実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.17
塩野義製薬とFRONTEO、AIとの会話で認知機能を測るセルフチェックの共同開発
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 高齢の利用者の健康を支える手立てがない
- 検査は敷居が高く続けてもらえない
- 自社サービスにAIで新しい価値を足したい
どのようなAIの取り組み?
AIとの会話から記憶力や言語理解力をスコア化し、スマートフォンだけで「あたまの健康度」を確かめられるWebアプリを共同開発した取り組み
業種
医薬品製造(製造業)
取り組み領域
ヘルスケアサービス開発/セルフチェック
使ったAI
特化型AI「KIBIT」(自然言語処理)
主な成果
保険の付帯サービスとして2025年10月に提供開始予定
塩野義製薬とFRONTEOが共同開発した「トークラボKIBIT」は、AIとの会話を通じて「あたまの健康度」を判定するWebアプリケーションです。塩野義製薬がサービス開発と事業構築を、FRONTEOがAI解析技術の提供と運用を担う分担で進められました。判定には、FRONTEOが自社開発した特化型AI「KIBIT」の自然言語処理技術が使われ、会話に出てくる単語や文章の関係性、文脈のつながり、語彙の多様性を解析して、記憶力・言語理解力・情報処理能力を総合的なスコアに置き換えます。専用アプリのダウンロードは不要で、スマートフォンからその場で使え、結果はリアルタイムで返ります。判定結果に応じて、行動変容を促すメッセージや生活習慣の改善につながる情報を届ける機能も備えています。
出典:塩野義製薬とFRONTEO AI解析による会話型の「あたまの健康度」判定Webアプリケーション「トークラボKIBIT」を提供開始| 塩野義製薬 発行元:塩野義製薬
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
日本では65歳以上が総人口に占める割合が増え続け、加齢に伴う認知機能の低下にどう備えるかが急がれる課題となっていました。一方で、健康的な生活習慣や身体活動が認知機能低下のリスクを下げるというエビデンス(科学的な裏づけ)も蓄積されつつあり、生活者が自分の状態を日常的に把握する手立てが求められていました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは知識や意欲の不足ではなく、自分の状態に気づく機会が日常のどこにも置かれていなかったことにあります。状態を確かめる行為が医療機関や特別な検査の場に限られていると、生活習慣を見直すきっかけは、変化がはっきり自覚できるところまで進んでからようやく訪れることになります。改善が効くという知見があっても、それを自分ごとに変える入口がなければ行動は動きません。
どうやって、うまくいったのか
測定の入口に日常会話を選んだ設計が、この取り組みの核心にあります。KIBITの自然言語処理が手がかりにするのは、会話に現れる単語や文章の関係性、文脈のつながり、語彙の多様性といった要素であり、いずれも利用者が意識して操作するものではなく、話しているうちに自然と表へ出てくるものです。検査を受けるという構えを取らせないまま、記憶力・言語理解力・情報処理能力という三つの側面を一つのスコアへまとめ上げている点に、指標設計の工夫がうかがえます。
利用の摩擦を削り切った導線も、習慣化を狙ううえで効いているとみられます。専用アプリのダウンロードを求めず、スマートフォンのWebで完結させ、その場で結果を返す構成は、思い立った瞬間と実行の間にある手続きをほぼ消し去るものです。セルフチェックは一度試して終わりでは意味をなさず、繰り返されて初めて変化に気づける性質を持っています。だとすれば、解析の高度さよりも、次に使うときの面倒くささをどこまで減らせるかが設計上の勝負どころになります。
判定を出して終わらせず、結果に応じた行動変容のメッセージや生活習慣の改善情報まで返す作りも見逃せません。スコアだけを示されても利用者は次の一手が分からず、数字がかえって不安に変わることさえあります。加えて、塩野義製薬がサービス開発と事業構築を、FRONTEOが解析技術の提供と運用をそれぞれ担う分担は、エンジンの精度と、生活者の手元に届くサービスとしての形の両方に責任の持ち主を置く構えといえるでしょう。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
「トークラボKIBIT」は、2025年10月から日本生命の「ニッセイみらいのカタチ 認知症保障保険(認知症サポートプラス)」の付帯サービスとして提供が始まる予定で、ニッセイ情報テクノロジーの「暮らしの脳トレ」と連動する形で社会実装が進められています。専門家からは信頼性とユーザビリティを両立させ、自発的なセルフチェックの習慣化を促す製品として評価されています。ファーストユーザーとなる日本生命も、手軽なチェックが日々の習慣になることで、顧客の生活習慣の改善や健康寿命の延伸を支えられると期待を寄せています。
うちでも使える?
応用の見込みが立ちやすいのは、顧客とのやり取りそのものに手がかりが含まれている領域です。会話や書き込みなど、本人が特別な操作をしなくても自然に生まれるデータがあり、そこから読み取った結果を返す先に自社の情報やサービスを用意できるなら、同じ組み立てを持ち込む余地があります。
一方で、そのまま真似しにくい条件もあります。この取り組みは医療の診断を目的としないセルフチェックであり、利用者に誤解を与えない伝え方と、会話という極めて個人的なデータの扱いをどう設計するかが前提条件になります。また、提供の形が保険の付帯サービスという既存の顧客接点への相乗りである点も重要で、単独のアプリとして毎日使ってもらうことを狙うと、習慣化の難易度は一段跳ね上がります。まず問うべきは、判定結果を受け取った人が翌日から何をできるのか、という一点ではないでしょうか。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:経営・企画
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
塩野義製薬株式会社
取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「健やかで豊かな人生への貢献」を特定する製薬会社。アンメットメディカルニーズの高い精神・神経系疾患に対する早期診断・治療につなげるソリューションを提供し、患者やその家族のQOL・生産性向上に貢献することを目指し、外部パートナーとの連携を含めた取り組みを強化している。株式会社FRONTEOと共同で、AI解析による会話型の「あたまの健康度」判定Webアプリケーション「トークラボKIBIT」を開発し、サービス開発・事業構築を担当している。
出典・参考情報
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