実施 2023.09 ・ 更新 2026.08.17
知的財産の定型作業の約8割を生成AIに任せた、全社横断のAI検証
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 生成AIを試したが現場に広がらない
- どの業務に効くのか判断できない
- 推進の旗振り役も体制もない
どのようなAIの取り組み?
社内から募った24の業務課題に230人規模のPoCで生成AIを試し、知的財産部門では定型作業の約8割をプロンプト化して省力化につなげた取り組み
業種
制御機器・電子部品・ヘルスケア製品の製造(製造業)
取り組み領域
全社横断の業務効率化/知的財産業務
使ったAI
生成AI(文章の要約・分類・抽出)
主な成果
知的財産部門で人手作業の約8割をプロンプト化し省力化
制御機器や電子部品、ヘルスケア製品を手がける製造企業が、経営層の主導で生成AIの全社活用に着手した事例です。イノベーション推進本部を軸にPMO(全体を束ねる推進事務局)を置き、社内から業務課題を募ったうえで、集まった24のユースケースを対象に230人規模のPoC(概念実証)を半年にわたって進めました。体系的な知見や全社横断プロジェクトの経験を補う相手としてNECを迎え、生成AIの適不適の整理から戦略面の助言、ガバナンスやリスク対策までを伴走支援で受けています。得られた知見はプロンプト集や体験談動画として社内ポータルで共有され、要約・分類・抽出といった定型業務を中心に有効性が確認されました。2024年10月には第3シーズンが始まり、25テーマで実業務への適用検証が続いています。
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
経営層が生成AIの有用性を実感し、全社横断の取り組みをトップダウンで開始したものの、現場が自発的に使う状態には届いていませんでした。効率化に結びつく具体的なユースケースが見つからず、体系的な知見や全社規模のプロジェクトを回した経験も社内に蓄積されていない状態です。
編集部の見立てでは、ここでの詰まりはツールの性能ではなく、どの業務なら任せられるのかを判断する物差しと、それを安全に試せる場が社内に存在しなかったことにあります。号令だけがある状態では、現場は「自分の仕事のどこに当てはめればよいのか」を自力で探すほかなく、通常業務を抱えたまま手探りを続けられる人はそう多くありません。号令と実践のあいだに横たわるこの空白こそが、最初に埋めるべき課題だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
PoCへの参加を有志の持ち出しではなく業務としてリソースを確保し、役職にとらわれないフラットな体制を敷いた点が、この取り組みの起点になっています。全社横断のプロジェクトは通常業務を抱えた現場にとって負荷の上乗せでしかなく、参加が善意頼みになった時点で人も時間も集まりません。230人という規模で半年続いたのは、参加しても時間や立場の面で不利にならない条件を先に整えたためではないでしょうか。
集まった24のユースケースをそのまま試すのではなく、生成AIの「できること・できないこと」を整理したうえで適用対象を絞り込む手順を挟んだことも効いていると考えられます。この整理を担ったのがパートナーのNECで、最先端の生成AI技術とコンサルティングの実績を、社内に足りない部分へ充てる役割分担がとられました。ツール導入の話に閉じず、自社の「あるべき姿」を定める戦略面の検討やガバナンス・リスク対策を並走させたことは、検証結果を実業務へ移す段階で立ちはだかる障害を前倒しで潰す動きにあたります。
PoCの知見を社内ポータルに集約し、コピー&ペーストでそのまま使えるプロンプト集と、参加メンバーの体験談動画という二種類の形で配ったやり方も見逃せません。前者は手を動かすときの即戦力になり、後者は「自分の業務でも使えそうだ」と感じるための判断材料になります。成果物と経験談を分けて届ける構成が、検証に加わらなかった多数派を次の活動へ引き込む導線として働いたと見ています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
半年間のPoCでは、24テーマの9割以上で生成AIの有効性が確認され、手応えの中心は要約や分類、抽出といった定型業務でした。なかでも知的財産部門は、これまで人手で行っていた作業の約8割をプロンプト化して生成AIに任せ、大幅な省力化につなげています。2024年10月からは第3シーズンとして25テーマで実業務への適用検証が進み、社内の非構造化データと基幹システムの構造化データを掛け合わせる「次世代データドリブン経営」が次の目標に据えられています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、文書や記録を要約する、分類する、必要な項目を抜き出すといった作業が日常的に発生している業務でしょう。この事例で有効性が確認されたのもその領域であり、知的財産のように扱う文書の型がある程度決まっている業務ほど、作業手順をプロンプトとして固定しやすくなります。
一方で、同じ進め方をそのまま持ち込むのが難しい場面もあります。24件の課題が集まる程度に部門の幅がある、検証に半年と230人分の時間を割ける、といった前提はどの組織にもあるものではありません。規模が小さいなら、テーマ数を絞って期間も数週間単位に区切るほうが現実的です。また、参加を業務として認める判断は経営側にしかできないため、現場の工夫だけで置き換えるのは苦しいところ。
まず試すなら、自分の部署で毎週繰り返している文書仕事を一つ選び、その手順を他の人がそのままなぞれる指示文の形に書き下ろしてみてはいかがでしょうか。うまく言葉にできない部分にこそ、AIに任せにくい判断が潜んでいます。
この事例は2023年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NEC
日本語性能に優れた生成AI「cotomi」を開発し、生成AIを「つくる」と「つかう」の両面で組織的に実行している企業。コンサルティングサービス事業部門に戦略・デザインコンサルティング統括部やアナリティクスコンサルティング統括部を持ち、戦略構想策定やプロジェクトの伴走支援を提供する。新しいソリューションをまず自社の課題に適用し、得られたナレッジを顧客にフィードバックする「クライアントゼロ」の文化を持ち、価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」を基軸に顧客のDX推進や経営課題の解決を支援する。
オムロン株式会社
出典・参考情報
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