実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.17
中部電力グループ、現場社員が分析テーマを自ら立てる4段階のAI人材育成研修
プロジェクト期間:2年 〜 3年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ツールは入れたのに現場で使われない
- 業務の悩みを分析テーマにできない
- データを使える人材を社内で育てたい
どのようなAIの取り組み?
AI分析基盤の活用を現場に広げるため、育成プログラムを4段階へ組み替えたAI取り組み
業種
電力(電力・エネルギー)
取り組み領域
社内人材育成/データ分析研修
使ったAI
dotData(特徴量設計を自動化するAI分析基盤)
主な成果
業務の効率化・高度化が見込める案件が複数創出し、一部は実運用段階へ
中部電力グループは、特徴量の設計を自動で行うAIデータ分析プラットフォーム「dotData」をすでに導入していたものの、現場の社員が自分の業務の困りごとを分析テーマの形に置き換えられないという壁に突き当たっていました。そこでNECの支援を受けながら、データ分析スキル向上研修を、基礎研修、ツールのハンズオン、ユースケース策定ワークショップ、データ分析OJT(実務を通じた訓練)という4つの段階へ組み替えています。OJTでは受講者が普段扱っている実際の業務データを題材にし、NECのデータサイエンティストが伴走支援に入りました。運営面でも、受講者からの技術的な質問をベンダーへ丸投げせず、社内の事務局がいったん自分たちで理解し直してから答える方式を貫いています。この研修からは、業務の効率化や高度化が見込める案件が複数生まれています。
出典:価値創出のためのデータ活用は現場主導で 実践力重視の姿勢でのぞむ中部電力グループのDX 発行元:NEC
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
エネルギー産業には、再生可能エネルギーの導入、老朽化した設備の更新、技術の継承といった重い課題が並びます。中部電力グループはこれらにデータ活用で向き合おうと分析プラットフォームを整えましたが、現場の社員が自身の業務課題を分析のテーマとして定義し直せない、という状態にありました。
編集部の見立てでは、ここでの詰まりはツールの性能でも分析人数の不足でもなく、「業務の言葉」と「データの言葉」をつなぐ翻訳の工程が誰の担当にもなっていなかったことにあります。現場が抱える困りごとは、たいてい「なんとなく手間がかかる」「ベテランしか判断できない」といった輪郭のぼやけた形で存在しています。それを、何を予測するのか、何と何を比べるのかという問いに変換できなければ、どれだけ高機能な基盤があっても入力すべき問いが決まりません。ツールが動かなかったのではなく、ツールに渡す問いが作れなかった、という構図だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
研修を基礎、ツール操作、ユースケース策定、OJTという4段階に組み替えた設計が、まず効いていると考えられます。注目したいのは、業務課題をデータ分析課題へ落とし込むワークショップが、ツール操作の習得とは切り離された独立の段階として置かれている点です。使い方を覚えることと、解くべき問いを立てられることは本来まったく別の能力ですが、研修では一続きのものとして扱われがちです。問いを立てる工程に固有の時間を確保した構成が、現場の側から分析テーマが立ち上がってくる下地をつくっています。
実践段階で教材用のデータではなく受講者自身の業務データを扱わせた点も、成果の出方を左右しています。あらかじめ整えられた題材で学ぶ形式は進行こそ安定しますが、研修が終わった瞬間に学びと現場が切り離されてしまいます。自分の担当業務のデータを持ち込む方式であれば、演習の成果物がそのまま業務改善の検討材料になり、学習と実務が同じ線の上に乗ります。ここではNECのデータサイエンティストが伴走支援に入り、専門知識の不足は外部が補いつつ、テーマ設定と業務理解は現場が握るという役割分担が保たれています。
もうひとつ見逃せないのが、技術的な問い合わせをベンダーへ素通しせず、社内事務局がいったん噛み砕いて自分の言葉で返すという運用です。手間だけを見れば非効率で、外部に回したほうが速い場面も多かったはずです。それでもこの手順を通したことで、回答が事務局の中に知識として残り、社内に答えられる人が育っていきます。運営側が自ら学ぶ姿勢を見せる効果は受講者の意欲にも及んでいて、育成の仕組みとしては、講義の内容そのものよりこの運用の寄与が大きかった可能性もあります。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
段階を踏む構成にしたことで、受講者はデータ分析の進め方とその価値をより深く理解し、取り組むべき目標が明確になりました。実際の業務データを使ったOJTからは、業務の効率化や高度化が見込める案件が複数生まれ、その中には実際の業務で運用される段階まで進んだものもあります。今後は研修の最終報告会を全社へ公開してデータ分析の必要性を広く伝えるとともに、社内での事例共有会を通じて受講者の裾野を広げる方針が示されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、分析ツールや基盤をすでに導入したのに現場で使われていない、という状態にある組織です。この事例で足されたのは高価な仕組みではなく、問いを立てる工程を独立した段階として研修に組み込んだことと、演習の題材を自社の実データにしたこと。どちらも、既存の研修や勉強会の設計を組み替えるだけで試す余地があります。
一方で、そのまま持ち込んでも回らない条件もあります。OJTの題材になるだけのデータが日々の業務の中に蓄えられていない場合、受講者は分析にたどり着く前にデータ集めから始めることになり、研修の期間では終わりません。専門的な質問に答えられる伴走役を社外にも社内にも確保できない場合や、事務局に問い合わせを咀嚼するだけの時間の余裕がない場合も、この形は成立しにくいでしょう。
小さく始めるなら、直近で現場から上がってきた困りごとをひとつ選び、何を予測できれば、あるいは何と何を比べられればその困りごとが軽くなるのかを、一行の問いに書き換えてみるところから。うまく問いの形にならない業務が出てきたなら、それ自体が、育成で埋めるべき距離を教えてくれます。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
導入部門・データ活用
導入部門:エネルギー・インフラ
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
NEC
データドリブンDX統括部にDX人材教育コンサルティンググループを持ち、データサイエンティストによるデータ分析研修の講師・OJT支援や研修プログラムの改善提案を提供している。
中部電力株式会社
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