実施 2022.10 ・ 更新 2026.08.17
検査員4分の1へ、毎分500個のチーズを5面撮影で見分けるAI外観検査
プロジェクト期間:3年以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 目視検査の集中力が続かない
- 検査する人によって判定がぶれる
- 検査に人手を割かれ続けている
どのようなAIの取り組み?
1レーン2台のカメラで個包装チーズの5面を撮影し、目視検査の担当者を約4分の1に減らしたAI取り組み
業種
チーズ製造(食品製造業)
取り組み領域
生産ライン/製品の外観検査
使ったAI
画像認識AI(AI外観検査装置)
主な成果
目視確認を担当する検査員を従来の約4分の1に削減
六甲バターは、年間2億本以上を生産するベビーチーズの外観検査にAIを取り入れました。2019年に新設された神戸工場では、充填機の出口を1分間に500個という速さで流れる製品を検査員が目で確認しており、集中力の消耗と熟練度による精度差が課題になっていました。同社は清水建設と共同で、1レーンにつき2台のカメラを設置し、個包装されたベビーチーズの5面を撮影して良否を判定する検査システムを構築します。開発では、検査員ごとに違っていた品質基準を明確な数値基準へ定義し直し、それに沿った学習データを自社主導で整えました。2022年10月に1号機が目標を達成し、その後は複数の生産装置へ横展開が進み、目視確認を担う検査員は従来の約4分の1となっています。
出典:AIによる検品自動化の裏に試練あり。大手プロセスチーズメーカーの挑戦 | NTT docomo Business Watch | NTTドコモビジネス 法人のお客さま 発行元:NTTドコモビジネス
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
毎分500個の速度で流れる小さな個包装を、人の目だけで見続ける。神戸工場の検査工程は、長時間にわたって集中力を保ち続けることを前提にした作業でした。しかも良否の判断は検査員の熟練度に左右され、誰がその位置に立つかで結果が変わる余地が残っていました。
編集部の見立てでは、この現場が抱えていた本質的な問題は、人手の数でも流れる速さでもなく、良品と不良品を分ける線が検査員それぞれの経験の中にしか存在していなかったことにあります。線が言葉や数字になっていなければ、人を増やしてもばらつきは消えませんし、機械に任せようとしても何を教えればよいのかが決まりません。省人化に先立って、判断そのものを人の頭の外へ取り出す作業が避けられなかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
検査員ごとにばらついていた品質基準を標準化し、明確な数値基準へ置き換えた工程が、この取り組みの土台になっています。AIの判定精度は学習データの質でほぼ決まりますが、そのデータに付ける正解ラベルは、基準が定まっていなければ誰にも付けられません。基準づくりを外部任せにせず、現場を知る側が主導して精度の高い学習モデルを作り上げた進め方は、判定のずれを後から補正する手戻りを構造的に減らします。
対象物の性質に合わせてデータ収集の段取りを組み替えた点も見逃せません。充填直後のチーズは柔らかく形状が変わりやすいため、ラインから排出される前に不良品へ急いでラベルを付けるという、時間に追われる地道な作業が求められています。撮りためた画像を後から机上で仕分ければ済む、という前提が通用しない対象に対し、収集のその場で正解を確定させる運用を選んだ判断が、学習データの信頼性を支えていると考えられます。
三つ目の要因は、精度が出ない原因を光学条件まで遡って潰していったことです。アルミ包装材の光沢や影が学習に悪影響を及ぼすという壁に対しては、モノクロカメラからカラーカメラへの変更やレンズの調整が繰り返され、そのたびに学習用データセットが作り直されました。清水建設という開発パートナーと役割を分担しながら、アルゴリズムの調整だけでなく撮影条件そのものを設計の変数として扱った点に、この進め方の粘り強さが表れています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2022年10月に1号機で目標を達成したのを起点に、AI検査装置は複数台の生産装置へ横展開されました。目視確認を担当する検査員の数は、従来の約4分の1にまで減っています。検査業務から外れたスタッフは機械の運転や調整を学んでオペレーター補助へとスキルアップし、AIが不良判定を出した際に装置の不具合へ迅速に気づいて対応できる体制も生まれました。人員を減らした先に、異常の原因側へ手を打てる役割が残っている点は、省人化の成果として重要です。同社は今後、生産機器の劣化具合を検知して部品交換の時期を予測する予知保全へのAI活用も検討しています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、良品と不良品の差が最終的に見た目に現れ、その判断の理由を言葉や数値へ落とし込める検査です。外観検査や品質管理の工程を持つ製造現場であれば、業種が違っても基準づくりから始める考え方は移植できます。
一方で、そのまま真似しにくい条件もあります。柔らかくて形の変わる製品や、強く光を反射する包装材が相手になると、カメラの選定と撮影条件の調整、そしてデータセットの作り直しを何度も往復することになり、その工数を最初から見込んでおかないと精度が上がらないまま止まります。判定基準が人によって割れたままの状態も、着手前に片付けておきたい前提条件です。
今日できる一歩として試したいのが、検査を担当している二人に同じ製品を並べて見せ、それぞれ良品か不良品かを判定してもらうこと。判定が割れた品物こそ、AIに教える前に決めておくべき基準の在りかを指し示しています。
この事例は2022年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
清水建設
六甲バターのパートナーとして、ベビーチーズの製品外観検査装置のハードウェアとAI検査システムを開発した企業。
六甲バター株式会社
出典・参考情報
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