実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.17
ライオンが社内組織主導で内製したデータ基盤、経営判断をリアルタイム化
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 経営数字の集計に毎月追われている
- システムごとに数字がバラバラ
- 勘と経験頼みの判断から抜けたい
どのようなAIの取り組み?
Google Cloud上に全社データ基盤を構築し、分散していた経営データを統合してリアルタイムな状況把握につなげたAI取り組み
業種
日用品・化学品製造(製造業)
取り組み領域
経営データ統合/データ基盤構築
使ったAI
Gemini in BigQuery(生成AI)、Looker、Google Cloud
主な成果
経営層が最新データのダッシュボードで状況を把握し、迅速な意思決定が可能に
日用品・化学品を手がけるライオンは、中期経営計画で掲げた収益力の強化を支える柱として、全社のデータ基盤づくりに着手しました。技術基盤にはGoogle Cloudを選び、販売・会計・生産といった基幹業務を担うERP(企業の中核業務を一元管理するシステム)のデータを中心に、社内に散らばっていた各種データを一か所へ集約しています。大量データを高速に扱えるBigQueryを土台に、Gemini in BigQueryやLookerを組み合わせ、可視化と分析を一部の専門家だけのものにしない体制を整えました。特徴的なのは、企画から構築、運用までを外部ベンダーに任せきりにせず、社内の専門組織「クラウドCoE」が主導して内製した点です。経営層は最新データを網羅したダッシュボードで状況をつかめるようになりました。
出典:20251015.pdf 発行元:ライオン株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
各事業や各システムにデータが分かれて存在し、経営の目線でリアルタイムに使える状態になっていなかった。加えて、これまでの意思決定は経験に依る部分が大きく、データを手がかりに先手を打つ動きが取りにくい状況にありました。
困りごとの本質は、データが不足していたことではなく、集めた情報が「誰のためのものか」という設計思想の違いにあったのではないでしょうか。ソースには、従来のシステム刷新が現場の業務改革に主眼を置きがちだったと記されています。現場の効率化を目的に組まれた仕組みは、業務単位で最適化されるぶん、事業や部門をまたいで経営指標を横串で見る用途には向きません。つまり、個々のシステムがうまく動いていたからこそ、経営レベルの視界だけが空白のまま残った——そう読み解くと、この会社が現場改善ではなく経営の意思決定そのものを基盤づくりの主題に据えた理由が見えてきます。
どうやって、うまくいったのか
企画・構築・運用の全工程を社内のクラウドCoE(専門知見を集約する中核組織)が主導する体制を選んだことが、この取り組みの土台になっていると考えられます。データ基盤は作って終わる性質のものではなく、事業の変化に合わせてデータの持ち方や指標の定義を絶えず組み替え続ける必要があります。外部に委ねると、その都度の仕様調整が発注と納品のサイクルに乗ってしまい、判断のスピードが基盤の更新速度に縛られてしまう。知見を社内に残す設計が、アジリティとコストの両面に効いている理由はここにあるでしょう。
統合の出発点にERPの販売・会計・生産データを据えた点も、優先順位の付け方として合理的です。周辺の細かなデータから積み上げるのではなく、経営が最も頻繁に参照する中核の数字から束ねていく順序をとれば、基盤が形になった時点で経営判断に直結する価値が生まれます。データ統合の取り組みが「集めたが使われない」状態に陥りやすいことを踏まえると、使い道が最初から確定している領域を先に押さえた選択は理にかなっています。
可視化と分析を特定の担当者に閉じ込めない設計も見逃せません。BigQueryのスケーラビリティを前提に、Lookerによる可視化とGemini in BigQueryを組み合わせることで、データを扱える人の裾野を広げる方向に舵が切られています。基盤の価値は問いを立てる人の数に比例して増えるため、分析の民主化を初期から織り込んだ構えが、基盤を単なる保管庫で終わらせない支えになっているはずです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
新しいデータ基盤の稼働により、経営層は最新データを網羅したダッシュボードを通じて経営状況を正確に把握できるようになり、変化の兆しを捉えた迅速な意思決定が可能になっています。今後は可視化にとどめず、AIや機械学習を用いた高精度な需要予測やサプライチェーン最適化など、未来の経営指標を予測する機能の追加が予定されており、クラウドCoE体制のさらなる拡充も方針として示されています。可視化から予測へという段階の踏み方が明示されている点は、基盤投資の道筋として参考になります。
うちでも使える?
参考にしやすいのは、事業部や拠点ごとに別々のシステムが動いていて、全体の数字を出すのに手作業の集計が挟まっている会社です。業種は問わず、複数の販売チャネルや複数の工場を抱えていて、経営会議のたびに数字の突き合わせが発生しているなら、統合の効果が出やすい構図といえます。
一方で、内製という選択をそのまま持ち込むのは簡単ではありません。クラウド基盤を設計・運用できる人材の確保と育成が前提になり、その組織づくり自体が最初の関門になります。人員的にCoEのような専任組織を置けない場合は、外部の力を借りつつ、指標の定義やデータの持ち方を決める部分だけは社内に残す、といった折衷が現実的でしょう。もう一つ注意したいのは、基盤づくりが現場の業務改善プロジェクトに引き寄せられやすい点です。誰の判断を速くするための投資なのかを最初に固定できないと、この事例が避けた落とし穴に戻ってしまいます。
手始めに、次の経営会議で真っ先に見たい指標を一つだけ挙げ、その数字が今どのシステムに、どれだけの遅れをもって存在しているかを追いかけてみてはいかがでしょうか。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
ライオン株式会社
「習慣を科学する」をデジタル戦略推進のスローガンに掲げ、中期経営計画「Vision2030 2nd STAGE」で「収益力の強靱化」を目指す企業。代表取締役兼社長執行役員は竹森征之氏。社内専門組織「クラウドCoE(Center of Excellence)」を設置し、全社データ基盤を内製で構築している。
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