実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.17
教科書に完全準拠した対話型AIで英語を話す機会を増やす、全国10校の実証研究
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 学んだ内容を実際に使う機会がない
- 学ぶ側のやる気が続かない
- 一人ひとりの進み方に合わせられない
どのようなAIの取り組み?
教科書に完全準拠した対話型AIを全国10校のモデル校に提供し、英語で話す機会を増やす授業モデルづくりを検証している実証研究の取り組み
業種
教科書出版(教育・学習支援業)
取り組み領域
中学校英語の授業/家庭学習
使ったAI
対話型学習サービス「教科書AIワカル」(生成AI)
主な成果
全国10校で実証研究を実施中(2026年1月末まで)
東京書籍が、生成AIを使った対話型学習サービス「教科書AIワカル」を全国10校のモデル校に提供し、授業と家庭学習それぞれでの使い方を検証する実証研究を進めています。文部科学省の事業の一環で、中学校英語の「話すこと」「書くこと」の活動を質と量の両面から充実させる教育モデルをつくることが狙いです。サービスは中学校英語教科書『NEW HORIZON』に完全準拠しており、チャット形式の画面でAIと自然にやりとりできるほか、音声の読み上げや、実生活の場面を想定した会話演習の機能を備えます。研究には立命館大学とインパクトラボも加わり、学校現場に根ざした形で進める体制がとられています。期間は2025年5月から2026年1月末までの予定で、現時点では検証の途中段階にあります。
出典:東京書籍、文部科学省「令和6年度 小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業(AIの活用による英語教育強化事業)」を受託 | 東京書籍株式会社のプレスリリース 発行元:東京書籍株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
英語の授業では、教わった表現を生徒が実際に口に出す場面が限られ、学ぶ動機そのものが弱くなりやすい状態が長く続いていました。この実証研究の出発点も、そこに置かれています。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「授業時間が足りない」という量の問題ではなく、間違えても構わない相手が教室にいないという点にあったのではないでしょうか。人を相手にした会話では、うまく言えないことへの気後れが先に立ち、発話の回数そのものが伸びにくくなります。一人ひとりのペースに合わせた環境を用意したいという要望も、裏を返せば、全員が同じ速さで話すことを求められる場では、置いていかれた生徒から先に口を閉じてしまう。その構造への危機感の表れと読めます。
どうやって、うまくいったのか
新しい教材を別に作るのではなく、生徒が毎日開いている教科書のほうにAIを合わせ込んだ設計が、この取り組みの核にあります。『NEW HORIZON』に完全準拠していれば、教員は授業計画を組み直さずに済み、生徒も既に習った語彙や表現の範囲でAIと話せます。生成AIを学校に持ち込むときに最も高い壁になるのは、技術そのものよりも「今の授業のどこで使うのか」が決まらないことですが、共通の学習基盤である教科書を接点に据えたことで、その置き場所があらかじめ定まります。汎用のチャットAIをそのまま配布する場合とは、現場が負う判断の重さがまったく違ってきます。
対話の相手をAIに置き換えたこと自体も、省力化ではなく練習の質を変えるための選択と読めます。チャット形式であれば、答えるまでに時間をかけても誰も待たせず、同じ場面を何度やり直しても構いません。音声の読み上げと、実生活を想定した会話演習を組み合わせた構成からは、教科書の文を読める状態から、その場で言葉を選んで返せる状態へ橋を架けようという意図が見えてきます。
サービスの提供で終わらせず、立命館大学とインパクトラボを交えた体制で全国10校を同時に走らせている点も、設計として意図的でしょう。学校ごとに生徒の様子も時間割も異なるため、1校での手応えはそのままでは他校の手順になりません。複数校の実践を横に並べて比べることで、どこまでが共通して使える型で、どこからが各校の事情に依存するのかを切り分けられます。最終的な成果物として導入支援のあり方や授業モデルを掲げていることからも、狙いは製品の普及そのものよりも、再現できる手順の抽出にあると考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本プロジェクトは2025年5月から2026年1月末にかけて実施される予定で、現時点ではまだ実証段階にあり、効果を示す数値は示されていません。今後は全国10校の実践事例とデータをもとに、導入支援のあり方と授業モデルを確立することが目指されています。教科書という共通の学習基盤に乗せた生成AI活用モデルを組み立て、全国規模での英語教育の質的向上につなげるという展望が掲げられており、個別の成功例より先に「他校が再現できる形」を成果物として置いている点は、この段階の取り組みとして筋が通っています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、社員研修や業務マニュアルのように、関係者全員が同じ教材を共有している場面です。学ぶ内容の範囲があらかじめ決まっていれば、AIの受け答えもその範囲に収めやすく、練習相手として置いたときに話が脱線しにくくなります。反対に、答えが教材の外にある領域、たとえば相手ごとに事情が変わる商談の練習や、正解が一つに定まらない判断業務では、AIとの対話が的外れな成功体験を与えかねません。
また、この取り組みが教科書準拠という前提に支えられている以上、参照する教材そのものが更新されないまま放置されている組織では、同じようには機能しにくいはずです。AIの回答内容をどこまで許容するかというルールを、教材の管理者と使う側の双方で先に決めておく必要もあります。まず試すなら、手元の研修資料から場面を一つ選び、その範囲だけを前提にAIと三往復ほど会話してみること。答えがどこで教材の外へ滑り出すかは、その数往復で見えてきます。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
東京書籍株式会社
1909(明治42)年創業。「教育と文化を通じて人づくり」を企業理念に掲げ、教科書を中心に日本の教育と文化の発展に貢献。小・中・高等学校向けの教科書をはじめ、ICT教材、評価テスト、日本語検定事業など多様な教育サービスを展開し、教育DXの推進にも取り組む。資本金8000万円、未上場。
文部科学省
出典・参考情報
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