実施 2023.08 ・ 更新 2026.08.17
経験と勘の発注をAIで自動化し週600時間削減、400店舗のドラッグストア
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 発注数量がベテラン頼み
- 日持ちしない商品の在庫が読めない
- 毎日の発注作業に時間を取られる
どのようなAIの取り組み?
30種類の変動要因データを分析する需要予測AIを棚割システムとつなぎ、日配品を含む発注量の算出から在庫の制御までを自動化した取り組み
業種
ドラッグストア・調剤薬局(小売)
取り組み領域
店舗の発注・在庫管理
使ったAI
需要予測型自動発注システム(需要予測AI)
主な成果
店舗の発注作業時間を1週間で約600時間削減
ドラッグストアチェーンを展開する中部薬品は、店舗の発注業務を支える仕組みとして、株式会社日立システムズの「需要予測型自動発注システム」を導入しました。天候や特売、季節行事など30種類の変動要因データを分析し、消費期限の短い日配品まで含めて需要と適正在庫を予測する仕組みです。同社の棚割システムと連携させることで、陳列情報や販売計画をふまえた発注量をAIが提案し、店舗側は毎朝その推奨値を確認するだけで発注を終えられる流れをつくりました。商品の入れ替え時には在庫を自動的に絞る「売り減らし機能」も併用しています。導入は国内400の全店舗に及び、発注作業時間の削減という定量的な成果が示されています。
出典:AIによる「需要予測型自動発注システム」を中部薬品全店舗に導入:ニュースリリース:2024年:株式会社日立システムズ 発行元:株式会社日立システムズ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
発注数量の算出がベテラン担当者の経験と勘に委ねられ、その判断の中身を次の世代へ引き継げない。労働人口が減っていく流通業界において、これは単に「作業が重い」という話にとどまらない問題でした。中部薬品でも以前からAIによる需要予測を模索していたものの、既存システムでは日配品のように変動の大きい商品の精度が上がらず、発注の自動化まで届かないという壁にぶつかっています。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは予測の当たり外れそのものよりも、予測結果を「今日、何個頼むか」という行動へ変換する経路が存在しなかったことにあります。数字の見通しが画面に出ても、最後の決定を人が背負い続ける限り、属人化も作業時間も減りません。予測と発注のあいだに残った空白を誰が埋めるのか、という問いが先送りされていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
需要の見通しを出すところで止めず、在庫の制御まで一続きの機能として設計したことが、この取り組みの中心にあります。選定時に評価されたのも、高精度な予測と発注制御機能の両方を備えている点でした。新商品や代替商品への入れ替えでは、切り替え予定日に向けて在庫を自動的に絞り込む「売り減らし機能」が働きます。予測を判断材料として提示するのではなく、発注量という実行可能な形にまで落とし込む設計が、現場が使える自動化の条件だったと考えられます。
棚割システムとの連携は、AIに「売り場の計画」という前提を渡した点で効いています。何をどこにどれだけ並べる予定なのかという情報が入ることで、提案される発注量は店舗の実際の売り場と食い違いにくくなります。結果として店舗の作業は、毎朝推奨値を確認するという一動作に収束しました。人の役割を数量算出から確認へ移した動線の組み替えが、定着を支えたと見ています。
運用パラメーターの持ち方を、商品単品単位から商品分類単位の設定へ切り替えた判断も見逃せません。安全在庫のような設定値を一点ずつ管理すれば、店舗数と商品数の掛け算だけメンテナンスが膨らみます。そのうえで力を注いだのが、棚割情報や特売情報、気象情報といった連携データの整備でした。精度はモデルだけでなく入力側の手入れで決まる、という割り切りが、運用の負荷を抑えながら予測を育てる形につながっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
国内400の全店舗で稼働し、自動発注率は全体で従来比115%、変動の大きい日配品では従来比160%まで高まりました。店舗の発注作業時間は1週間で約600時間の削減となっています。売り減らし機能による在庫制御が働いたことで売り場づくりのサイクルが回りやすくなり、店舗在庫量の圧縮・適正化と商品回転率の向上にもつながりました。現場では予測精度の向上と運用負荷の軽減が評価されており、今後は物流在庫センターへ販売予測データを渡して配送遅延を防ぐことや、返品・廃棄・滞留在庫の削減にも取り組む方針が示されています。
うちでも使える?
参考になりやすいのは、日々の販売実績と「何をいくつ並べるか」という計画が、すでにシステム上のデータとして存在する業務です。需要の振れ幅が天候や催事、季節といった外部要因である程度説明できる商材であれば、小売以外でも予測から発注までをつなぐ発想は移植できます。設定値を分類単位でまとめる考え方も、管理対象が数千・数万点に及ぶ現場ほど効きます。
一方で、売り場や在庫の計画が担当者の頭の中や手元の表計算ソフトにしかない場合、AIに渡す前提情報が欠けるため同じようには進みません。需要が個別の商談や単発の引き合いで決まる業態、あるいは商品構成が拠点ごとにばらばらで分類のくくりを作れない場合も、自動化の効きは鈍くなります。
まず手をつけるなら、直近1か月の発注を「システムや基準値どおりで済んだ商品」と「担当者が必ず数字を書き換えた商品」に分けてみること。後者に何が共通しているかが、AIに渡すべきデータの正体を教えてくれます。
この事例は2023年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立システムズ
さまざまな業種の課題解決で培った業務知識やノウハウを持つ人財が、日立グループ各社やビジネスパートナーと連携し、Lumada事業を中心に展開することで顧客のデジタル変革を支援するIT企業。スーパー・ドラッグストア・ホームセンターなどの流通業・小売量販店に特化した販売予測モデルと在庫管理パラメーターを用いた需要予測型自動発注システムを提供している。代表取締役 取締役社長は柴原節男氏。
中部薬品株式会社
出典・参考情報
AIによる「需要予測型自動発注システム」を中部薬品全店舗に導入:ニュースリリース:2024年:株式会社日立システムズ
発行元:株式会社日立システムズ
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