実施 2023.10 ・ 更新 2026.08.17
電子カルテ要約AIで医療文書の作成時間を平均47%短縮、NECと病院の実証実験
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 記録や報告書の作成に追われている
- 人手不足で残業が減らない
- AIの誤った回答が不安で使えない
どのようなAIの取り組み?
医療業務向けに調整したLLMで電子カルテから治療経過の要約を自動生成し、紹介状や退院サマリの作成負担をどこまで減らせるか検証したAI取り組み
業種
病院(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
医療文書の作成/電子カルテ業務
使ったAI
医療業務向けに調整したLLM(大規模言語モデル)、医療テキスト分析AI
主な成果
実証で要約文章の作成時間を平均47%削減
日本電気株式会社(NEC)が、東北大学病院および橋本市民病院と共同で、医療業務向けにチューニングしたLLM(大規模言語モデル)を使った実証実験を進めています。東北大学病院では、電子カルテに記録された症状・検査結果・処方などをNEC開発の医療テキスト分析AIで時系列に整理したうえで、治療経過の要約文をLLMに生成させる仕組みを構築。生成された文には、引用元となるカルテの記載内容が関連付けて表示されます。橋本市民病院では、電子カルテシステム「MegaOak/iS」とクラウドセキュア接続サービス「MegaOak Cloud Gateway」を組み合わせ、匿名化したカルテ情報をクラウド上のLLMへ安全に渡し、個人情報を学習させない形で要約を生成する方式を検証しています。東北大学病院での実証では、医師10名の協力のもと、要約の作成時間が平均47%減という結果が出ています。
出典:NEC、東北大学病院、橋本市民病院、「医師の働き方改革」に向けて、医療現場におけるLLM活用の有効性を実証 (2023年12月13日): プレスリリース | NEC 発行元:日本電気株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
医療現場の人手不足は以前から続いていましたが、2024年4月に「医師の働き方改革」の新制度が施行され、勤務医の時間外労働に上限が設けられたことで、業務の見直しは避けて通れないものになりました。時間外労働を生んでいた要因の一つが、記録・報告書の作成や書類整理だった点はソースにも明記されています。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「文章を書くのに時間がかかること」ではなく、その手前にあります。紹介状や退院サマリを書くには、長い期間にわたって蓄積された電子カルテの記載から、いつ何が起き、どう処置し、どう変化したのかを拾い集めて頭の中で並べ直す必要があり、文章化はその後の工程にすぎません。負担の重心は執筆ではなく情報の収集と再構成の側にあったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
生成した要約に、引用元となる電子カルテの記載を関連付けて表示する設計が、この検証の中核にあります。医療の文書は一文の誤りが患者の不利益につながりうるため、出力の正しさをその場で確かめられない仕組みは、そもそも現場で使われません。根拠をたどれる形にしたことで、医師の作業は白紙から書き起こすことから、示された根拠を照合して整えることへ置き換わり、生成AIにつきまとう不正確な出力(ハルシネーション)を現場側で捕まえられる構造になっています。
要約を作らせる前に、症状・検査結果・処方といった情報を医療テキスト分析AIで時系列に整理する工程を挟んだ点も見逃せません。電子カルテの記載は書いた人も書式もばらばらで、そのまま投げても文脈の通った治療経過にはなりにくい。読める形に組み替えてから要約させるという二段構えが、出力の質を支えていると考えられます。
もう一つの柱は、機微な情報が通る経路そのものを設計したことです。橋本市民病院での検証では、電子カルテシステム「MegaOak/iS」とクラウドセキュア接続サービス「MegaOak Cloud Gateway」を組み合わせ、匿名化した情報だけをクラウド上のLLMへ渡し、個人情報を学習させない形にしています。技術を開発するNECと、実際の診療現場を持つ東北大学病院・橋本市民病院が組む体制が、この経路設計を机上の想定で終わらせない条件になっているとも読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
東北大学病院の一部診療科で医師10名が協力した実証では、紹介状や退院サマリなどに記載する要約文章を新たに作成する場合と比べ、作成時間が平均47%削減されました。生成された文章の表現や正確性についても高い評価を得ています。膨大なカルテ記録から必要な情報を集める作業が大きく軽減され、生成された要約を参考にしながら各文書を効率的に仕上げられる可能性が確認された段階です。
うちでも使える?
この手法が効きやすいのは、書くべき文書の材料がすでに社内の記録として残っており、出力はあくまで下書きで、人が根拠と突き合わせて仕上げる業務です。過去の対応履歴から報告書を起こす、面談記録から所見をまとめるといった仕事は、引用元をたどれる形にできれば近い構図になります。
逆に難しいのは、判断の根拠が記録に残っていない場合です。廊下での相談や電話でのやりとりで決まった内容が文書にだけ現れる業務では、AIに渡す材料そのものが欠けます。記録が紙や自由記述で散らばり、時系列に並べ直せない場合も、要約の前段で行われた整理の工程が成立しません。外部サービスに渡せる情報の範囲を定めた規程がない組織も、まずそこからの整備が必要です。
はじめの一歩としては、直近に作成した報告書を一通選び、各段落の内容がどの記録のどこから来ているかを線で結んでみること。結べない箇所が多いほど、AIに任せられる範囲は狭いという見立てが立ちます。
この事例は2023年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本電気株式会社(NEC)
取締役 代表執行役社長 兼 CEO は森田隆之。ヘルスケア・ライフサイエンス事業部門を有し、電子カルテシステム「MegaOak/iS」やクラウドセキュア接続サービス「MegaOak Cloud Gateway」などの医療ソリューション、日本語大規模言語モデル(LLM)や医療テキスト分析AIを開発・提供する。
東北大学病院、橋本市民病院
出典・参考情報
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