実施 2024.08 ・ 更新 2026.08.17
月17時間の問い合わせ対応が30分に、ユニ・チャームの全社横断生成AIチャット
プロジェクト期間:半年〜 1年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内から同じ質問が何度も届く
- 入れたAIの回答が的外れで使われない
- 一部門だけでAIが止まっている
どのようなAIの取り組み?
社内向け生成AIチャットの参照データを整え直し、法務部門の問い合わせ対応を月17時間から最大30分まで縮めたAI取り組み
業種
日用品製造(メーカー)
取り組み領域
法務・知財などの社内問い合わせ対応
使ったAI
社内向け生成AIチャット(Google CloudのGemini/Vertex AI Agent Builder)
主な成果
法務部門の問い合わせ対応が月17時間から最大30分へ短縮
日用品メーカーのユニ・チャームでは、法務部門の担当者1人あたり月約100件、時間にして約17時間が社内からの初歩的な問い合わせ対応に充てられていました。同社は2023年8月に情報システム部主導で社員専用の生成AIチャット「UniChat」を立ち上げており、その回答精度の向上と他部門への展開を狙って、マルチベンダー対応と伴走支援の実績を持つブレインパッドをパートナーに迎えています。2023年12月からはGoogle CloudのGeminiとVertex AI Agent Builderを使ったPoC(小規模な試験導入)を進め、社内データの整備、利用状況に基づく画面の改善、知財部門での特許庁の外部データ活用に取り組みました。2024年8月に本番利用を開始し、対応件数と対応時間が大きく下がっています。
出典:ブレインパッド、ユニ・チャームの社員専用生成AI利用環境「UniChat」の精度改善と、利用部門の拡大を支援|株式会社ブレインパッド(BrainPad Inc.) 発行元:株式会社ブレインパッド
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
法務部門に寄せられていたのは、契約審査のような重い相談ではなく、初歩的・簡易的な質問でした。1件ごとの難度が高いわけではないぶん、コア業務の合間に細切れの中断が積み上がり、月17時間という形で表面化していたことになります。
注目したいのは、この時点ですでに社員専用の生成AIチャットが稼働していたという点です。それでも問い合わせが法務に集まり続けたのであれば、困りごとの正体は「AIを使える窓口がない」ことではなく、「答えの根拠になる社内の情報が、AIに渡せる形で整っていなかった」ことにあったのではないでしょうか。編集部の見立てでは、これは質問の量の問題ではなく、答えの在り処が特定の部門と担当者に紐づいたままだった構造の問題です。ツールの追加では動かず、参照する材料に手を入れて初めて動く種類の課題だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
回答精度の改善先を、モデルやツールの選定ではなく社内データの整備に定めた判断が、この取り組みの土台にあります。すでにチャットが動いている状態からの再出発であるため、入れ替えれば解決するという発想を取らず、AIが参照する情報そのものを法務部門と情報システム部が一緒に洗い直しました。約半年のPoC期間の相当部分がこの手間のかかる作業に向けられた点は、回答の質は投入した情報の質を超えないという前提に立った設計として読めます。
利用状況の分析から画面の使い勝手を直す手順を、精度向上と並走させたことも効いています。社内向けの仕組みは、使わなくても人に聞けば業務が回ってしまうため、精度が上がっても入り口が面倒なら元のやり方に戻ります。実際のチャットの使われ方を見て改善を重ねる進め方は、精度と定着をあえて別の課題として切り分け、その両方を検証対象に含めた設計だったと考えられます。
知財部門で特許庁の外部データを学習させた仕組みは、社内Q&Aの枠を意識的に越えています。社内文書だけを情報源にすると「誰かがすでに書いた答え」を探す用途で頭打ちになりますが、外部の一次情報を組み合わせれば、特許情報の要約から資料化までの手順そのものをAI側に移せます。特定のベンダーに依存しない構成と、組織に伴走する形の支援をパートナーであるブレインパッドに求めた点も、部門ごとに必要な情報源が変わっていく展開を見越した組み立てとして理解できます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
約半年のPoCを経て2024年8月に本番利用が始まり、法務部門では1人あたりの問い合わせが月100件から最大月3件へ、対応時間は月17時間から最大30分まで下がりました。同年10月には人事、経理、情報システム、知財へと利用範囲が広がり、質問先が分からなくても回答を得られる全体横断型の窓口を設けたことで、利用率は以前の約1.3倍に上昇しています。効果は答える側だけにとどまらず、回答待ちの時間が減ったことで質問する側の業務にも及んでいます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、寄せられる質問が定型的で、その答えの根拠が規程・マニュアル・過去の回答といった文書の形で社内に残っている業務です。特に、専門部署に質問が集中して本来の業務を圧迫している状況なら、この事例の考え方はかなり近い形で当てはまります。知財部門で外部データを組み合わせた発想も、公的な統計や業界データを日常的に読み込んでいる部門であれば、同じ構図で検討する余地があります。
一方で、同じ法務のような部門でも、相手の事情を汲んで落としどころを探る交渉や、前例のない判断が求められる相談は切り出せません。参照できる文書がなく、担当者がその都度考えて答えている領域では、AIに渡す材料自体が存在しないためです。また、この事例ではデータ整備に半年規模の期間をかけ、情報システム部だけでなく現場部門が一緒に手を動かしています。システム部門に丸投げできる取り組みではない点は、体制を組む前に見ておきたいところ。
はじめの一歩としては、部門をひとつに絞り、既存のマニュアルや過去の回答をAIに読ませたうえで、直近に実際に届いた質問をそのままぶつけてみてはいかがでしょうか。どこで答えられ、どこで詰まるかが見えれば、整備すべき情報の輪郭がつかめます。
この事例は2024年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ブレインパッド
データ活用を通じて企業の経営改善を支援するプロフェッショナルサービスおよびプロダクトサービスを提供。東京証券取引所プライム市場上場(証券コード3655)、資本金597百万円(2024年6月30日現在)。
ユニ・チャーム株式会社
出典・参考情報
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