実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.17
AI需要予測で食品卸の発注作業時間が約50%減、汎用倉庫での自動化の工夫
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 発注がベテラン頼みで不安
- 毎日の在庫確認に時間を取られる
- 商品数が多すぎて需要が読めない
どのようなAIの取り組み?
AIによる需要予測で発注を自動化し、熟練担当者の作業時間を約半分に短縮した卸売倉庫の取り組み
業種
食品・酒類卸売業(卸売・物流)
取り組み領域
汎用倉庫の発注・在庫管理
使ったAI
AI需要予測型の自動発注システム(日立Lumadaソリューション応用)
主な成果
発注業務時間を1日約3時間から約1時間半へ、約50%削減
食品・酒類の卸売を手がけるヤマエ久野は、日立製作所との協創により、汎用倉庫の発注業務にAIの需要予測を組み込んだ自動発注システムを立ち上げました。土台になっているのは、小売向けに提供されてきたLumadaソリューション「Hitachi Digital Solution for Retail/需要予測型自動発注サービス」で、これを多様な顧客の商品が混在する卸の倉庫向けに手を入れています。特定の取引先から急に注文が増えた場面を検知して学習のゆがみを抑える「スポット特売機能」、倉庫の規模や取り扱いアイテム数に応じて最低在庫や発注頻度を調整する「自動チューニング機能」、配送条件に合わせて仕入先ごとに発注数量を丸める「ロット丸め機能」を備え、条件の異なる複数拠点での運用につなげました。2024年4月に稼働を開始しています。
出典:ヤマエ久野と日立が協創、AI需要予測自動発注で作業時間を大幅短縮:日立 発行元:株式会社日立製作所
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
発注は、過去の実績に天候やイベントの情報を重ね合わせて需要を読む仕事です。1人が約3,000アイテムを見て、1日およそ3時間を費やしていました。営業エリアが広がり、小売店の物流センターが増えるにつれて倉庫の数も増えていく一方、この読みができる担当者はそう簡単には増えません。
困りごとの正体は、単純な人手不足ではなかったと編集部は見ています。天候や催事をどう解釈して数量に落とすのかという判断が熟練者一人ひとりの頭の中にあり、外から見えない以上、増えていく拠点に配ることができない。業務量が増えるほど不足は広がるのに、それを埋める手段が採用と育成しか残されていない、という構造的な行き詰まりだったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
予測を難しくしている要因を「データが足りないこと」ではなく「一部の突発的な需要が学習全体をゆがめること」と捉え直した点が、この設計の起点になっています。汎用倉庫には多様な顧客向けの商品が同居し、特定の取引先の特売などで注文が一時的に跳ね上がる場面が生まれます。スポット特売機能はその急な受注増を検知し、通常の需要傾向と切り分けて過学習を抑えます。例外を無理にモデルへ取り込まず、例外のまま扱う判断が、予測の土台を安定させたと考えられます。
横展開を最初から前提に置いた設計も効いています。倉庫はサイズも取り扱いアイテム数も異なるため、拠点ごとに人がパラメータを詰める方式では、適用先が増えるほど作業が積み上がってしまう。最低在庫や発注頻度を条件に合わせて調整する自動チューニング機能と、配送条件に沿って仕入先単位の数量を整えるロット丸め機能の組み合わせは、予測の精度を高める層と、物流上の制約を満たす層を分離したものと読めます。制約を予測モデルの外側で吸収する切り分けが、特性の異なる拠点への適用を現実的にしたのでしょう。
出発点に既存の小売向けサービスを据え、卸の事情に合う部分だけを機能として足していく進め方も見逃せません。ゼロから開発するのではなく業種差を差分として埋める方針を取ったことで、検討の焦点は「何を作るか」から「汎用倉庫の何が違うのか」へ移ります。日立製作所が需要予測と自動発注の技術基盤を担い、倉庫の実情と運用要件を持つ側がそれを突き合わせる。この役割分担があってはじめて成り立つ組み立てです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2024年4月の稼働から2カ月後の時点で、熟練担当者が1人・1日あたり約3時間かけていた発注業務は約1時間半となり、約50%の削減効果が確認されています。欠品や在庫回転率は導入前の水準を維持したままで、熟練担当者と同水準の発注計算ができる状態に達しました。時間を半分に縮めながら在庫の質を落としていない点に、この取り組みの意味が表れています。今後は需要予測の適用拠点を広げ、入荷や需要の予測データをサプライチェーン全体へ連携させることで、トラックの積載効率向上や物流2024年問題への対応、食品ロスの削減にもつなげる計画です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、日々の発注や在庫の判断材料が、過去の出荷実績という形でデータに残っている業務です。多品種を扱う製造業やEC向けの倉庫のように、品目が多くて人の目が行き届かない現場ほど、機械的な計算に任せられる範囲は広がります。
逆に、突発的な需要の山が常態化していて、それが「いつもの動き」なのか「例外」なのかを社内でも説明できない場合は、この事例のようには進みません。例外を切り分ける機能は、何が例外かを決められる会社でこそ働くからです。取引条件が個別交渉で頻繁に変わり、1回あたりの発注数量のルールが文書になっていない場合も、同じ理由で難易度が上がります。
最初の一歩は、直近の数カ月で予測から外れた注文がどれだけあったかを数え、その一つひとつに特売・天候・突発案件といった理由を付けられるか試してみること。理由を付けられる例外は、システムに教えられる例外です。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立製作所
データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進する企業。お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」の3セクター体制のもと、ITやOT、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じて課題を解決する。3セクターの2023年度(2024年3月期)売上収益は8兆5,643億円、2024年3月末時点で連結子会社は573社。
ヤマエ久野株式会社
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