社員の心理状態を6段階に分けて捉えるという設計が、この取り組みの起点になっていると考えられます。AI活用の広がりを測る5段階の成熟度モデルが「組織としてどこまで来たか」を示すのに対し、心理的浸透度モデルは「一人ひとりが今どの気持ちの段階にいるか」を扱います。抵抗感という曖昧なものを段階として言葉にすると、遅れている人を責める話ではなく、次の段階へどう進んでもらうかという設計の話に変わります。
役職者から先に使うという順序の置き方も、効き方の大きい判断です。上位者が実際に使っている状態そのものが、使ってよいという合図として機能します。そこにSlackでの「使ってみた」という声の共有や、人事が主体となる勉強会、LT(持ち時間の短い発表)の場が重なることで、上からの方針と現場の実感が同じ方向を向きます。トップダウン、ボトムアップ、ミドルアップダウンを並べたのは、経路を増やすためというより、どの立場から見ても矛盾しない状態を作るためだったのではないでしょうか。
用途を社内の効率化に閉じなかった点も見逃せません。宝石の名称や背景ストーリー、映像・音声の自動生成、プレイヤーごとに異なるカードを生み出す独自AI、食事の画像解析によるカロリー記録機能といった実装は、AIを製品価値そのものに接続する使い方です。自分たちの本業がAIで変わる姿を社員が目にできる環境は、学ぶ動機を業務命令の外側から支えます。