実施 2024.06 ・ 更新 2026.08.17
パナソニック コネクトの全社AI、1年で18.6万時間削減を支えた設計
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランしか答えられない業務がある
- 過去の規定や事例を探すのに時間がかかる
- 社員がAIをうまく使いこなせない
- 社員が勝手に外部AIを使うのが不安
どのようなAIの取り組み?
社外秘の品質管理規定や過去事例まで扱える自社専用AIを国内全社員へ広げ、知識の共有と業務時間の削減に取り組んだ事例
業種
業務用機器製造(電機・製造業)
取り組み領域
全社の業務支援/品質管理の知識活用
使ったAI
自社開発AIアシスタント「ConnectAI」(生成AI)
主な成果
導入1年で全社合計18.6万時間の労働時間を削減
パナソニック コネクトは、OpenAIの大規模言語モデルを土台に自社向けAIアシスタント「ConnectAI」を開発し、国内の全社員およそ12,400人に展開しました。狙いは業務生産性の向上と、社員が会社の管理外で外部AIを使ってしまうシャドーAIのリスク低減です。日常業務で使えるプロンプトのサンプルを配るだけでなく、社員が書いた指示文をAI側が添削する機能を加え、狙った回答に早くたどり着ける画面設計を整えました。加えて、一般的なAIでは答えられない自社固有の質問に応じるため、品質管理規定や過去の事例といった社外秘情報を学習させた自社特化AIも実用化し、回答の引用元を画面に表示する仕組みを組み込んでいます。導入から1年で全社合計18.6万時間の労働時間削減という結果が示されました。
出典:パナソニック コネクトのAIアシスタントサービス「ConnectAI」を自社特化AIへと深化 | 技術・研究開発 | 技術・研究開発 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン 発行元:パナソニック コネクト株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
製造の現場では、品質管理のノウハウが経験を積んだ人の中に蓄積され、組織全体には流れていきませんでした。過去の事例や規定を探し出し、それが今回のケースに当てはまるかどうかを精査して判断する作業にも、相当な時間が費やされていました。
ただ、編集部の見立てでは、この困りごとの中心は「検索が遅い」ことそのものではありません。判断に必要な材料が、規定という文書と、経験者の頭の中という二か所に分かれて置かれていた点にあります。だから探す側は、文書を当たったうえでさらに人に確認する、という二重の手間から逃れられなかった。もう一つ見逃せないのが、シャドーAI利用のリスクが導入目的に並んでいることです。会社が用意する前から社員はAIを使いたがっていた、という需要の存在がここに表れており、公式の入り口を用意することが安全対策そのものになる状況だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、AIそのものの性能ではなく、指示を出す社員の側を助ける仕組みを厚く積んだ設計です。日常業務のプロンプトサンプルを配布し、さらに社員が書いた指示文をAIが添削する機能を用意しています。全社に一斉展開すれば、使い手のスキルにばらつきが出るのは避けられません。うまく指示を書ける人だけが成果を出す状態に落ち着かせず、書けない人の入力を引き上げる方向に手を打ったことが、利用者の裾野を広げたと考えられます。
次に、社外秘の品質管理規定や過去事例を学習させた自社特化AIという踏み込みです。汎用のAIに聞いても自社の判断基準は返ってきませんから、属人化した知識を取り出したいのであれば、社内文書を扱えるところまで持っていく必要がありました。ここで見るべきは、その回答に引用元を併記した点です。品質管理は間違った回答をそのまま採用できない領域であり、もっともらしい嘘(ハルシネーション)が混ざれば一気に信用を失います。答えを鵜呑みにさせず、社員自身が出典に当たって真偽を確かめられる導線を残した設計は、正確性が問われる業務でAIを実務に乗せるための現実的な折衷案といえます。
三つめは、対象を絞った試験導入ではなく国内全社員規模で一気に配ったという展開の選び方です。シャドーAIの抑止を目的に含めるなら、一部門だけの限定運用では効果が薄く、全員が使える公式の環境を先に置くほうが理にかなっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
導入から1年間で、全社員合計18.6万時間の労働時間削減という結果が示されました。1回の利用あたり平均およそ20分の短縮につながっています。用途も、検索エンジン代わりの調べものから戦略策定や商品企画といった踏み込んだ使い方へと広がり、社員側のAIスキルの向上として表れました。懸念されていた情報漏洩や著作権侵害は発生していません。品質管理領域に特化したAI機能は、社員から5点満点中3.5点の評価を得ています。今後は自社データを構造的に整える「パナソニック コネクトコーパス」の構築を進め、人事や社内ITサポートへ適用範囲を広げる方針が示されています。
うちでも使える?
相性がよいのは、判断の拠り所となる規定やマニュアル、過去の対応履歴が文書として社内に存在していて、それを探すこと自体に時間が溶けている業務です。文書はあるのに使われていない、という状態であれば、規模を問わず考え方は移せます。回答に引用元を添えて人が確かめる形も、少人数の運用から始められます。
逆に難しいのは、肝心の判断基準が文書化されておらず、担当者の口頭のやり取りでしか受け継がれていない場合です。学習させる元がなければ自社特化AIは成立しませんし、社外秘を扱う以上、誰がどの文書に触れてよいかというアクセス権限の線引きを先に決めておく必要があります。この整理を飛ばすと、便利さより情報管理の不安が先に立ってしまう。
最初の一歩としては、自社の中でも特に「聞かれる回数が多いのに、答えられる人が限られている」テーマを一つ選び、その根拠となる文書が今どこに置かれ、誰が読める状態かを確かめてみてはいかがでしょうか。
この事例は2024年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
パナソニック コネクト株式会社
2022年4月1日、パナソニックグループの事業会社制への移行に伴い発足したB2Bソリューションの中核を担う事業会社。売上高1兆2,028億円(2023年度)。「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」をパーパスに掲げ、製造業100年の知見とソフトウェアを組み合わせたソリューションや差別化されたハードウェアを提供し、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメント分野の顧客の「現場」のイノベーションに取り組む。
出典・参考情報
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