実施 2024.02 ・ 更新 2026.08.17
生成AIで病院の請求業務を数日から数分へ、順天堂大学とFIXERの共同研究
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 複雑な請求業務で現場が疲弊
- 制度改正のたびの改修費が重い
- 専門知識が要る事務に手が回らない
どのようなAIの取り組み?
電子カルテの情報をもとに生成AIが請求内容を判断し、診療報酬の作成時間を数日から数分へ短縮する見通しを得た共同研究の取り組み
業種
大学病院(医療)
取り組み領域
診療報酬の算定・請求業務
使ったAI
生成AIサービス「GaiXer」
主な成果
作成業務を数日から数分へ短縮できる見通し
株式会社FIXERと順天堂大学は、医師が電子カルテに残した診療内容と厚生労働省が定める点数表を突き合わせる診療報酬算定の作業を、生成AIに肩代わりさせる共同研究を進めています。使われているのは、FIXERが企業向けに提供する生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」です。検証はいきなり全体を置き換える形ではなく、まず電子カルテに紐づくオーダー情報から適切な請求内容を選べるかを確かめ、続く段階でカルテの記載内容そのものから請求内容を判断させる仕組みづくりへ進む順序をとっています。現場の医師と医療事務の関係者も加わり、専門的な知見を反映させながら生成精度を高める進め方です。研究は厚生労働省の補助を受けた実証の位置づけにあります。
出典:FIXERと順天堂大、生成AIを活用した医療DXへ共同研究―厚労省が補助、電子カルテ情報を基に生成AIで診療報酬を算定―病院の請求業務を省力化、会計システム改修費用を大幅削減へ | 株式会社FIXERのプレスリリース 発行元:株式会社FIXER
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
診療報酬の算定は、医師がカルテに書いた診療内容を、厚生労働省の細かな点数表と照らし合わせて決めていく作業です。専門知識を要するうえに手間もかかるため、医師と医療事務の双方から時間を奪う仕事になっていました。加えて2年に1度の診療報酬改定のたび、全国の医療機関で会計システムの改修が必要となり、その費用が病院運営を圧迫していました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は作業量の多さそのものではなく、ルールが定期的に書き換わることを前提に業務が組み立てられている点にあります。人が覚え直し、システムも作り直す。一度の改定が二重の負担として跳ね返る構造だからこそ、人手不足が進む現場では従来型の効率化が追いつかなくなっていったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
検証をいきなり最終形から始めず、二段階に分けた設計が、この取り組みの土台になっています。第一段階では電子カルテに紐づくオーダー、つまり検査や処置などの指示情報を手がかりに、生成AIが適切な請求内容を選べるかどうかだけを確かめています。オーダーは記載の形がある程度そろっているため、AIの判断の当たり外れを人が検証しやすく、外れた原因も切り分けやすい。そのうえで、書き方が人によって揺れるカルテ本文から直接判断させる次の段階へ進む順序は、易しいところで精度の見当を付けてから難所に入る堅実な進め方です。
精度の判断を現場の医師と医療事務に委ねた体制も、要因として見逃せません。診療報酬の算定は、点数表を機械的に引けば答えが出るというより、記載された診療内容をどう読み取るかで結論が動く領域です。その正誤を判定できるのは実務を担う人だけであり、開発側だけで評価の物差しを組み立てても、現場で通用するかは分からないままになります。専門的な知見をAIの改善サイクルへ直接流し込む形が、精度を押し上げる現実的な道筋になっていると考えられます。
生成AIに最終判断まで任せず、原案の作成までを担わせる切り分けも効いています。請求内容の誤りは患者と医療機関の双方に影響が及ぶため、自動化の範囲を欲張れば、かえって確認の手間が膨らみかねません。原案づくりをAIに寄せ、正しさの担保は人が引き受ける分担であれば、精度が完全でない段階からでも運用の検討を進められます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験では、病院全体で数日を要していた診療報酬の作成業務を、数分程度まで短縮できる見通しが得られています。生成AIによる原案作成そのものは数十秒で、担当者の確認を含めても短い時間で終わる形です。実用化されれば、制度改定に伴うシステム改修コストの大幅な削減にもつながると見込まれています。厚生労働省の補助を受けた本研究は、成果が認められれば全国の医療機関の会計処理を合理化する新たな基盤としての活用が期待されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断の根拠が文書としてまとまっていて、しかもその文書が定期的に改定される業務です。法令や規程に沿って金額を積み上げる見積もり・請求の仕事は建設業や士業にも共通しており、ルールが変わるたびに人の学び直しとシステム改修の両方が発生している職場ほど、効果を見積もりやすいはずです。
一方で、この事例が成り立っている前提は、電子カルテという形で判断材料がデジタルに蓄積されていること、そしてAIの答えの正誤を判定できる専門家が組織の中にいることです。根拠となる記録が紙や個人のメモに散らばっていたり、出てきた原案を評価できる人が一人もいない業務では、同じ進め方は難しくなります。まず試すなら、自社の請求や見積もりで参照している規程のうち、直近の改定で手直しが必要になった箇所をひとつ取り上げ、その判断をAIの原案と担当者の確認に分けられるか、机上で当てはめてみるところから。
この事例は2024年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社FIXER
クラウド黎明期の2009年に創業したクラウドネイティブカンパニー。Microsoft Azure の正式サービス開始と同時にエンタープライズシステムのクラウド化を手掛け、エンタープライズ向け生成AIサービス「GaiXer」を提供する。業種は情報通信、東証グロース上場。
順天堂大学
出典・参考情報
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