実施 2023.10 ・ 更新 2026.08.17
富士通と国際体操連盟のAI画像解析、世界大会で全10種目の採点支援へ
プロジェクト期間:3年以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 目視の検査や判定の負担が重い
- 人によって評価基準がぶれる
- 速い動きを数値で記録したい
どのようなAIの取り組み?
AI画像解析で体操競技の動きを立体的かつ時系列で捉え、世界大会の男女全10種目で採点支援の適用が始まった取り組み
業種
スポーツ競技団体(スポーツ・エンターテインメント)
取り組み領域
競技の採点・審判支援
使ったAI
AI画像解析(姿勢認識・動作の数値化)
主な成果
世界大会で男女全10種目への適用を開始
技の高度化が進む体操競技で、審判の目視判定にかかる負荷と採点の公平性が課題となっていました。国際体操連盟(FIG)と富士通は2017年から採点支援システム「Judging Support System(JSS)」を共同開発し、カメラ映像から選手の動作を数値データとして取り出し、AIが技を自動で判定する仕組みを作り上げています。姿勢の認識がぶれる問題には独自の補正アルゴリズムで対処し、学習に使う画像は会場の明るさや器具の色といった条件を変えながら自動生成しました。動きを一瞬の姿勢ではなく時間の流れを含めて捉える「4-Dimension Capture技術」も開発され、関節の角度や手足の位置が数値として画面に表示されます。2023年秋の世界体操競技選手権では、男女全10種目への適用が始まりました。
出典:国際体操連盟、富士通のJudging Support Systemを全10種目で利用開始 : 富士通 発行元:富士通株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
選手の技量と器具の進化によって技は複雑さと速さを増し、それを見極める審判には高いスキルが求められるようになっていました。目視での判定は負荷が大きく、同時に、採点の公平性や透明性をどう担保するかという問題も抱えていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの核心は審判の技量不足ではなく、判定の根拠が人の目の中にしか存在しない状態そのものにあったのではないでしょうか。人間の知覚が追いつく限界を超えた速度で技が繰り出されれば、どれほど熟練した審判でも判断の確からしさを外から検証する手立てがありません。負荷の高さと公平性への疑念は別々の問題に見えて、根拠が形に残らないという一点から派生した同じ現象だったと考えられます。だからこそ求められたのは、判定を代行する仕組みではなく、判定の根拠を数値として取り出す仕組みだったのでしょう。
どうやって、うまくいったのか
動きを「ある瞬間のポーズ」ではなく、立体の情報に時間の流れを重ねた一連の動作として捉える設計が、この取り組みの土台になっています。体操の技は静止した形だけで成立するものではなく、どの姿勢からどう移行したかまで含めて評価されます。判定したい対象の性質に合わせて計測の枠組みそのものを組み替えた点が、技術選定より前段の重要な判断だったと言えます。
認識のぶれを独自の補正アルゴリズムで抑え込んだ発想も見逃せません。ディープラーニングによる画像解析では姿勢の推定結果が揺らぎやすく、その揺らぎは審判支援という用途では致命的になります。学習モデルの精度向上だけに頼らず、出力される数値を安定させる仕組みを別途組み込んだことが、関節の角度や手足の位置を数値として提示できる水準を支えたと考えられます。
学習データを自前で作り出す方針も、実運用を成立させた要因として大きいはずです。AIと3Dの技術でフォトリアルな画像を自動生成し、会場の明るさや器具の色といった条件を振った大量のデータを用意しています。世界各地の会場を渡り歩く競技において、環境が変わるたびに精度が落ちる状態では使い物になりません。撮影条件のばらつきを事前に想定して織り込む考え方が、限られた実写データの制約を回避したのでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2023年秋の世界体操競技選手権大会で、男女全10種目へのJSSの適用が始まりました。同一の基準にもとづく判定支援が働くことになり、種目ごと・審判ごとの解釈の幅が縮まる方向へ進んでいます。今後は加盟国で選手の能力や技の習熟度を測るトレーニングプログラムの一部として使われるほか、蓄積されたデータをもとにした専門的な解説や映像が視聴者へ届けられる予定です。判定のために作った数値が、指導と観戦の材料へ広がっていく点は注目に値します。
うちでも使える?
応用が見込みやすいのは、人の動きや対象の状態を人の目で見て良し悪しを決めており、その判断根拠が言葉や数値として残っていない業務です。検品、作業手順の確認、動作の指導といった場面では、関節の角度や位置のような数値が取れるだけで、判断のばらつきを検証できる状態に近づきます。撮影条件が変わりやすい現場でも、その変動を学習データの側で先回りして織り込む考え方は参考になるでしょう。
一方で、そのまま持ち込むのが難しい条件もあります。この事例が成り立っているのは、体操の採点規則という明文化された評価基準があらかじめ存在し、何を測れば判定に足りるのかが定義できたためです。評価基準そのものが曖昧なまま計測だけを始めても、数値の解釈で再び意見が割れます。加えて、専用のカメラ配置や大量の学習データ生成を前提とする構成は、相応の開発体制を要します。
まずは自社の目視判断のうち、判定の分かれ目になっている要素が角度・位置・速度といった測れる量で言い表せるかを、一つの工程で確かめてみてはいかがでしょうか。
この事例は2023年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
富士通株式会社
本社を東京都港区に置く企業(代表取締役社長 時田隆仁)。国際体操連盟とJudging Support System(JSS)を共同開発し、JSSで培った高精細な画像分析技術とAI技術を融合したデータ解析プラットフォーム「Human Motion Analytics」を開発・提供する。
国際体操連盟(FIG)
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
