実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.17
看護記録の音声入力AIで記録時間が約40%短縮、大阪国際がんセンターの検証
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 手書きの記録に時間を取られている
- 会議のあとの清書作業がつらい
- 情報が紙とシステムに散らばる
どのようなAIの取り組み?
音声認識と生成AIで会話の書き起こしからカルテ記録の下書き作成までをつなぎ、検証で記録時間の約40%短縮を確認したAI取り組み
業種
がん専門病院・研究機関(医療)
取り組み領域
看護記録/問診・患者情報の入力
使ったAI
音声認識と生成AI(日本語要約特化の大規模言語モデル)
主な成果
比較検証で看護記録の時間が約40%短縮
がん医療の現場で膨らむ記録業務を軽くするため、医薬基盤・健康・栄養研究所、大阪国際がんセンター、日本アイ・ビー・エムの3者が共同研究として2種類の生成AIを開発しました。ひとつは、患者が自分のスマートフォンなどからAIアバターとチャットや音声で体調を記録できる問診生成AI。もうひとつは看護カンファレンスと電話サポートを対象にした看護音声入力生成AIで、IBM Watson Speech to Textが会話を文字に起こし、日本語の要約に特化した大規模言語モデルがカルテ記録の下書きをつくり、電子カルテへ取り込むところまでを自動で処理します。誤変換をシステム側で直す自動学習と、看護師による最終確認を組み合わせた運用も併せて整えられました。手入力との比較検証では、記録に要する時間が約40%短縮されています。
出典:「AI創薬プラットフォーム事業」の共同研究において、患者に寄り添う医療のための問診生成AIおよび看護音声入力生成AIの実運用を開始|大阪国際がんセンター 発行元:大阪国際がんセンター
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
看護師が記録に費やす時間は1日平均94分、勤務時間のおよそ2割に達していました。とりわけ負担が重かったのが、看護カンファレンスや電話サポートのように、会話をしながら書き留め、終わったあとにもう一度整え直すという二重の作業が発生する場面です。患者の側も、自宅では手書きで体調を記録しているのに、来院すれば同じことをあらためて尋ねられる状態に置かれていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は記録の量ではなく、書く作業が会話と同時に走ってしまう構造にあったのではないでしょうか。目の前の相手に向き合いたいのに、手はペンを動かし、頭は要点の整理に割かれる。議論や会話の質そのものが削られていた点にこそ、この課題の重さがあったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
誤変換や要約の取り違えが起きることを前提に置いた運用設計が、この仕組みを医療現場に載せられた第一の理由だと考えられます。間違いをシステム側で修正していく自動学習の仕組みと、AIがまとめた内容を看護師が最後に確認する体制が組み合わされ、記録の正確さと表現の一貫性を担保する二段構えになっています。人が最後に責任を持つ位置に立つことで、AIの出力を「そのまま採用するか否か」という緊張から解放し、下書きとして受け取れるようにした点が効いたのでしょう。院内ポリシーに沿ったセキュアな接続を先に用意し、データ連携の可否を後回しにしなかったことも、実運用へ進めた条件のひとつです。
対象を看護カンファレンスと電話サポートという、会話の型がある程度決まっている二つの場面に絞った判断も見逃せません。話される内容の範囲が予測できる業務であれば、音声認識の誤りも要約の外れ方も想定しやすく、確認にかかる手間が読めます。加えて、書き起こし、下書き作成、電子カルテへの取り込みという工程を途切れさせずに一本につないだ設計により、途中でファイルを移し替えるような手作業が挟まらない流れになっています。
患者側と看護側で設計の向きを逆にした点も、この取り組みに固有の工夫です。看護側は範囲を絞って精度と確認しやすさを取りにいく一方、患者向けの問診では会話形式を採ることで、あらかじめ決めた項目以外の症状も自然に出てくる余地を残しています。集めた内容を電子カルテと連携させ、グラフやサマリーの形で一か所にまとめる設計が、患者が書いた情報を医療者が使える情報へ変える橋渡しになっていると読み取れます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
看護音声入力生成AIは、従来の手入力との比較検証で記録に要する時間が約40%短縮され、およそ8割の記録について「AIを用いた方が優れている」との評価が得られています。この結果を踏まえ、1日1病棟あたり17分の看護カンファレンスと、1人あたり2分の電話サポートの記録時間を約40%削減することが目標として掲げられました。問診生成AIについては、診察時の症状ヒアリングを最大25%軽減し、その分を深い対話や治療方針の検討に充てられることが期待されている段階です。
うちでも使える?
会話や口頭のやり取りが先にあり、そのあとで文書に起こし直している業務であれば、考え方は業種を問わず応用できます。定例の打ち合わせ記録、電話応対の履歴、点検や作業の報告書など、話す内容の範囲がある程度決まっている場面ほど相性がよく、確認の負担も見積もりやすいでしょう。
一方で、この事例の要点は自動化そのものよりも、下書きを誰が確認し、誤りをどう修正へ回すかという一連の運用にあります。記録が公式な文書として扱われる業務では、確認する人の権限と手順が決まっていなければ、AIの下書きは宙に浮いたままになります。話題が毎回大きく変わる会議や、その場の判断根拠を細かく残す必要がある業務も、下書きの手直しが増えて効果が出にくい領域です。
始めるなら、次の定例会議で「会議中のメモ」と「あとから清書した時間」を分けて計ってみてはいかがでしょうか。後者に何分かかっているかが見えた時点で、自動化する価値のある工程かどうかは判断できます。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター
出典・参考情報
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