実施 2022.02 ・ 更新 2026.08.17
100万件超の電子カルテをAIで解析、患者の治療実態を可視化する共同開発
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 文章のままの記録が集計できない
- 大量のデータがあるのに使えない
- 顧客ごとの経緯を追えていない
どのようなAIの取り組み?
100万件を超える電子カルテデータをAIで解析し、疾患ごとの治療実態を目に見える形にすることを目指した共同開発の事例
業種
医療情報サービス(IT・通信)
取り組み領域
医療データ解析/研究開発支援
使ったAI
機械学習・深層学習・自然言語処理
主な成果
開発段階にあり、2022年内をめどに商用提供を予定
NTTデータが運用する医療情報プラットフォーム「千年カルテ」には、100万件を超える電子カルテデータが蓄積されています。この基盤を土台に、AI開発を手がけるエクサウィザーズが機械学習・深層学習・自然言語処理といった技術を用いたモデルとソフトウェアを開発する共同プロジェクトが動いています。中心にあるのは、検査値を含むカルテ情報から対象となる患者層を絞り込み、どの疾患の患者がいつどのような治療を受けてきたかという道筋(ペイシェントジャーニー)を可視化する機能です。あわせて、文章で書かれた診療記録や画像のように、データベース上で扱いにくい情報をどう活かすかの技術検討も並行して進んでいます。プロジェクトは開発段階にあり、2022年内をめどに順次商用サービスとして提供される予定です。
出典:エクサウィザーズと臨床における疾患・治療実態を把握するサービスの共同開発を開始 | NTTデータ - NTT DATA | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP 発行元:株式会社NTTデータ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
医療現場では、患者の健康状態や医療行為が日々の診療のなかで記録されていきます。この医療リアルワールドデータは症例数も項目数も膨大である一方、治療実態や治療効果にあたる情報は構造化・標準化が途上にありました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとは「データが足りない」ことではなく、「たまっているのに読み取れる形になっていない」ことにあります。カルテに書かれた文章は、担当した医療者が診療のために書いたものであり、あとから横断的に数える目的で書かれてはいません。書き手にとっては完成した記録でも、集計する側から見れば材料の状態にとどまる。この落差が、量が増えるほど手のつけられなさとして積み上がっていったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
この取り組みでまず効いているのは、データを保有・運用する側とAIを構築する側を切り分け、そのうえで噛み合わせた座組みの設計です。千年カルテという既存のプラットフォームがデータの集約と運用を受け持ち、AI側は医療介護領域で積み上げてきた知見をモデルとソフトウェアの設計に集中して振り向けています。データを集めて安全に保つ仕事と、そこから意味を取り出す仕事とでは、必要になる体制も技術もまったく別物です。どちらかが両方を抱え込む形を取らなかったことが、この規模のデータを扱う前提を成立させたのではないでしょうか。
次に注目したいのは、AIに何を出力させるかを「ペイシェントジャーニーの可視化」という具体的な形に定めた点です。医療データの解析は、目的を広く取れば取るほど、何をもって成功と言えるのかが曖昧になります。疾病ごとに、患者がいつどんな治療を受けているかを一本の流れとして描き出す、と出口を決めておけば、必要なデータ項目も評価の基準も逆算できます。使い道を先に固定してから技術を選ぶ順序が、この設計の芯にあると読めます。
三つめは、難易度の異なるデータを一度に攻めなかった進め方です。検査値のように既に数値としてそろっている項目を患者層のフィルタリングに使い、機能の骨格を先に立ち上げる。一方で、文章の診療記録や画像といった扱いの難しい情報は、活用手法の検討として並走させています。すべてを構造化してから着手するのではなく、扱える部分から形にしていく順番の付け方が、開発を前に進める力になっていると考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本プロジェクトは開発段階にあり、2022年内をめどに順次商用サービスとして提供される予定です。したがって現時点で語られているのは実績値ではなく、提供の先に見込まれる効果になります。サービスを通じて製薬企業や医療機関が臨床における疾患・治療実態を正確に把握できるようになり、革新的な医薬品の研究開発テーマの検討促進、患者一人ひとりに合わせた個別化医療の提供、疾患の早期発見・診断支援への貢献が期待されています。
うちでも使える?
応用の見込みが立ちやすいのは、記録が長年たまっているのに、文章や画像のままで検索も集計もできずにいる領域です。製造業の保守記録や建設業の現場日報のように、現場での重要度に比べて活用のされ方が追いついていない資産は、多くの業種に眠っています。
ただし、同じ形をそのまま持ち込めるかは、扱うデータの性質しだいです。医療データは機微な個人情報を含むため、次世代医療基盤法などの法規制に準拠した厳格な匿名加工とセキュリティ対策が前提になります。自社データが顧客情報や取引先の機密を含む場合も、何を守るべきかを先に確定させなければ解析の設計には入れません。もう一点、この事例には検査値という構造化済みの項目があり、それを足がかりに患者層を絞り込めました。文章しか残っていない領域では、その足がかりに当たる項目を用意するところが出発点になります。
まずは手元の記録を一件開いて、そこから日付と数値だけを抜き出せるかどうかを試してみる。そこで詰まった箇所が、AIを持ち込む前に整えるべき地点です。
この事例は2022年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:経営・企画
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社NTTデータ
次世代医療基盤法における認定医療情報等取扱受託事業者として医療情報プラットフォーム「千年カルテ」を運用し、蓄積された電子カルテデータを匿名加工して医療機関や製薬企業に提供している。
出典・参考情報
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