実施 2024.11 ・ 更新 2026.08.17
横浜銀行の融資稟議書AI、年間19,500時間削減を見込む6週間の実証実験
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 書類づくりに追われて客先に出られない
- 提案の質が担当者ごとにばらつく
- 専門的な文書作成が属人化している
どのようなAIの取り組み?
生成AIで融資稟議書の作成を支援し、本格実装時に年間19,500時間の削減見込みを確かめた6週間の実証実験
業種
銀行業(金融)
取り組み領域
融資審査/稟議書作成
使ったAI
生成AI(文書作成支援・情報充足チェック)
主な成果
本格実装時に年間19,500時間の削減を見込む
横浜銀行が日本アイ・ビー・エム(IBM)と協業し、同社のアセットを土台に「融資稟議書作成支援AI」のプロトタイプを用意して、6週間の実証実験を行いました。検証は机上の試用ではなく実際の業務フローに沿って進められ、稟議書に必要な審査項目をどこまで網羅できるか、生成される文章の品質はどうかが多角的に確かめられています。仕組みには文章を書き起こす機能だけでなく、与信判断に必要な情報が揃っているかをAIが客観的に点検する機能も組み込まれました。実験を通じて、本格的に業務へ実装した場合には最大で年間19,500時間、行員1人あたり月およそ8時間の削減が見込まれると評価されています。現在は、抽出された課題を整理して本格実装を検討する段階にあります。
出典:IBM Japan Newsroom - ニュースリリース 発行元:日本アイ・ビー・エム株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
横浜銀行が掲げるのは、多様化する顧客の経営課題に応える「ソリューション・カンパニー」の姿です。ところが現場では、専門的な文書作成と審査業務に多くの時間が吸い取られ、本来向き合うべき営業活動に手が回りきらない状態が続いていました。同時に、融資審査を担う行員のヒアリング力や提案力をどう底上げするかも課題として意識されています。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は作業時間の多い少ないではなく、書類を仕上げる作業と、顧客から情報を引き出す対話とが切り離されてしまっていたことにあります。稟議書はもともと顧客との対話から得た材料を組み上げる成果物です。その組み上げ作業に時間を奪われるほど対話に充てられる時間が減り、対話が薄くなれば書く材料も足りなくなる。効率化と品質向上を同時に求めた背景には、この循環を断ち切らないかぎりどちらも動かない、という認識があったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
周辺作業ではなく、稟議書という成果物そのものの作成プロセスへ生成AIを直接差し込んだ設計が、この取り組みの起点になっています。議事録の要約や資料検索といった手前の工程を支援する形にとどめれば導入は容易ですが、そのぶん効果は間接的になりがちです。検証を実際の業務フローに沿わせ、審査項目の網羅率と文章品質という二つの軸で品質を見た点にも、成果物の完成度そのものを問う姿勢が表れています。
文章を生成する機能の隣に、与信判断に必要な情報が揃っているかを客観的に点検する機能を並置した構成が、この事例で最も示唆に富む部分だと考えられます。文章生成だけを担わせると、情報が欠けたままでも体裁の整った文面ができあがり、不足が見えなくなるという難点があります。不足している審査項目を名指しさせる役割をAIに与えた設計は、出力の品質を担保する仕組みであると同時に、担当者が次に何を聞き取るべきかを知る手がかりを生む仕組みにもなっています。効率化の道具と育成の道具を別々に用意せず、一つの機能から両方を引き出す構えです。
プロトタイプを6週間という短い区切りで検証する進め方と、IBMのアセットを土台に据えた役割分担も、この設計を成り立たせた要素でしょう。基盤部分を既存のアセットに委ね、銀行側は業務要件の定義と検証の設計に力を注ぐ。この分担があったからこそ、限られた期間で実業務に沿った検証まで踏み込めたと読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
6週間の実証実験を通じて、生成AIによる稟議書作成支援が業務効率化に寄与することが確認されました。ただし削減量は実績ではなく試算であり、本格実装した場合に最大で年間19,500時間、行員1人あたり月およそ8時間という見込みの段階にあります。定性面では、与信判断に必要な審査項目のうち顧客へのヒアリングが足りていない箇所をAIが明確に示せることが実証され、行員自身の審査スキル向上という教育的な効果も期待されています。同行は抽出された課題を整理し、本格的な業務実装に向けた検討を進める段階です。
うちでも使える?
この手法が効きやすいのは、書くべき項目があらかじめ決まっていて、出来上がりの良し悪しを「どの項目が埋まっているか」で判定できる文書業務です。提案書、申請書、調査報告書のように、必要な観点が社内で共有されている書類なら、不足を指摘させる使い方はそのまま移せる可能性があります。
逆に応用が難しいのは、点検の基準そのものが文書化されていない場合です。融資稟議書のように審査項目が体系として存在するからこそ、AIは「ここが足りない」と言い切れます。何を書けば十分なのかがベテランの頭の中にしかなく、案件ごとに構成が変わる書類では、AIに点検させる前に基準を形にする作業が先に来ます。ソースでも、正確な指摘を行うためのプロンプト設計と社内データの整備が導入のハードルとして挙げられていました。
まず試すなら、直近で差し戻された書類を数件並べ、どの項目でつまずいたのかを見比べてみてください。何度も引っかかる項目こそ、AIに点検させる最初の対象になります。
この事例は2024年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
日本アイ・ビー・エム株式会社
世界175カ国以上でビジネスを展開するIBMコーポレーションの日本法人。基礎研究をはじめ、ビジネス・コンサルティングからITシステムの構築、保守まで一貫したサービスの提供を通じて、顧客企業の企業変革やデジタル・トランスフォーメーションを支援している。
株式会社横浜銀行
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