実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.17
空港の案内業務をAIで標準化、90%超のスタッフが回答速度向上を実感
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの経験頼みの業務運用
- 分厚いマニュアルを探す時間
- 担当者ごとに違う案内の質
- 新人が独り立ちするまでが長い
どのようなAIの取り組み?
空港のグランドスタッフ業務にナレッジ支援AIを取り入れ、90%超のスタッフが回答速度の向上を実感した取り組み
業種
空港旅客サービス(航空運送業)
取り組み領域
空港カウンター/旅客案内業務
使ったAI
ナレッジ支援システム「空港JAL-AI」(生成AI)
主な成果
危険物検索などで90%以上のスタッフが回答速度の向上を実感
空港のグランドスタッフが担う業務のうち、危険物の検索、ラウンジ入場条件の検索、イレギュラー時のアナウンス文作成という三つを対象に、知識と業務を標準化するナレッジ支援システム「空港JAL-AI」が構築されました。開発はアクセンチュア株式会社とアバナード株式会社の支援のもとで進められ、経験豊富なスタッフへのヒアリングで課題を洗い出したうえで、プロトタイプを成田空港と羽田空港で2〜3週間検証する段階を挟んでいます。現場から返ってきた操作性への指摘を受けて、選択式の画面や回答根拠の引用表示、担当者が知識を追加できる仕組みが加えられ、2025年4月には全国56空港への一斉展開に至りました。
出典:Accenture-Client-Story-Jal.pdf 発行元:Accenture
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
グランドスタッフの業務のなかでも、危険物の可否の確認、ラウンジ入場条件の確認、イレギュラー時のアナウンス文の作成は、とりわけ重い負担になっていました。いずれも膨大なマニュアルを確認し、複雑なルールを踏まえたうえで、多言語での素早い対応まで求められる仕事です。しかも判断の拠りどころは個人の経験や手書きのメモに置かれ、運用は属人的なものになっていました。
労働人口の減少という文脈に置けば、これは人手の数が足りない話に見えます。ただ編集部の見立てでは、より根の深い問題は、必要な知識がどこにあるかを知っているのが一部の人に限られていた点にあったのではないでしょうか。マニュアルが整っていても、目の前の一件に効く一節へたどり着く経路が個人の記憶に依存していれば、人を増やしたところで即戦力にはなりません。
どうやって、うまくいったのか
経験豊富なスタッフへのヒアリングで課題を洗い出し、プロトタイプを成田空港と羽田空港で2〜3週間試すという進め方が、この取り組みの土台になっています。初期には「操作が煩雑」「AIは現場向きではない」という抵抗感や、iPadでの操作性についての指摘が返ってきました。注目したいのは、この反応を利用者の慣れの問題として処理せず、入力方式そのものの設計課題として受け止めたことです。チャット形式で文章を打ち込ませる方式に加えて選択式の画面を用意した判断は、動き続ける現場で言葉を組み立てさせること自体が障壁になる、という読みに基づくものと考えられます。
回答の根拠となるドキュメントを引用として示す設計は、案内業務におけるAIの置きどころを的確に押さえています。危険物の可否やラウンジの入場条件は、誤れば旅客に直接影響する判断であり、答えだけを返されてもスタッフは責任を持って伝えられません。根拠を添える形は、AIの出力を最終判断ではなく確認できる材料へと位置づける切り分けであり、この線引きが実運用への心理的な抵抗を下げたのではないでしょうか。
担当者が自ら知識を追加できる仕組みと、各空港にAI普及のキーパーソンを置く伴走型のサポート体制は、導入を一度きりの出来事に終わらせないための備えです。空港の運用やルールは変わり続けるため、更新の手が開発側だけに握られていると、内容の鮮度が落ちた時点で現場は使わなくなります。更新の入口を現場側に開き、同時に使い方を教えられる人を拠点ごとに配置したやり方は、全国規模へ広げるための前提条件を先に整えたものと読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現場アンケートでは、危険物検索とイレギュラーアナウンス文作成について90%以上のスタッフが回答・作成速度の向上を実感し、ラウンジ入場条件検索でも70%以上が速度の向上を挙げています。マニュアルを探す手間が省け、根拠に基づいた回答が即座に示されることで、新人や外国籍のスタッフでも自信を持って丁寧な案内ができるようになり、知識差や属人的な対応による誤案内のリスクも軽減されています。2025年4月には全国56空港への一斉展開が実現し、現場の声を反映した機能拡張が今後も予定されています。
うちでも使える?
応用できるかどうかを分けるのは、答えの根拠が文書として存在しているかどうかです。危険物の扱いやラウンジの入場条件のように、ルールが明文化され、正解がほぼ一つに定まる問い合わせであれば、AIに探させて根拠ごと示させる形はそのまま移せます。逆に、価格の調整や個別事情への配慮のように、その場の裁量で答えが変わる業務では、根拠を示すという仕組み自体が働きません。文書はあっても更新の担当が決まっていない、古い版が併存しているといった状態も、着手前に手を入れておきたいところです。
始めるなら、対象を三つの業務に絞り込んだこの事例の進め方が参考になります。自社で最も多い問い合わせをひとつ選び、その答えの根拠がどの資料の何ページにあるかを、普段の担当者以外が示せるか試してみてください。示せないなら、AIより先に整えるべき場所がそこにあります。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本航空株式会社
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
