測定の入口に日常会話を選んだ設計が、この取り組みの核心にあります。KIBITの自然言語処理が手がかりにするのは、会話に現れる単語や文章の関係性、文脈のつながり、語彙の多様性といった要素であり、いずれも利用者が意識して操作するものではなく、話しているうちに自然と表へ出てくるものです。検査を受けるという構えを取らせないまま、記憶力・言語理解力・情報処理能力という三つの側面を一つのスコアへまとめ上げている点に、指標設計の工夫がうかがえます。
利用の摩擦を削り切った導線も、習慣化を狙ううえで効いているとみられます。専用アプリのダウンロードを求めず、スマートフォンのWebで完結させ、その場で結果を返す構成は、思い立った瞬間と実行の間にある手続きをほぼ消し去るものです。セルフチェックは一度試して終わりでは意味をなさず、繰り返されて初めて変化に気づける性質を持っています。だとすれば、解析の高度さよりも、次に使うときの面倒くささをどこまで減らせるかが設計上の勝負どころになります。
判定を出して終わらせず、結果に応じた行動変容のメッセージや生活習慣の改善情報まで返す作りも見逃せません。スコアだけを示されても利用者は次の一手が分からず、数字がかえって不安に変わることさえあります。加えて、塩野義製薬がサービス開発と事業構築を、FRONTEOが解析技術の提供と運用をそれぞれ担う分担は、エンジンの精度と、生活者の手元に届くサービスとしての形の両方に責任の持ち主を置く構えといえるでしょう。