実施 2025.10 ・ 更新 2026.08.17
工場と販売の調整業務をAIで一元化、工数3割減を目指すリコーの実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 部門間の調整が担当者頼み
- エクセルとメールの往復が煩雑
- 需要の読みが人によってばらつく
どのようなAIの取り組み?
工場と販売部門の需給調整のやり取りを自社開発のAIプラットフォームに集約し、2030年までの業務工数3割削減を目標に実証実験を進めているAI取り組み
業種
複合機・事務機器製造(精密機器)
取り組み領域
需給調整・サプライチェーン管理
使ったAI
LLM・RAG(生成AI)、需要予測AI
主な成果
2030年までに業務工数3割の削減を目標(実証実験段階)
複合機などを手がけるリコーが、サプライチェーンマネジメントの最適化を狙って、社内の需給調整業務を対象に始めた取り組みです。本社と国内外の販売拠点、そして工場のあいだで交わされていたやり取りを、自社で開発したAI搭載のプラットフォーム上に集約し、エクセルとメールに依存していたコミュニケーションをデジタルの形に置き換えました。あわせて、市場で稼働している複合機のデータをもとにトナーや消耗部品の需要を予測するAIシステムの開発にも着手し、急な需要変動が起きた際の工場との調整については、LLM(大規模言語モデル)を使った支援の仕組みを組み上げています。現在は社内での実証実験の段階にあり、2030年までに業務工数を3割減らし、業務品質を高めることを目標に掲げています。
出典:リコー、AIを活用した需給調整業務改革の実証実験を開始 | リコーグループ 企業・IR | リコー 発行元:株式会社リコー
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
需給調整は、工場と販売部門という立場の異なる相手を突き合わせる仕事です。リコーでもこのやり取りは属人化しやすく、担当者どうしの連絡はエクセルとメールに頼っていました。その結果、業務全体が見えにくくなっていたことが、改革の出発点になっています。
ただ、編集部の見立てでは、困りごとの本質はツールが古いことそのものではありません。エクセルとメールという手段は、届いた瞬間から個人の受信箱の中だけで完結します。誰がどんな理由で数量を動かしたのか、その判断の経緯が組織側に残らず、一人ひとりの記憶と手元のファイルにしか蓄積されていかない。だからこそ担当者が代わると同じ判断を再現できず、可視化のしようもなかったのではないでしょうか。属人化は原因ではなく、この構造から必然的に生まれた結果だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
注目したいのは、既存の業務にAIを付け足すのではなく、やり取りが行われる場そのものを共通のプラットフォームへ移した順序です。メールに散らばったままの情報は、どれだけ高性能なAIを用意しても読み取る対象になりません。拠点も工場も本社も同じ基盤に乗せてデジタル化するという設計は、地味に見えて、AIが働ける前提条件を先につくる判断だったと受け止められます。
もうひとつは、AIの使いどころを定常の仕事と例外の仕事に切り分けた点です。日々のサプライ需要には、市場で動いている複合機の状況データを起点にした予測AIを当てる。一方、急な需要変動のように前例をなぞれない場面には、LLMによる調整支援を割り当てる。同じ需給調整という言葉でくくられていた業務を、繰り返しの多い部分と判断が要る部分に分解したうえで、性格の違う技術を配置する。この切り分けが、実運用に耐える設計につながっていくのだろうと考えられます。
RAG(外部のデータを検索してAIの回答に活かす仕組み)を組み合わせている点も、この文脈で読めます。調整の判断には社内に散在する固有の情報が要り、汎用のモデル単体では答えを出せません。自社が持つデータを参照させる構成は、外に一般解を求めるのではなく、社内の文脈にAIを引き寄せるやり方です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本プロジェクトは実証実験の段階にあり、成果はまだ目標として置かれています。エクセルとメールへの依存から離れることで大幅な業務効率化が期待されており、2030年までに現時点から業務工数を3割減らすこと、あわせて業務品質を高めることが掲げられています。市場の稼働データを使った需要予測の精度向上は、サプライチェーン全体の最適化につながる価値があると見込まれています。ここで蓄積されたノウハウを将来的に顧客へ提供することも視野に入っており、社内のDXで終わらせない構えが読み取れます。
うちでも使える?
複数の拠点や部門をまたいで日々の調整が発生し、その経緯がメールと個人のファイルにしか残っていない組織であれば、考え方は移しやすいはずです。製造業に限らず、複数店舗の在庫を融通し合う小売や、日々配車を組み直す物流でも、同じ構図が見つかるでしょう。
一方、そのまま真似が効かない部分もあります。需要予測の側は、市場で動いている自社製品から状況データが上がってくることが土台になっています。手元に継続的なデータの流れがない業種では、予測の仕組みだけを先に立ち上げても同じようには機能しません。また、この取り組みは2030年という長い時間軸で目標が引かれており、短期の効果を求める場面とは前提が違います。慣れたエクセルとメールを手放してもらう移行の負荷も、相応に見込んでおく必要があります。
まず試すなら、直近で起きた急な需要変動の対応を一件だけ選び、決着するまでに何人が何往復やり取りしたかを追いかけてみてはいかがでしょうか。その往復の中身こそが、AIに任せられるかどうかの判断材料になります。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社リコー
お客様のDXを支援し、デジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供するリコーグループの中核企業(2025年3月期グループ連結売上高2兆5,278億円)。1980年代からAI開発に着手し、画像認識・自然言語処理・音声認識AIや独自の大規模言語モデル(LLM)を開発している。
出典・参考情報
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