実施 2024.08 ・ 更新 2026.08.17
電通の広告コピー生成AI、プロの思考プロセス学習で品質向上の傾向
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 生成AIの文章がありきたりで物足りない
- ベテランの判断を若手に引き継げない
- AIの案の選別に時間を取られる
どのようなAIの取り組み?
コピーライターの思考プロセスを学習させた独自の大規模言語モデルで、広告コピー生成の品質向上を検証したAI取り組み
業種
広告代理店(広告・マーケティング)
取り組み領域
広告制作/コピーライティング
使ったAI
広告コピー生成ツール「AICO2」(独自に追加学習したGPT-3.5 Turbo)
主な成果
汎用AIより生成コピーの品質が向上する傾向を共同評価実験で確認
電通と電通デジタルは、コピーライターが長年培ってきた思考プロセスをAIに学習させた広告コピー生成ツール「AICO2」を開発しました。中核には、独自のファインチューニング(追加学習)を施したGPT-3.5 Turboが組み込まれています。学習の対象を完成したコピーのテキストに限定せず、書き手の意図や考えの筋道まで含める「創造的思考モデル」を採ったことが、設計上の柱です。利用者が伝えたいこと、商品名、解決したい課題などを入力すると、「伝えるべきこと」と「表現方法」が理由とともに返り、生成されたコピーは自動採点を経て、一定の基準を満たしたものだけが出力されます。東京大学次世代知能科学研究センターとの共同評価実験では、プロのコピーライターを対象に性能が評価されました。
出典:電通コピーライターが長年培ってきた思考プロセスを学習した AI広告コピー生成ツール「AICO2」を開発 - News(ニュース) - 電通ウェブサイト 発行元:株式会社電通
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
電通は2015年から広告制作での生成AI活用に取り組んできましたが、初代のツールには、人間のコピーライターに多くの発想をもたらす一方で、使い込むほど過去のコピーに似た出力が増え、ときにテーマから外れた案が混ざるという限界がありました。大規模言語モデルによるテキスト生成が身近になったあとも、汎用のモデルをそのまま使うだけでは人の心を動かすコピーには届かない、という判断が新しいツールの起点になっています。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は文章を作る能力の不足ではなく、AIに与えていた教材が「できあがった答え」だけだったことにあります。名作コピーの完成形をどれだけ覚えても、なぜその言葉を選び、何を捨てたのかという過程は残りません。過程が欠けた学習は、手元にある正解の周辺をなぞる方向にしか働かず、繰り返すほど既視感のある表現へ収束していったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
学習の対象を完成品から思考の過程へ移した「創造的思考モデル」が、この取り組みの中心にあります。プロが何を伝えるべきだと判断し、どの表現を選んだのか、その意図ごと教材にする設計です。完成したコピーだけを大量に与える方法では、出力は既存の名作の言い換えに近づきやすくなりますが、判断の筋道を学ばせておけば、新しいテーマに対しても「まず何を言うべきか」から組み立て直せる余地が生まれます。汎用のモデルをそのまま使わず独自の追加学習を重ねたのも、表現の巧拙より先に、この判断の部分を鍛えるためだったと考えられます。
出力の形式も、人が使うことを前提に組まれています。伝えたいことや解決したい課題といった入力に対して、返ってくるのは「伝えるべきこと」と「表現方法」、そしてその理由です。理由が添えられていれば、コピーライターは提示された案を採るか外すかを自分で判断でき、AIの出力が完成品ではなく思考の材料として機能します。
生成した案を自動で採点し、基準に達したものだけを通す後段の仕組みも効いています。生成AIの活用では、出せる量が増えるほど選別の負担が利用者側へ寄りがちですが、この設計は品質の関所をツールの内側に置きました。評価軸をツールが持つということは、良いコピーの条件をあらかじめ定義できているということでもあり、思考プロセスを学ばせる前段の発想と一続きになっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
東京大学次世代知能科学研究センター(AIセンター)との共同評価実験で、プロのコピーライターを対象に性能が評価され、汎用的なAIモデルを使った場合と比べて、生成されるコピーの品質が向上する傾向が確認されました。定量的な改善幅ではなく傾向としての確認ですが、判定したのが日々コピーを書く専門家である点は軽くありません。ここからAIに人間の思考を教え込むことがクリエイティブの評価を左右する可能性が示され、今後はクリエイティブ人材のパートナーとして、顧客のブランディング領域における高品質な広告制作の支援に活用していく方針が示されています。
うちでも使える?
応用できるかどうかを分けるのは、社内の熟練者が「なぜその判断をしたのか」を言葉にできるかどうかです。提案書の構成、設計の勘所、見積もりの落としどころのように、結論だけでなく理由まで残せる業務であれば、完成物ではなく判断の過程を教材にするという考え方は持ち込めます。逆に、良し悪しの評価軸が人によって割れる業務や、判断の理由が本人にも説明しづらい領域では、この事例の後半にあたる自動採点にあたる仕組みを作れず、案の量だけが増えて選別に追われることになりかねません。
もう一つの前提として、この取り組みは長年の研究開発とプロの知見を自社に蓄積できる立場が効いています。手の届く一歩としては、次に社内で案を採否する場面で、選んだ理由と外した理由を一行ずつ書き添えて残してみること。数十件たまった時点で、それが学習用のデータになりうるのか、それとも人の教育材料として先に価値を発揮するのかが見えてきます。
この事例は2024年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:マーケティング
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社電通
広告コミュニケーション領域を手がける企業。国内電通グループとして2015年から広告制作における生成AI活用の研究開発を続け、株式会社電通デジタルとともに広告コピー生成ツール「AICO2」を開発した。
出典・参考情報
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