実施 2024.09 ・ 更新 2026.08.17
東芝の対話AI、問い返しで曖昧な質問を具体化し成功率73.3%を検証
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 新人からの質問対応に手が取られる
- 入れたチャットボットが使われない
- 作業のコツがベテラン頼み
どのようなAIの取り組み?
回答をつくるAIと、その回答を採点するAIを組み合わせ、曖昧な質問を問い返しで具体化する対話技術を検証したAI取り組み
業種
総合電機メーカー(電機・製造)
取り組み領域
設備の保守点検現場での作業支援・問い合わせ対応
使ったAI
対話エージェント技術(応答生成AI+応答評価AI)
主な成果
曖昧な質問での正しい作業手順の提示成功率が30.0%から73.3%へ(検証段階)
総合電機メーカーの株式会社東芝が、設備の保守点検現場を想定した対話エージェント技術を開発し、その効果を検証しました。従来の「応答生成AI」に、新たに開発した「応答評価AI」を組み合わせた構成が特徴です。質問が入力されると、応答生成AIが回答の候補と、足りない情報を尋ねる問い返しの候補を複数つくります。続いて応答評価AIが、正しい情報だけを含んでいるか、冗長でないかという2つの観点で候補を採点し、最も点数の高いものを選びます。質問が十分に具体的であればそのまま回答を返し、曖昧だと判断された場合は問い返して情報を補わせる、という分岐を設けています。設備の保守作業中に生じた不明点への対処法を提示するユースケースで検証したところ、曖昧な質問から正しい作業手順を得られる成功率が従来技術を大きく上回りました。
出典:曖昧な質問でも適切に回答できる生成AIを用いた対話エージェントを開発-「応答生成AI」と「応答評価AI」の2つのAIの協調により実現。インフラ分野における経験の浅い作業者にも適切に作業手順を提示し業務効率改善に貢献- | 総合研究所 | 東芝 発行元:株式会社東芝
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
保守点検の現場では、設備の老朽化が進む一方で、熟練者の退職と労働人口の減少が同時に重なっています。経験の浅い作業者が単独で判断を迫られる場面が増え、作業中に浮かんだ疑問をその場で解消できなければ手が止まってしまう。生成AIを載せたチャットボット自体は広がりつつありましたが、具体的に質問しなければ的確な回答が返らず、曖昧な問いには不要な情報が混ざってしまう、という壁がありました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「AIが知識を持っていない」ことではなく、答えを引き出すための言語化という負担を、質問する側に丸ごと預けていたことにあります。何が分からないのかを正確に言葉にできる人は、たいてい自力でも答えにたどり着けます。本当に助けが要るのは、うまく言葉にできない人のほう。その層を置き去りにしていたことが、せっかく用意した仕組みが現場で使われなくなる根っこにあったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
回答をつくる役割と、その出来ばえを判断する役割を別のAIに分けた構成が、この技術の中心にあります。応答生成AIは回答候補だけでなく、追加情報を求める問い返しの候補も同時に複数出し、応答評価AIがそれらを採点して最良の一つを選びます。生成と品質判断を切り離したことで、一度で答えを出し切ろうとする設計では避けきれなかった「もっともらしいけれど余計な情報が混ざった回答」を、選ぶ段階でふるい落とせる構造になっています。
評価の観点を、正しい情報だけを含んでいるかという正確さと、冗長でないかという2点に絞ったことも効いていると考えられます。曖昧な質問ほど、AIの回答は関係しそうな情報を広く盛り込む方向に傾きますが、設備を前に手を止めている作業者にとっては、長い回答を読み解くこと自体が新たな負担になります。冗長さを明示的な減点対象として定義した判断は、正確さだけを追う評価軸では測れない現場での使いやすさを、採点可能な形に落とし込む工夫だと読み取れます。
質問が具体的ならそのまま答え、曖昧なら問い返すという分岐を、人間側ではなくシステム側の判断に委ねた点も見逃せません。この設計は、利用者に上手な聞き方を求める代わりに、足りない情報はシステムが尋ねて埋めるという役割分担へ発想を反転させています。質問の仕方に不慣れな作業者が使うという前提を、機能ではなく対話の進め方そのものに織り込んだ設計と言えます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
設備の保守作業中に生じた不明点への対処法を提示するユースケースで検証が行われ、曖昧な質問から正しい作業手順が得られる成功率は、従来技術の30.0%に対して73.3%まで向上しました。これは、はじめから具体的に質問した場合とほぼ同等の水準です。やり取りの回数は平均2.3回で、問い返しを重ねながら質問が具体化されていることも確認されています。今後は東芝グループ内の保守作業現場で実証実験を開始し、将来的な社外へのサービス提供も視野に入れられています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、聞き手のスキルにばらつきがあり、質問が漠然としがちな窓口業務です。社内ヘルプデスク、業務システムの操作サポート、代理店や取引先からの問い合わせ対応などは、質問が曖昧なまま投げ込まれる点で構造が似ています。逆に、問い返しに答えるための時間的余裕がない場面では相性が悪いかもしれません。高所や危険を伴う作業の最中、あるいは顧客を待たせている電話口では、2〜3往復のやり取りそのものが負担になります。
もう一点、注意したいのは評価の物差しです。この事例では正確さと冗長さという2つの観点が採点軸になっていますが、何をもって良い回答とするかは業務によって変わります。速さが最優先の現場もあれば、抜け漏れのなさが問われる現場もある。まずは自社のチャットボットに寄せられた質問ログを開き、答えられなかったものが「知識不足」なのか「質問が曖昧だったから」なのかを仕分けてみてはいかがでしょうか。後者が多いなら、AIから聞き返す仕組みが効く余地があります。
この事例は2024年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
出典・参考情報
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