実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.17
半年かかる鋼材の割れやすさ判定を数分に、現場主導のAI分析
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘に頼った判断が続いている
- 検査や原因究明の結果待ちが長い
- 現場でデータを扱える人がいない
どのようなAIの取り組み?
ノーコードのAI分析基盤と実務データを使ったOJT研修を組み合わせ、鋼材の割れやすさの予測を現場技術者自身が数分で行えるようにした事例
業種
鉄鋼製造(製造業)
取り組み領域
品質予測/製造現場のデータ活用
使ったAI
ノーコードAI分析基盤「dotData」(機械学習の自動化)
主な成果
鋼材の割れやすさの予測が半年以上から数分に短縮
鉄鋼製造の現場で、熟練者の勘と経験に頼ってきた工程判断をデータで支えるための取り組みです。機械学習の手順を自動化する分析プラットフォーム「dotData」を土台に据え、専門の分析担当者ではなく現場の技術者自身が数値を扱える環境を整えました。導入と並行して、実際の業務データを教材にしたOJT形式の学習プログラムを走らせ、伴走支援を受けながら課題解決の進め方そのものを身につける体制も敷いています。題材として選ばれたのが、鋳造工程で鋼材の「横割れ」が起きやすいかどうかを左右する熱間延性という性質で、成分の割合や温度といった条件から不具合の発生傾向を読み取る予測モデルを自社で開発しました。
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
高炉の中は直接のぞくことができず、複雑で大規模な製鉄プロセスの制御は長年、熟練者の緻密な感覚に支えられてきました。その担い手が減っていくなかで、品質を落とさず供給を続けられるのかという問いが差し迫っていた、というのが出発点です。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「人が足りない」ことよりも、判断の根拠が個人の頭の中にしか残らない形をしていた点にあります。勘や経験そのものは精度の高い資産ですが、装置の中が見えない工程では、なぜその判断に至ったのかを他者が検証する手段がありません。検証できないものは引き継ぐことも改善することもできず、担い手が減った瞬間に一気に失われる。暗黙知を形式知にするという方針は、技能伝承の言い換えというより、判断を検証可能な形に置き直す作業だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
分析の主体を、データの専門家ではなく現場の技術者側に置いた設計が効いています。機械学習のプロセスを自動化するプラットフォームを選んだことで、モデルづくりの手続きに詳しくなくても仮説を試せるようになりました。製鉄の工程で「どの条件が怪しいか」を最初に思いつけるのは、日々その設備を見ている人です。分析技術を持つ人に工程知識を教えるより、工程知識を持つ人が分析の道具を握るほうが近道だという判断が、ここには表れています。
ツールの配布で終わらせず、実際の業務データを教材にしたOJTと伴走支援を組み合わせた点も見逃せません。研修用に整えられたきれいなデータではなく、自分たちが普段扱っている数値を題材にすれば、操作方法ではなく「この課題をどう解くか」という思考の順序が身につきます。伴走支援は、つまずいた時点で軌道修正が入る仕組みとして機能したと考えられます。ノーコードの道具は使い始めのハードルを下げますが、問いの立て方までは自動化してくれません。そこを人の支援で埋めた構成です。
対象を熱間延性という一つの指標に絞り込んだことも、成果に直結した選択に見えます。横割れという具体的な不具合に結びつく性質へ照準を合わせたため、何を予測できれば現場が助かるのかが明確でした。さらに、鋼材の種類に応じて複数のモデルを使い分ける構成をとっており、一つの万能モデルで全種類を賄おうとしない割り切りが、精度と実用性の両立につながっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
従来は外部機関の専用装置による実験に半年以上を要していた熱間延性の予測が、独自開発した分析モデルによって数分で実行できるようになりました。現場のユーザーは条件となる数値を入力するだけで結果を得られ、鋼材の種類ごとにモデルを使い分けることで精度も高められています。取り組みは一つのモデルにとどまらず、300人以上の社員がツールを使い、30件以上のプロジェクトが実用段階へ進んでおり、データで課題を解く進め方が組織の側に根づきつつある段階です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断の材料になる数値が工程のなかですでに記録されていて、しかもその判断結果を確かめるのに時間や費用がかかっている業務です。この事例で短縮できたのは、外部機関の実験という「答え合わせに半年かかる」構造でした。逆に言えば、確認が数時間で済む業務では、予測モデルを作る労力に見合わないこともあります。また、条件と結果の対応が過去データとして蓄積されていない領域では、同じ手順をそのまま持ち込むのは難しいでしょう。目視や手触りといった、そもそも数値として残っていない判断も同様です。
もう一つ、この事例の再現性を支えているのは人材面の設計です。ノーコードの道具だけを導入して現場に渡す形では、同じところまでは届きにくいと考えられます。まず着手するなら、自社の業務のなかで「結果が出るまで待たされている工程」を一つ選び、その待ち時間の長さと、待っている間に何を判断できずにいるかを具体的に書き出してみる。そこが投資に見合う対象かどうかの、最初の判断材料になります。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NEC
OJT(On-the-Job Training)を中心に据えた学習プログラム「NEC DX人材育成サービス」を提供し、業務部門や研究所が持つ実際のデータを用いた分析でデータサイエンティストが受講者に伴走する。OJT終了後の分析結果を現場業務へ反映する仕組みづくりも支援する。
JFEスチール株式会社
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