実施 2023.08 ・ 更新 2026.08.17
三井不動産が全従業員2500人へ広げた自社専用AIチャットの定着設計
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 情報漏えいが怖くてAIを使えない
- 社内マニュアル探しに時間を取られる
- ツールを配っても社内で使われない
どのようなAIの取り組み?
入力内容が社外に出ない専用環境で自社特化型のAIチャットを開発し、全従業員約2,500人での運用に踏み出したAI取り組み
業種
不動産業(不動産・建設)
取り組み領域
全社の日常業務/社内ナレッジ活用
使ったAI
自社特化型AIチャット(Azure OpenAI Service/GPT-4)
主な成果
全従業員約2,500人での運用を開始
三井不動産は、機密情報を扱う業務でも生成AIを使える環境を整えるため、アルサーガパートナーズ株式会社と共同で自社特化型AIチャットツール「&Chat(アンドチャット)」を開発しました。基盤にはMicrosoft Azure上で提供されるAzure OpenAI ServiceのGPT-4を採用し、入力したデータが社外に送信されない専用環境としています。最新のインターネット情報を参照する機能に加えて社内データとの連携も実装し、第一弾としてITマニュアルを読み込ませることで、社内固有のノウハウに基づく回答ができるようにしました。要約や翻訳など17種類の汎用プロンプト集も標準搭載されています。2023年8月から、全従業員約2,500人を対象とした運用が始まりました。
出典:三井不動産 | 全従業員を対象に、自社特化型AIチャットツール「&Chat」の運用開始 発行元:三井不動産株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
長期経営方針にテクノロジーを活用した不動産業のイノベーションを掲げる同社では、文章の要約や翻訳、アイデア出しといった日常作業をどう効率化するかが課題になっていました。ところが一般的な生成AIサービスは入力情報が社外へ送信されるため、機密情報が絡む場面では手を出せません。
編集部の見立てでは、困りごとの本質はAIの性能ではなく、社内で最も効率化の余地が大きい業務ほど、安全に試せる場所がなかったという食い違いにあったのではないでしょうか。取引や物件にまつわる非公開情報を日常的に扱う仕事では、「これは入力してよい情報か」の線引きを一人ひとりの判断に委ねた時点で、慎重な人ほど使わなくなります。全面禁止でも黙認でもない第三の受け皿を用意すること。それが着手点として不可欠だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
安全性を利用者の心がけではなく環境側で担保した点が、この取り組みの土台になっています。Azure OpenAI Serviceを基盤に、入力データが社外へ出ない専用環境を組んだことで、従業員は入力のたびに可否を思案せずに済みます。全社規模の展開では、この「使っていいのか分からない」という迷いが利用を最も強く抑え込みますが、判断コストを設計段階で消し込む構えが取られています。
次に効いているのが、17種類の汎用プロンプト集を標準搭載するという発想です。生成AIでつまずきやすいのは技術そのものより聞き方のほうで、そこを個人の習熟任せにしないという判断がうかがえます。要約や翻訳といった、部署を問わず誰の手元にもある作業を入り口に置いたことで、AIに不慣れな人でも最初の一回を踏み出しやすい設計になりました。
社内データ連携の第一弾にITマニュアルを選んだ順序にも、意図が読み取れます。ITマニュアルは全部門に共通し、答えが文書として確定している領域で、回答の正しさを利用者自身が確かめやすい題材。加えて、活用研修と全社プロンプトアイデアソンによって使い道を現場から吸い上げ、各部門に推進リーダーを育てる運用が並走しています。配って終わりにせず、社内で使い方が伝播する経路をつくったことが、定着の設計として要になったのでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2023年8月より全従業員約2,500人を対象とした運用が始まり、日常業務の効率化が進められています。社内定着に向けて実施された活用研修には、約3割の従業員が参加しました。今後は連携する社内データを拡充してマニュアル検索の煩雑さを解消するほか、お客様からの問い合わせ対応への活用も視野に入れる方針が示されています。約3割という参加率は、ツールの性能以上に、使い方を社内で語り合う場を用意したことの反映と読めます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、要約・翻訳・下書きといった文章まわりの作業が部署を問わず発生していて、参照すべき社内文書の所在と更新責任がはっきりしている組織です。この事例で連携の第一弾がITマニュアルだったように、版が管理され誰が読んでも正解が同じ文書は、AIに読み込ませる起点として扱いやすい領域といえます。
一方で、そのまま真似しにくい部分もあります。研修やアイデアソンで全社に広げる進め方は、旗を振る推進体制があって初めて回るもので、少人数の組織では同じ形は取りづらいでしょう。また、読み込ませた文書が古いままだと回答も古びるため、更新の担い手を決められない文書から手をつけると、かえって信頼を損ないかねません。
小さく試すなら、まずは自部署でよく書く依頼文や定型文を3つほど選び、そのまま貼り付けて使える形の文面に整えてみてはいかがでしょうか。プロンプト集の縮小版を手元でつくるところからでも、効果の見当はつきます。
この事例は2023年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
三井不動産株式会社
代表取締役社長は植田俊。グループ長期経営方針「VISION 2025」で「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」を掲げ、リアルとデジタルを掛け合わせて不動産を「サービス」として提供する“Real Estate as a Service”の実現を目指す。オフィスビル、商業施設(ららぽーと、三井アウトレットパーク等)、ホテル・リゾート、住宅、物流施設(MFLP)などを手がけ、ESG経営を推進している。
出典・参考情報
三井不動産 | 全従業員を対象に、自社特化型AIチャットツール「&Chat」の運用開始
発行元:三井不動産株式会社
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