実施 2025.07 ・ 更新 2026.08.17
複数のAIが連携し店舗作業コスト20%削減、流通サプライチェーンの実証実験
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 在庫が余り、廃棄が減らない
- 発注の判断が担当者頼み
- 取引先とデータがつながらない
どのようなAIの取り組み?
複数のAIとデジタルツインで流通のサプライチェーン全体を可視化し、実証実験で店舗作業コストの20%削減を確認したAI取り組み
業種
小売業(小売・流通・卸売)
取り組み領域
需要予測・発注・在庫・物流/店舗作業
使ったAI
連鎖型AIエージェント「DTC-SCM」(デジタルツイン活用)
主な成果
実証実験で店舗作業コストを20%削減
流通業界で恒常化していた在庫と人手の問題に対し、株式会社NTT AI-CIXと株式会社Retail AIが共同で、サプライチェーン全体を対象とした業務最適化の仕組みを構築しました。需要予測から発注、在庫、棚割、物流、店舗作業までの一連の流れをデジタルツイン(現実の業務をデータ上に写し取った模型)として可視化し、DTC-SCMと名付けられた連鎖型のAIエージェントが、業務や企業の枠を越えて互いに連携しながら判断を担います。提供される機能は、小売業向けの自動発注と棚割最適化、卸売業向けの需要予測にもとづく在庫コントロール、メーカー向けの生産・出荷計画最適化です。トライアルホールディングス株式会社の店舗で実証実験を重ね、その結果を踏まえて新会社である株式会社Retail-CIXを設立し、サービスとしての事業展開へと進んでいます。
出典:NTT AI-CIXとRetail AIによるDX新会社の設立について//~連鎖型AIエージェントの提供により、流通サプライチェーンにおける新たな事業を開始~ - NTT AI-CIXオフィシャルサイト 発行元:株式会社NTT AI-CIX
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
在庫が余り、返品と廃棄が積み上がる。製造から配送、販売までの各段階では人が足りず、配送費と店舗の人件費が経営効率を圧迫する。流通業界で長く続いてきたこの状態が、今回の出発点になっています。
ただ、編集部の見立てでは、困りごとの中心にあるのは人手の不足そのものではありません。何がどれだけ売れるかという情報は売り場、つまり川下にあり、作る量と運ぶ量を決める判断は川上にあります。この二つがつながっていなければ、各社は自分の手元だけを見て安全側に構えるしかなく、その余裕が在庫として積み上がり、読みきれない発注の波として物流や店舗の作業量に跳ね返ります。個社ごとの努力では消えない種類のムダが、企業と企業の境目に溜まっていた。そう捉えると、可視化から着手した理由も自然に見えてきます。
どうやって、うまくいったのか
効いているのは、サプライチェーン全体をひとつの巨大な最適化問題として解こうとせず、自動発注、棚割、需要予測にもとづく在庫コントロール、生産・出荷計画といった業務の単位でAIを分け、それらを連鎖させた設計だと考えられます。DTC-SCMと呼ばれる連鎖型のAIエージェントは、それぞれが自律的にタスクを進めながら、業務と業界をまたいで判断の結果を受け渡していきます。単位を分けた効果は導入のしやすさにも及びます。小売、卸売、メーカーのどこから使い始めても機能として成立するため、取引先すべての足並みが揃うのを待たずに入口を作れるからです。
もうひとつの要因は、AIに判断させる前に、現実の流れを写し取る作業を置いたことです。担当者も会社も異なるがゆえに全体像が見えにくかった需要・発注・在庫・棚割・物流・店舗作業の各工程が、デジタルツインによって同じ土台の上に並びます。発注の出し方を変えれば物流の波が変わり、その先の店舗の作業量まで動く。そうした連鎖をデータの上でたどれる状態を先に用意したことが、どこかの部分最適を誰かに押し付ける形を避ける条件になったのではないでしょうか。
実験の場を、実際に商品が動いている店舗に置いた進め方も見逃せません。AI技術を担うNTT AI-CIXと、小売の現場に根ざしたRetail AIが組み、検証の舞台をトライアルホールディングスが引き受けるという役割分担のもとで、机上の試算ではなく日々の売り場で手応えを確かめる形が取られています。効率化の見通しが立った段階で新会社Retail-CIXを立ち上げ、そこからサービスとして外に広げるという順序も、検証と事業化を混ぜないための選択と読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
トライアルホールディングスの店舗での実証実験を通じて、店舗作業コストが20%削減され、店舗在庫は20%圧縮されました。発注の波が緩やかになったことで物流の平準化と効率化が進み10%の削減に、発注精度の向上により欠品と廃棄も5%の削減につながっています。さらに卸売業やメーカーと連携した場合には、生産・出荷計画の合理化、製造現場の作業平準化と残業削減、返品率・廃棄率の削減といった川上への波及効果が見込まれる段階です。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、ムダの原因が自社の内側ではなく、取引先との情報の断絶にあるケースです。売れ行きの情報が発注や生産の判断に届いていないなら、業種が製造でも物流でも、工程をデータ上に並べて連鎖の影響を見るという発想はそのまま使えます。業務ごとにAIを分ける設計も、全社一斉ではなく発注や在庫といった一領域から始める現実的な進め方につながります。
一方で難しさもはっきりしています。この取り組みは、複数の企業が需要や在庫のデータを持ち寄って初めて成立する構造です。自社に閉じたデータだけでは可視化できる範囲が限られますし、どの粒度の情報をどこまで相手に見せるかという合意と、そのためのセキュリティ上の取り決めが先に必要になります。取引先の数が多く関係が流動的な場合、この調整に相応の時間がかかることも見込んでおいたほうがよいでしょう。
今日できる一歩としては、直近で欠品や廃棄が出た商品を数点選び、その発注がいつ、誰の、どんな判断で出されたのかをたどってみること。判断の材料が社内で足りていたのか、それとも取引先の情報が必要だったのかが分かれば、連携の相手と範囲は自然と見えてきます。
この事例は2025年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社NTT AI-CIX
代表取締役社長は社家一平。株式会社Retail AIと共同で株式会社Retail-CIX(資本金1億円、株主構成はNTT AI-CIX 50%・Retail AI 50%、所在地:東京都港区、設立日:2025年7月8日)を設立し、POSデータを活用した高度な需要予測と連鎖型AIエージェントによるサプライチェーン最適化サービスを展開する。NTT株式会社とトライアルホールディングス株式会社との連携協定によるSCM改革の成果を基盤に、DTC-SCM(デジタルツインコンピューティングによるサプライチェーンマネジメント)と呼ばれる連鎖型AIエージェントの最適化エンジンを中核技術としている。
トライアルホールディングス株式会社
出典・参考情報
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