非エンジニアの担当者がAIにGoogle Apps Scriptのコードを書かせ、自分の手元の作業をそのまま自動化していった進め方が、この取り組みの中心にあります。AIの役割を「調べものに答える相手」から「実装を代わりに書く相手」へ移した点が効いたと見ています。自動化の対象が自分の担当業務なので、何を作りたいかを説明するのに翻訳者が要らず、動いたかどうかの判定も自分でできる。専門家に依頼して仕様を伝え、順番待ちをする工程がまるごと消えたことが、現場が自走できた条件だったと考えられます。
カスタマーサポート部門で採られた、GoogleスプレッドシートのAI関数を使う設計も見逃せません。問い合わせのカテゴリ分類、要約、原因の特定、返信文の作成という複数の判断を、担当者が日常的に開いている表計算シートの一連の流れの中に埋め込んでいます。新しい画面や操作を覚えさせるのではなく、既存の作業導線の上にAIを重ねた形で、これなら「使い始める」ための心理的な段差がほとんど生じません。
開発部門での使い方は、専門知識の穴を埋める発想が独特です。機械学習の専門家が不在という前提を変えないまま、既存モデルのコードをAIに解説させ、そこから改善方向の策定やコードレビューへつなげ、長く手つかずだった与信ツールの刷新に取り組んでいます。AIにゼロから作らせるのではなく、読めなくなっていた自社の資産を読めるようにする使い方であり、判断そのものは人が握り続けている。加えて、2025年5月にAX推進室という推進主体を先に立て、7月にPerplexity AI, Inc.とのパートナーシップに伴って全社導入する順序をとったことも、配って終わりにしない土台になったと考えられます。