実施 2024.12 ・ 更新 2026.08.17
富士フイルムとNECの保守部品AI需要予測、適正在庫の部品が2.7倍の実証実験
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 売れ残る部品と欠品する部品が同時に出る
- 何個持てば適正なのか根拠がない
- 数年先まで使う部品の数を読みたい
どのようなAIの取り組み?
デジタルカメラの保守部品の需要をAIで予測し、在庫の過不足を減らせるかを富士フイルムとNECが共同で検証した実証実験の事例
業種
デジタルカメラ製造(電機・精密機器)
取り組み領域
保守部品(アフターパーツ)の在庫管理・需要予測
使ったAI
AIによる需要予測モデル(NEC Advanced-S&OPソリューション)
主な成果
実証実験の机上比較で「適正」在庫に分類される部品点数が従来の2.7倍
製造終了後も一定期間供給が必要なアフターパーツ(保守部品)の在庫をどう持つかという課題に対し、富士フイルムとNECが共同で需要予測の実証実験を行いました。対象はデジタルカメラの保守部品で、期間は2024年12月から2025年5月末までの6か月間。すでに供給期間が終了している約1800種類の部品を題材に、AIによる需要予測モデルを作成しています。取り組みはNECの「NEC Advanced-S&OPソリューション」のアフターパーツ需要予測ツール構築につながる位置づけで、AI技術に加え、データ分析の専門知見とSCM・S&OP領域の業務知見を組み合わせて進められました。検証では富士フイルム社内の在庫評価資料を使い、従来の予測結果と机上で比較しています。
出典:NEC、富士フイルム向けにAIを活用したデジタルカメラのアフターパーツ需要予測ツールを構築開始 | 日本電気株式会社のプレスリリース 発行元:日本電気株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
製品の製造が終わっても、顧客が使い続ける以上、部品は供給し続けなければなりません。ところが在庫を厚く積めば財務を圧迫し、逆に切らせば金型の作り直しや代替部品探しに時間も費用も労力もかかる。どちらに倒れても痛手が大きい、という板挟みが出発点にあります。
ここで効いていたのは、部品の数そのものよりも「いくつ持てば適正なのかを説明できる根拠がなかったこと」ではないでしょうか。供給期間は業界や製品で異なり、しかも数年単位の長い時間軸で、一点あたりの動きは細く不規則になります。経験則で決めるほかない状態では、担当者は判断のたびに過剰と欠品のどちらかのリスクを引き受けることになり、社内で数字を握り合う材料も持てません。困りごとの本質は在庫の量ではなく、量を決める根拠の不在にあったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
検証の対象に、すでに供給期間が終了している約1800種類の部品を選んだ点が、この取り組みの土台になっています。供給が終わった部品には、最初から最後までの需要の推移が結果として残っているため、予測モデルが正しく当てられたかどうかを後から突き合わせられます。まだ供給中の部品で試せば答え合わせは数年先になりますが、終了済みの部品なら短期間で精度を確かめられる。実証実験を6か月という現実的な期間に収めたのは、この題材の選び方によるところが大きいと見ています。
AI技術を単体で持ち込まず、データ分析の知見とSCM・S&OP領域の業務知見を掛け合わせた体制も要因です。保守部品の需要は、修理の発生や製品の使われ方といった業務側の事情に左右されるため、数字の並びだけを見ても部品ごとの性格は読み取れません。NECが分析と業務の両面を担い、富士フイルム側が実際の部品と在庫の実態を持ち寄る役割分担によって、部品ごとの特徴を捉えるモデル設計が可能になったのでしょう。
予測を、既存の社内の物差しに接続したことも見逃せません。検証では富士フイルムの在庫評価資料を使い、従来の予測結果と机上で比較する形をとっています。新しい指標を持ち込むのではなく、これまで在庫の良し悪しを判断してきた枠組みの上で新旧を並べたことで、現場が結果の意味をそのまま解釈できる。データサイエンスに基づく根拠を持たせる狙いが、需要と供給の最適化だけでなく、関係者とのやり取りや戦略立案の材料づくりにまで向けられているのも、この設計思想の延長線上にあります。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験では、富士フイルム社内の在庫評価資料を用いて従来の予測結果と机上比較を行い、作成した需要予測モデルが部品ごとの特徴を捉えた結果として、「適正」在庫に分類される部品点数が従来の管理方法の2.7倍に増加しました。過剰と不足の双方を大きく減らし、より効率的な在庫管理につながることが確認された段階です。この結果を受け、富士フイルムはデジタルカメラ分野での本ツールの本格導入に向けた検討を進める予定としています。あくまで机上比較による検証結果であり、実運用での効果はこれから確かめられていく段階と読むのが妥当でしょう。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、供給を終えた品目の履歴が品番単位で残っている場合です。自動車や家電、産業機械のように長期の保守供給が求められる分野であれば、過去に役目を終えた部品群がそのまま検証用の教材になります。加えて、在庫の良し悪しを判定する社内の物差し(在庫評価の基準や区分)が既にあると、新旧の比較がしやすく、結果を社内で説明する手間も小さくなります。
一方で、難しくなる条件もはっきりしています。品番の統廃合や代替部品への振り替えが繰り返されて履歴が分断されている場合、同じ部品の需要が複数の番号にまたがり、モデルが学ぶべき一本の線を引けません。供給を終えた実績がまだ蓄積していない新しい製品分野や、リコール対応など外部要因で需要が跳ねる部品も、過去からの外挿が効きにくい領域です。
最初の一歩としては、すでに供給を終えた部品を数十点だけ選び、当時見込んでいた数と実際に出ていった数を並べてみることをおすすめします。外れ方に偏りがあるのか、特定の性格の部品だけ大きく外れているのか。そこが見えれば、AIに何を予測させるべきかの輪郭も自然と定まってきます。
この事例は2024年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
日本電気株式会社(NEC)
情報通信分野の企業。DXに関してビジネスモデル、テクノロジー、組織・人材の3軸で、戦略構想コンサルティングから実装に導くオファリングなどEnd to Endのサービスを提供。従来型のSIerから「Value Driver」への進化を目指し、価値創造モデルを「BluStellar(ブルーステラ)」として体系整理している。
富士フイルム株式会社
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
