安全性を利用者の心がけではなく環境側で担保した点が、この取り組みの土台になっています。Azure OpenAI Serviceを基盤に、入力データが社外へ出ない専用環境を組んだことで、従業員は入力のたびに可否を思案せずに済みます。全社規模の展開では、この「使っていいのか分からない」という迷いが利用を最も強く抑え込みますが、判断コストを設計段階で消し込む構えが取られています。
次に効いているのが、17種類の汎用プロンプト集を標準搭載するという発想です。生成AIでつまずきやすいのは技術そのものより聞き方のほうで、そこを個人の習熟任せにしないという判断がうかがえます。要約や翻訳といった、部署を問わず誰の手元にもある作業を入り口に置いたことで、AIに不慣れな人でも最初の一回を踏み出しやすい設計になりました。
社内データ連携の第一弾にITマニュアルを選んだ順序にも、意図が読み取れます。ITマニュアルは全部門に共通し、答えが文書として確定している領域で、回答の正しさを利用者自身が確かめやすい題材。加えて、活用研修と全社プロンプトアイデアソンによって使い道を現場から吸い上げ、各部門に推進リーダーを育てる運用が並走しています。配って終わりにせず、社内で使い方が伝播する経路をつくったことが、定着の設計として要になったのでしょう。