実施 2024.10 ・ 更新 2026.08.17
アサヒ飲料が2つのAIで輸送コスト約6.2%削減、在庫平準化の実証実験
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 余剰在庫と欠品の板挟み
- 日ごとに輸送量が振れて手配が大変
- 取引先と在庫の状況が共有できない
どのようなAIの取り組み?
2つのAIで受注の予測と補充量の平準化を分担させ、企業間で生産・販売・在庫の情報を共有しながら輸送の負荷を抑えられるかを検証したAI取り組み
業種
飲料製造業(食品・飲料)
取り組み領域
サプライチェーン/在庫・輸配送計画
使ったAI
2つの機械学習モデル(受注予測・補充量の最適化)
主な成果
実証実験で輸送コスト約6.2%、在庫日数約6.5%を削減
アサヒ飲料が、Hacobuと JDSCが共同開発した生産・販売・在庫管理サービス「MOVO PSI」を使い、飲料の輸送量を平準化できるかを検証した実証実験です。仕組みの中心にあるのは2つの機械学習モデルで、片方が卸売業や小売業からの受注を予測して在庫の動きを正確につかみ、もう片方が必要最低限の補充数量を毎日一定に保つために、膨大な組み合わせの中から最適なパターンを計算して現場の実務を支えます。さらにメーカー・卸売業・小売業をつなぎ、PSI(生産・販売・在庫)の情報を蓄積して共有するプラットフォームとしても機能させ、在庫量と輸配送量の最適化を図る基盤を組み立てました。2024年3月から4月の実証では輸送コストと在庫日数の双方で削減が確認され、サービスの本格展開が決まっています。
出典:物流課題解決に向けた輸送量平準化を推進 AIで生産・販売・在庫情報を分析する新サービス『MOVO PSI』を活用し在庫量や輸配送量の最適化を目指す|ニュースリリース 2024年|会社情報|アサヒ飲料 発行元:アサヒ飲料株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2024年4月からの働き方改革関連法の適用によって物流の停滞が懸念される、いわゆる2024年問題が業界共通の課題となっていました。飲料はセールや季節変動、天候によって需要が読みにくく、各社は欠品を避けようとして余剰在庫を抱えがちです。小売業で起きた急な需要増が卸売業を経てメーカーへ伝わる過程で変動が膨らむ「需要増幅効果」も発生し、段階ごとに過剰在庫や不必要な輸送が生まれていました。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は在庫の量そのものではなく、需要の情報が企業をまたぐたびに歪み、各社が自社から見える範囲だけで安全側に判断を寄せてしまう構造にあったと考えられます。一社の予測精度をどれだけ磨いても、隣の企業の在庫や受注が見えない限りこの歪みは残ります。効率的な輸送手配が組みにくいという現象は、その積み重なりが最後に表面化した症状だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
役割の異なる2つの機械学習モデルを直列に並べ、「どれだけ出るかを読む」ことと「どう補充するかを決める」ことを切り分けた設計が、まず効いていると見られます。需要を読む処理と、読んだ結果をもとに膨大な組み合わせから補充パターンを選ぶ処理では、求められる精度も更新の頻度も本来異なります。ひとつのモデルに両方を背負わせなかったことで、狙いどおりに動かないときに予測側と計算側のどちらを手当てすべきかが判別できる構造になっている点も見逃せません。
次に注目したいのは、仕組みを一社の在庫管理ツールではなく、メーカー・卸売業・小売業をつなぐ情報基盤として置いた判断です。需要の歪みが企業と企業の境目で生まれている以上、打ち手も同じ境目に置かなければ届きません。PSI情報を蓄積・共有する土台をサービスの中核に据えたのは、課題の発生場所と対策の設置場所を一致させる考え方だと読めます。開発は物流データ基盤を手がけるHacobuとAI開発を担うJDSCの共同で行われ、飲料メーカーであるアサヒ飲料が自社の物流現場で検証するという役割分担で進められました。
三つ目は、AIに与えた目標の翻訳の仕方です。在庫を極限まで絞ることを目指すのではなく、必要最低限の補充数量を毎日一定に保つという、現場が扱いやすい形に目標を置き換えています。輸送は総量よりも量のばらつきによって手配が難しくなる性質があり、日々の振れ幅を抑える方向に目標を定めれば、AIが出した計算結果がそのまま配車の組みやすさへ変換されます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
アサヒ飲料が2024年3月から4月にかけて実施した実証実験では、特定の配送センターへの輸送コストが約6.2%、在庫日数が約6.5%削減されました。先行して実証実験を行ったキリンビバレッジでは、輸送コスト約9.1%、在庫日数約13.2%の削減という結果が出ています。これらを受けてサービスの本格展開が決定し、今後は導入を拡大しながら、積載率の向上と納品時の欠品率の低減を推進していく方針です。数字の意味を編集部なりに読み解けば、在庫と輸送という別々に管理されがちな指標が同時に下がったこと自体が、両者が同じ需要の歪みから生じていたことの裏づけといえます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、特売や季節、天候で需要が振れやすく、商品が卸売業や小売業を経由して流れていく業種です。食品や日用品のように、欠品を恐れて各段階が少しずつ多めに持つ構造があるなら、同じ読み替えが利く可能性があります。
一方で、この事例の効果は複数の企業がPSI情報を持ち寄って初めて成り立つ性質のもので、そこが最大の関門です。取引先が受注データの開示に慎重であったり、共有範囲やセキュリティの取り決めが整っていなかったりすれば、AIの精度以前に前提が揃いません。また「毎日一定量を補充する」という考え方は、日々継続的に出荷がある商材を前提としています。受注が単発・大口に偏る商材では、平準化で得られる余地はそもそも小さいと見ておくべきでしょう。
まず試すなら、直近数か月の出荷実績を配送先ごとに日別で並べ、量の多さではなく振れ幅の大きい配送先を見つけるところから。振れの原因が自社の判断にあるのか、取引先から届く需要情報の歪みにあるのかが分かれば、次に誰と何を共有すべきかが見えてきます。
この事例は2024年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
