AIには要因の候補を挙げさせ、その意味付けは人が担うという役割の切り分けが、この取り組みの背骨になっています。dotDataは重要な特徴量を自動で発見・抽出しますが、抽出された要因がなぜ効くのかを説明し、次に何を試すかを決めるのはプロジェクトメンバーです。判断までAIに委ねてしまうと、出てきた答えを現場が扱いきれずに終わりがちですが、解釈の権限を人の側に残した設計は、AIの出力を現場の打ち手へ翻訳する経路をあらかじめ確保しています。
試作評価データの投入から、抽出、解釈、次の試作への反映までをひと続きの循環として組んだことも効いています。一度の分析で正解を当てにいくのではなく、試作を重ねるたびにデータが積み上がり、次の分析の材料になる形にしたため、回すほど手掛かりが増えていきます。属人化した設計を変えるには経験に代わる蓄積が要りますが、このやり方はその蓄積を通常業務の流れの中で作り出します。
分析の対象に選んだ変数の性質も見逃せません。ゴムの混合工程で扱ったロータ回転速度や消費電力、混合時間、外気温は、いずれも製造中に測れて、かつ現場で動かせる条件です。スタッドレスタイヤの設計では、タイヤを試作する前に決められる設計因子に絞って制動距離との関係を定式化しており、結果が出てからでは手の打ちようがない変数ではなく、事前に握れる変数へ分析を寄せています。この絞り込みが、分析の結果をそのまま次の設計判断に差し込める形にしたと考えられます。