代表の思考と企業カルチャーを学習させた社内専用のAIを、外部のツールとは別に用意した設計が、この取り組みの中核にあります。汎用の生成AIは一般的な知識には強い一方で、その会社らしい判断の基準までは持ち合わせていません。社内の考え方を吸収させたナビゲーターを別に立てたことで、一般的な調べ物は外部のAI検索へ、社内の文脈が要る相談は自社ツールへ、という役割の分かれ道が自然にできたと考えられます。理念や暗黙の判断基準は研修資料として配っても浸透しにくい種類の情報ですが、質問すれば答えが返る形にすれば、必要になった瞬間に触れられます。
全パートナーを対象にしたAIテストと、非エンジニア向けのリスキリングプログラムを組み合わせた育て方も見逃せません。テストは一人ひとりの理解度を測ると同時に、組織として「ここまでは全員ができる」という水準を引く働きをします。技術職以外にも学びの入り口を用意した点は、活用が一部の部署だけで進んで他が置き去りになる展開を避けるうえで効いたのではないでしょうか。
三つ目は、使う場所を業務の動線に寄せた環境づくりです。Slack上からChatGPTを呼び出せるようにすれば、別の画面を開き直す手間が消え、同僚に尋ねるのと同じ流れでAIに聞けます。さらに、複数のAI検索を並べて使い分けさせる形をとった判断は、ツールを一つに絞る運用とは逆で、目的に応じて答えの出方を比べる習慣そのものを鍛える方向に働きます。