PoCへの参加を有志の持ち出しではなく業務としてリソースを確保し、役職にとらわれないフラットな体制を敷いた点が、この取り組みの起点になっています。全社横断のプロジェクトは通常業務を抱えた現場にとって負荷の上乗せでしかなく、参加が善意頼みになった時点で人も時間も集まりません。230人という規模で半年続いたのは、参加しても時間や立場の面で不利にならない条件を先に整えたためではないでしょうか。
集まった24のユースケースをそのまま試すのではなく、生成AIの「できること・できないこと」を整理したうえで適用対象を絞り込む手順を挟んだことも効いていると考えられます。この整理を担ったのがパートナーのNECで、最先端の生成AI技術とコンサルティングの実績を、社内に足りない部分へ充てる役割分担がとられました。ツール導入の話に閉じず、自社の「あるべき姿」を定める戦略面の検討やガバナンス・リスク対策を並走させたことは、検証結果を実業務へ移す段階で立ちはだかる障害を前倒しで潰す動きにあたります。
PoCの知見を社内ポータルに集約し、コピー&ペーストでそのまま使えるプロンプト集と、参加メンバーの体験談動画という二種類の形で配ったやり方も見逃せません。前者は手を動かすときの即戦力になり、後者は「自分の業務でも使えそうだ」と感じるための判断材料になります。成果物と経験談を分けて届ける構成が、検証に加わらなかった多数派を次の活動へ引き込む導線として働いたと見ています。