実施 2024.10 ・ 更新 2026.08.17
AIの病害虫予測で実証段階の収量15%増、農協が挑む営農ノウハウの属人化
プロジェクト期間:2年 〜 3年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘頼みの判断から抜け出せない
- 若手への技術の引き継ぎが進まない
- 現場の情報が個人管理でバラバラ
どのようなAIの取り組み?
長期の気象データと現場からの発生報告をAIで掛け合わせ、病害虫の発生予測と地域の情報共有を一つのアプリにまとめた事例
業種
農業協同組合(農業)
取り組み領域
営農指導/病害虫の防除
使ったAI
病害虫の発生を予測するAI(防除DXアプリ「TENRYO」)
主な成果
実証実験で若手農家が収量15%増
豊橋農業協同組合(JA豊橋)は、株式会社ミライ菜園が提供する防除DXアプリ「TENRYO(テンリョウ)」を導入し、農家への栽培指導と農薬散布の呼びかけに、AIによる病害虫の発生予測を取り入れました。予測の土台になっているのは、過去20年分の気象データと、アプリを使う人たちから集まる発生履歴です。この二つを掛け合わせて危険度を割り出すとともに、アプリの地図上には利用者からの発生報告が随時反映されるため、外出先からでも地域の状況を確認できます。開発の段階では2022年から複数の農協と組み、約50軒の農家で実証実験を重ねながら、予測精度と使い勝手を調整してきました。
出典:AIで病害虫の発生を予測する防除DXアプリ「TENRYO」 JA豊橋にて導入が決定 | 株式会社ミライ菜園のプレスリリース 発行元:株式会社ミライ菜園
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
JA豊橋では、病害虫の細かな発生情報が指導員それぞれの手元で管理され、外に出ている間は一元化された情報にたどり着けない状態が続いていました。害虫の把握にはフェロモントラップ(誘引剤で虫を捕らえ、発生量を調べる仕掛け)を使っていたものの、設置から回収、集計までに相当な手間がかかります。そこへ気候変動で発生の読みが難しくなり、営農相談員の減少と若返りによる指導力の低下への懸念も重なっていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの中心は情報が足りなかったことではありません。現場には発生情報も長年の経験も存在したのに、それが個人の手元にとどまり、組織として使える形に集まっていなかった。経験則が通用しなくなったそのときに、経験を更新するための材料が組織の側に残っていなかった点にこそ、この課題の深さがあったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
予測の設計で効いているのは、過去20年分の気象データという長い蓄積と、利用者から日々上がってくる発生履歴という現在進行の情報を掛け合わせた点です。気象条件だけでは、その年その地域で実際に虫や病気が出ているかまでは分かりませんし、現場の報告だけでは、これから危険度が上がるのかどうかの見通しが立ちません。過去の傾向で先を読み、足元の報告で補正するこの二層構造が、経験則の揺らぐ状況でも判断の拠り所になったと考えられます。
予測を地図上のリアルタイムな共有という形で現場に返した設計も見逃せません。予報を文書で配る方式であれば、受け取った側は自分の畑に当てはめ直す作業を求められますが、地域の発生報告がそのまま地図に載っていれば、近隣で何が起きているかが直接の判断材料になります。報告を入れる人と予測を使う人が同じ画面を見る構造には、データを出す動機が仕組みの内側に組み込まれている強さがあります。危険度が高まっている病害虫に絞って手を打てるようにした割り切りも、限られた人手で防除を回す現実に沿ったものでした。
開発の進め方そのものも、この仕組みが現場に根づいた要因でしょう。2022年から複数の農協と連携し、約50軒の農家で実証を重ねて現場の声を反映させるやり方は、予測の精度と使い勝手を同時に磨く経路をつくります。アプリを提供するミライ菜園が予測の仕組みを担い、農協の側が現場での検証と運用を受け持つ役割分担があったからこそ、日常的に使われる道具として形になったと見ています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験の段階では、AIの予報を参考に防除を行った若手農家が15%の収量増、ベテラン農家でも4%の収量増という結果が出ています。経験の浅い層でより大きく伸びていることは、この仕組みが判断の底上げとして働いたことを示しているように読めます。JA豊橋ではフェロモントラップに関わる作業時間を大幅に削減しており、そこで浮いた時間を農家への訪問指導に充てられると期待を寄せています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断の材料が個人の頭の中に散らばっていて、なおかつ外部に長期間の公開データが存在する領域です。今回の予測は気象という誰でも手に入る蓄積を土台に、現場の報告を重ねる構造でした。設備の稼働記録や地域の人の動きなど、外部データと現場の観察を突き合わせられる業務であれば、同じ考え方を検討する余地があります。
反対に、そのまま持ち込みにくい場面もあります。この仕組みは多くの利用者が同じ地域の情報を出し合うことで価値が増す設計のため、報告の担い手が数人しかいない場合や、扱う事象が事業所ごとに固有で他と共有しようがない領域では、同じようには噛み合いません。土台になる長期データが社内にしか存在しないなら、その蓄積づくりから始める必要があります。
まず確かめたいのは、同じ種類の判断を複数の担当者が別々に下している業務がどこにあるか。その業務で一週間だけ、判断の根拠にした観察を一か所に集めてみると、人ごとのばらつきの大きさが見えてきます。そこに差が出るようなら、予測より先に共有の仕組みから手を付ける価値があるはずです。
この事例は2024年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ミライ菜園
「農家の経営リスクを最小化する」をミッションとする愛知の農業DXスタートアップ。病害虫被害を減らす防除DXサービスを提供し、AIによる病害虫予測サービスを備えた防除DXアプリ「TENRYO」を開発。代表取締役は畠山友史、資本金4,060万円。
豊橋農業協同組合(JA豊橋)
出典・参考情報
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