実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.17
回答精度90%、自動車業界団体が専門的な問い合わせ対応にAIを活用
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 特定のベテランしか答えられない質問がある
- 同じような問い合わせ対応に追われる毎日
- 社内資料が散らばって探せない
どのようなAIの取り組み?
社内に散らばる情報とベテランの暗黙知をAIが読める形に整え、専門的な問い合わせへの回答精度90%に到達したAI取り組み
業種
業界団体(自動車産業)
取り組み領域
問い合わせ対応/ナレッジ共有
使ったAI
大規模言語モデル(LLM)とRAGを使ったチャットボット
主な成果
専門的な問い合わせへの回答精度90%を実現
自動車メーカーが加盟する一般社団法人日本自動車工業会(自工会)と、部品メーカーが集まる一般社団法人日本自動車部品工業会(部工会)は、業界共通の指針である「自動車産業サイバーセキュリティガイドライン」について、サプライチェーンを構成する各社から寄せられる問い合わせに対応してきました。回答には専門知識が求められ、担当者個人の経験に依存しやすい業務です。両団体が採り入れたのは、大日本印刷株式会社(DNP)の「DNPノウハウ継承支援サービス」でした。DNP独自のデータ構造化技術を使い、分散していた社内情報と熟練担当者の暗黙知をAIが正確に読み取れるデータ形式へ整理したうえで、大規模言語モデル(LLM)とRAG(外部のデータを検索して回答に活用する仕組み)を組み合わせたチャットボットを構築しています。運用開始後も月次レポートによる利用状況の分析、FAQデータの最適化、AIのチューニングが続けられ、複雑な質問に対する回答精度は90%に達しました。
出典:社員のノウハウを可視化して共有・活用できる「DNPノウハウ継承支援サービス」を開始 | ニュース | DNP 大日本印刷 発行元:大日本印刷株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
自動車産業サイバーセキュリティガイドラインをめぐって、サプライチェーン各社から多様な問い合わせが両団体に集まり、専門知識を要する回答業務が担当者に重くのしかかっていました。ベテランが蓄えたノウハウは属人化し、若手への継承も課題として残されていた状況です。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は問い合わせの件数ではなく、答えを出せる人がごく限られていたことにあります。ガイドラインへの回答は、条文をそのまま読み上げれば済むものではなく、質問してきた企業の立場や状況に照らして意味を噛み砕く必要があります。その判断の蓄積は文書には残りにくく、対応を重ねた人の頭の中にたまっていく。属人化は担当者の怠慢ではなく、この業務の性質から自然に生じたものだったのではないでしょうか。退職や異動のたびに知識が消えるという不安は、その構造の裏返しといえます。
どうやって、うまくいったのか
AI導入の前に、暗黙知と分散情報を「AIが正確に読み取れるデータ形式」へ整理する工程を独立して置いた設計が、この取り組みの土台になっています。RAGは、参照するデータの中に答えの手がかりが整った形で存在してはじめて機能する仕組みです。裏を返せば、担当者の頭の中と各所に散った資料をそのまま渡しても、精度は上がりません。汎用のAIを当てるのではなく、独自のデータ構造化技術で読み取れる形を先に作るという順番の置き方に、この事例の勘所があると考えられます。
もう一つの要因は、稼働後の運用を最初から仕組みとして組み込んだ点です。月次レポートで利用状況を分析し、FAQデータを最適化し、AIをチューニングし直すという流れが、伴走支援として継続されています。問い合わせ対応は、新しい論点が出てくれば参照すべき知識も変わる領域であり、一度作ったデータを固定したままでは答えられない質問が増えていきます。改善の担い手と周期をあらかじめ決めておくやり方は、精度を「維持する」ための現実的な備えです。
業界団体という位置に窓口を置いたことも、この手法と相性がよかったと見ています。個社ごとに散っていれば一件ずつ独立した相談になりますが、団体には同じガイドラインをめぐる質問が集まるため、問いの重なりが大きくなります。重なりの大きい領域は、整理したデータが繰り返し効く領域でもあります。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
自動車産業サイバーセキュリティガイドラインに関する複雑な質問に対して、90%という回答精度が実現しました。あわせて担当者の業務負荷が大幅に軽減され、誰が対応しても回答の内容がそろう均質化も進んでいます。今後は得られた定量・定性的な効果を踏まえて機能を拡張し、業界全体の業務効率化と品質向上へつなげることが期待されています。精度の数字以上に、答えられる人を増やしたという変化が、当初の課題への回答になっていると読めます。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、共通の規程やガイドラインといった明文化された基準があり、その解釈を求める似た質問が複数の相手から繰り返し寄せられる業務でしょう。社内規定やマニュアルを抱える部門、製品仕様の照会が集まる窓口などは、この事例の構図に近い位置にあります。
一方で、同じやり方がそのまま効かない場面もあります。この取り組みが扱ったのは、基準となる文書が存在し、問いの輪郭が比較的はっきりした領域でした。取引先ごとの個別事情や過去の交渉経緯が判断を左右し、正解が一つに定まらない相談では、参照データを整えても回答の精度は安定しにくいはずです。また、月次で利用状況を見て手を入れ続ける担い手を置けるかどうかも、実行可能性を分ける条件になります。
まず試すなら、直近数か月に届いた問い合わせを見返し、同じ規程・同じ条項を根拠に答えたものがどれだけ重なっているかを数えてみてはいかがでしょうか。その重なりの厚みが、整理すべきデータの範囲を教えてくれます。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
一般社団法人日本自動車工業会(自工会)/一般社団法人日本自動車部品工業会(部工会)
出典・参考情報
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