実施 2024.07 ・ 更新 2026.08.17
内視鏡映像をAIがリアルタイム解析、臓器の境目を色分け表示する手術支援
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの判断が個人頼み
- 目視の見落としが怖い
- 若手の技術習得に時間がかかる
どのようなAIの取り組み?
内視鏡や手術支援ロボットの映像をAIがリアルタイムに解析し、切除ラインの目印となる組織を色で示すことで、手術中の視覚認識を支えたAI取り組み
業種
外科手術・医療機器ソフトウェア(医療)
取り組み領域
外科手術/内視鏡映像の視覚支援
使ったAI
手術用画像認識支援プログラム「Eureka α」(リアルタイム画像解析AI)
主な成果
国内初のAI視覚支援下手術を2つの病院で実施
がんなどの外科手術では、臓器と臓器の間にある疎性結合組織が、どこを切るかを決める目印になります。ただしこの組織は、熟練医が組織へ適切な緊張をかけて初めて見えてくるもので、扱いには高度な技術と経験が要ります。ここに使われたのが、アナウト株式会社が開発した手術用画像認識支援プログラム「Eureka α」です。内視鏡システムや手術支援ロボットから受け取った映像信号をAIがその場で解析し、術者がふだん見ているメインモニターとは別のサブモニターに、疎性結合組織の位置と領域を水色で重ねて表示します。兵庫医科大学病院と虎の門病院で、国内初となるAI視覚支援下での手術が実施されました。
出典:AI視覚支援手術、国内で初めて*実施 | アナウト株式会社のプレスリリース 発行元:アナウト株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
手術の現場が抱えていたのは、切除ラインの目印となる疎性結合組織を、経験の浅い医師ほど捉えにくいという問題でした。この組織は、適切な緊張をかけて露出させながら進むという手技と一体になっており、見る技術と動かす技術が分かちがたく結びついています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「情報が足りない」ことではありません。必要な構造物は映像の中にすでに映っているのに、それを意味のある目印として認識できるかどうかが、経験の厚みによって分かれてしまう。つまり、情報の不足ではなく解釈の格差が問題だったのではないでしょうか。であれば、打ち手として選ぶべきは新しい情報を足すことではなく、すでに映っているものに輪郭を与えることになります。実際に採られたアプローチは、この構図にきれいに対応しています。
どうやって、うまくいったのか
検出の対象を疎性結合組織という一点に絞った設計が、まず効いていると考えられます。手術映像から異常や危険をひろく拾おうとすれば、何を出すべきかの線引きが曖昧になり、表示が増えるほど術者の判断を邪魔します。これに対し、切除ラインを決めるという明確な用途に直結する構造物だけを検出対象に据えたことで、AIが答えるべき問いが一つに定まりました。剥離層を正確に認識して提示するという役割の狭さは、能力の限界ではなく、実用性を成立させるための絞り込みと読めます。
表示先をメインモニターから切り離した点も、見落とせない工夫です。術者が手技の間ずっと注視している映像に色を重ねれば、AIの判断が視野そのものを塗り替えてしまいます。サブモニターに水色の強調表示を置く構成なら、術者は必要なときだけ参照でき、最終的な判断の主導権は人の側に残ります。支援であって代替ではないという線引きを、UIの物理的な配置で担保した形です。
既存の内視鏡システムや手術支援ロボットの映像信号を受け取る方式をとったことも、現場に持ち込みやすさをもたらしています。専用の撮影機器を新たに置くのではなく、すでに稼働している機器の出力に後から接続する構造であり、映像のタイムラグを感じさせない応答性は、この構成を実用の水準で成り立たせる前提条件でした。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
兵庫医科大学病院と虎の門病院において、国内初となるAI視覚支援下での手術が無事に実施されました。現場のエキスパート医師からは、解析精度の高さと、映像のタイムラグを感じさせない点が評価されています。また、AIが剥離層を正確に認識して示すことで手術がスムーズに進むだけでなく、若手医師が手技を習得する際の教育ツールとしても有用だという声が寄せられました。今後は神経や膵臓のAI解析機能、3D出力機能の追加といったナビゲーション機能の進化が期待されています。熟練医の見え方が、その場で共有できる形に変わったことの意味は小さくありません。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、判断の材料が映像の中にすでに写っており、かつ「何を強調すべきか」について熟練者どうしの答えがおおむね一致する作業です。製造ラインでの組み付け位置の確認や、設備点検での見るべき箇所の提示などは、この条件に近いところにあります。目印が定まっているからこそ、AIは正解を学べます。
逆に難しいのは、強調すべき対象が人によって割れる場面や、手ごたえ・音・においといった映像に写らない情報が判断を支えている作業です。この事例でも、組織に緊張をかけて露出させるという手技があって初めてAIの解析対象が画面に現れます。表示だけを持ち込んでも、そこに至る作業の質は代替できません。
はじめの一歩としては、自社の現場で熟練者が新人に「ここを見て」と指差している瞬間を思い出してみてください。その指の先が毎回同じものを指しているなら、可視化の題材になり得ます。
この事例は2024年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
アナウト株式会社
人工知能技術を用いて人体のあらゆる重要臓器を視覚化する手術支援ソフトウェアを開発する企業。2020年7月に外科医複数名、エンジニア、事業のエキスパートにより設立され、これまで20以上の高度医療機関と共同研究を実施。外科手術視覚支援プログラム「Eureka α」を製造・販売するほか、教育用の手術動画解析ソフトウェア「Surgical Vision EUREKA」を製造・販売している。代表取締役は小林直、業種は医療・福祉、未上場。
兵庫医科大学病院、国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
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