先に手が付けられたのは、AIそのものの導入ではなく、過去の販売データや特売情報を予測に使える状態へ整えることでした。食品スーパーの売れ行きは、特売の打ち方ひとつで大きく振れます。その振れを説明できる材料が揃っていなければ、予測は平常時にしか当たらず、現場は結局自分の手で数字を作り直すことになります。実用性を先に確保するというこの順序が、提案を使ってもらえる土台をつくったと考えられます。
もう一つの柱は、発注の自動化を店舗の中で閉じさせず、倉庫の在庫データと配送管理の仕組みにつないだ設計です。発注を店舗単位でだけ最適化すると、必要な量は満たせても、そのしわ寄せは出荷や配送の側が受け止めることになります。上流の在庫状況と輸送の都合まで同じ土俵に載せたことで、適切な量を適切なタイミングで送るという判断が初めて成立します。省人化の話に見えて、実際にはサプライチェーンの設計そのものに踏み込んでいる点が、この取り組みの性格を決めています。
対象を加工食品や日用品といった常温商品から始め、生鮮食品を後段に置いた順序も効いています。生鮮は日持ちがせず、事前の需給計画を組んだうえで扱う必要があるため、予測の難度も運用の難度も一段上がります。振れの比較的小さい領域で全123店舗まで運用を広げ、仕組みと現場の慣れを先につくってから難しい領域へ進む段取り。これが、適用範囲を広げるときの失敗コストを抑える設計になっています。