てる作業を、出来上がった文面を読んで確かめ手を入れる作業へ置き換えたことで、看護師に求められる判断が「何をどう書くか」から「この記述で正しいか」へと変わりました。手を動かす時間だけでなく、書き始めるまでの構想の負荷が消える点に、この設計の効きどころがあります。
安全面の条件を先に固めてから現場に渡した段取りも、見逃せない要因です。病院ごとに個別の環境を用意し、データ学習機能をオフにした設定は、患者情報をAIに預けてよいのかという迷いを、使う側から取り除きます。機微な情報を扱う職場でAIが定着しない原因は、性能よりも「使っていいのか分からない」状態にあることが少なくありません。ツールの選定と同じ重さでセキュリティの設計を扱ったことが、実運用に踏み出せる前提になったと見ています。
医師・看護師・事務からなる15名の体制で実証実験に入り、結果を確かめてから2024年2月に活用範囲を広げた進め方も、手法として参考になります。文書業務は職種ごとに様式も勘所も異なるため、単一の部門だけで小さく試していたら、横へ広げる判断材料は得られなかったはずです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
退院時看護サマリの作成時間は平均12分20秒から7分5秒へと42.5%短縮され、作成時の心理的負担度も27.2%減少しました。入院日数が6日以上の患者に関するサマリでは時間46.6%減、心理的負担29.7%減とさらに大きく、記載量の多い症例ほど効きやすい傾向が読み取れます。現場からは、急なサマリ作成にも慌てず対応できるようになり、患者のベッドサイドに行く時間が増えたという声が上がっており、医師の退院時サマリ作成業務も最大3分の1に短縮されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、元になる情報がすでにデータとして残っていて、それを決まった型の文章に組み直す業務です。介護施設のケアプランや、士業・コンサルティングの報告書のように、専門知識は要るものの書く材料自体は手元に揃っている仕事であれば、生成して直すという同じ流れが成立しやすいでしょう。
一方でこの事例では、短期入院のように記載事項が定型的なケースで効果が薄く、入院6日以上の患者で差が大きく出ています。裏を返せば、もともと数分で終わる短い文書や、書く内容がほぼ固定されている帳票では、AIの出力を読んで確かめる手間のほうが上回りかねません。自社に当てはめるなら、扱う文書のうち「長くて、毎回中身が違うもの」がどれだけあるかが分かれ目になります。直近に作った文書を1件選び、手元の材料をAIに渡して下書きを作らせ、直しに何分かかるかを実際に測ってみる。自社の業務がどちら側に寄っているかは、その1件で見えてきます。
この事例は2023年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
Ubie株式会社
「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステックスタートアップ。AIをコア技術とし、症状から適切な医療へと案内する症状検索エンジン「ユビー」や、医療機関向けサービスパッケージ「ユビーメディカルナビ」、「ユビーメディカルナビ 生成AI」、「ユビーリンク」等を開発・提供している。
社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院
出典・参考情報
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