実施 2021.01 ・ 更新 2026.08.17
凸版印刷のカメラを使わないAI見守り、入居者ごとの生活リズムを学習する仕組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 夜間の見守りに人手が足りない
- 通知が多すぎて対応が追いつかない
- カメラでの監視には抵抗がある
どのようなAIの取り組み?
カメラを使わない簡易センサーとAIの個別学習を組み合わせ、入居者一人ひとりにとっての異常を見分ける見守りに取り組んだ事例
業種
介護施設・介護サービス(医療・福祉)
取り組み領域
入居者の見守り業務
使ったAI
簡易センサー+行動パターンを学習するAI(カメラ不使用)
主な成果
不必要・不十分なアラート発報が減り、スタッフの業務負荷軽減に寄与
凸版印刷とインフィックが共同開発したのは、介護業務支援システム「LASHIC+(ラシクプラス)」です。居室に温度・湿度・照度・人の動き・ドアの開閉を捉える簡易センサーを設置し、そこから入居者の行動データを集めます。カメラは使いません。集まったデータはAIが入居者ごとに学習し、その人の普段の生活パターンをモデル化したうえで、いつもと違う行動を捉えたときにだけスタッフへアラートを送る設計になっています。センサーは追加の施工なしで後付けでき、導入時のハードルも抑えられています。両社はもともとICTを使って介護事業者・入居者・家族のやり取りを支える事業を進めており、介護施設での実証実験で集めたデータが今回の開発につながりました。現在はインフィックのグループ法人である株式会社まごころ介護サービスの施設「まごころの家*馬渕」に先行導入されています。
出典:凸版印刷とインフィック、センシング×AIで介護業務を支援 | 凸版印刷 発行元:凸版印刷
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
介護の需要が広がる一方で担い手は足りず、入居者の安全を守る見守りが現場の重い負担になっていた——これが出発点です。
ただ、この負担の本質は「見る相手が多い」という数の問題だけではないように見えます。見守りがきついのは、いつ何が起きるか分からないために気を抜ける時間がない、その常時待機の状態そのものにあるのではないでしょうか。だとすると、監視の目を機械で増やしただけでは負担は減りません。むしろ、確認すべき場面をどう絞り込むかが要になります。しかも介護施設の居室は入居者の生活の場であり、映像で見張る方式には別の抵抗が立ちはだかります。負担軽減とプライバシーという、放っておけば衝突する二つの条件を同時に満たす必要があった点が、この課題の難しさだったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
カメラを外し、温度・湿度・照度・人感・ドア開閉という粗い情報の組み合わせだけで行動を捉える構成にしたことが、まず効いています。映像ほど細かくは分からなくても、「その部屋で人が動いているか」「扉が開いたか」といった信号がそろえば、いつもと違う状態かどうかの判断には足ります。必要な精度を見極めて情報の解像度をあえて落とした判断が、生活の場を撮られたくないという抵抗と、設置工事という物理的な障壁を同時に下げました。追加施工なしで後付けできる形にまとめた点も、既存施設で試しやすい条件を整えています。
もう一つの柱は、アラートの基準を全員一律ではなく個人ごとに置いた設計です。AIが入居者一人ひとりの生活パターンを学習し、その人にとっての異常だけを通知する。よく眠る人と夜中に何度も起きる人では「普通」がまるで違うのに、しきい値を共通にすれば、片方には鳴りすぎ、もう片方には鳴らなすぎるという事態が起きます。通知が信用されなくなれば見守りの仕組みは形だけになりますから、鳴らす回数ではなく鳴らす相手ごとの妥当性で設計した点は、実運用の急所を押さえた選択だったといえます。
実証実験でデータを集めてからシステムを組み立てた順序も見逃せません。現場で何が測れて何が測れないかを先に確かめたうえで機能を決める進め方は、机上で仕様を固めてから現場に持ち込むやり方より、外れの少ない設計に着地しやすくなります。加えて、日々の通知のためにためた行動データが、そのまま後から見返せる記録として残る構造になっている点も、この仕組みの拡張性を支えています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
先行導入されたまごころの家*馬渕では、AIが個々人の行動パターンを学習することで、不必要な、あるいは不十分なアラートの発報が減り、介護スタッフの業務負荷の軽減につながっています。加えて、入居者の状態がデータとして見える形になったことで、生活スタイルの中長期的な変化をつかみやすくなりました。日々の異常検知にとどまらず、時間をかけて変わっていく状態の把握にも使える点は、蓄積型の仕組みならではの副次的な価値だと考えられます。今後は施設介護だけでなく、在宅介護の領域への展開も見据えられています。
うちでも使える?
この手法が生きるのは、同じ人が同じ場所で似た一日を繰り返す環境です。平常の姿がある程度安定していれば、AIが学習する基準そのものが定まり、そこからのずれを異常として扱えます。病院の病室や単身高齢者の住まいのように、生活の型が読み取れる場は相性がよいでしょう。
逆に、利用者の入れ替わりが激しい場や、その日ごとに居場所と行動が変わる業務では、学習する「普段」が固まらず、通知の精度が上がりにくくなります。生活リズムの変化として表に出ないタイプの急変を捉えるのも、この方式の得意分野ではありません。データを集める初期期間をどう扱うか、その間の見守りをどう回すかという運用ルールも、導入前に決めておく必要があります。
手始めとして試せるのは、いま現場で鳴っている呼び出しや通知を一週間分だけ記録し、そのうち実際に駆けつける必要があったものがどれだけあったかを数えてみることです。空振りの割合が見えれば、個人ごとに基準を変える価値がどれほどあるかの見当がつきます。
この事例は2021年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:機械・設備・位置
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
凸版印刷株式会社
本社を東京都千代田区に置く企業(代表取締役社長:麿 秀晴)。ICTを活用し介護事業者・入居者(被介護者)・その家族の3者のコミュニケーションを円滑化する「トライアングルハート支援事業」を2017年度より推進し、介護施設での実証実験等によるデータ取得を行ってきた。介護総合支援事業を展開するインフィック株式会社(本社:静岡県静岡市)と共同で、センシングとAIを活用した介護業務支援システム「LASHIC+」を開発した。
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