実施 2024.11 ・ 更新 2026.08.17
生成AIで互換性の調査時間を約65%削減した三井住友銀行の実証実験
プロジェクト期間:半年未満
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- システム更新の影響調査に時間がかかる
- 大量の資料確認が手作業のまま
- 古い基幹システムの維持費が重い
どのようなAIの取り組み?
大量の技術文書からバージョンアップ時の非互換情報を生成AIに抽出させ、検証フェーズで所要時間を約65%削減した共同実証の事例
業種
銀行(金融)
取り組み領域
基幹システムの更新・移行作業
使ったAI
生成AI(文書からの情報抽出)
主な成果
検証フェーズで非互換情報の抽出時間を約65%削減
三井住友銀行の基幹システムを支える基盤ソフト、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のバージョンアップを対象に、株式会社日本総合研究所と富士通株式会社が生成AIを使った共同実証を進めています。工程は検証と実行の二段構え。検証フェーズでは、富士通が開発した生成AI活用の独自システムを用い、リリースノートなど大量の技術文書から、更新後に従来どおり動かなくなる可能性のある箇所、いわゆる非互換の情報を約400個抜き出しました。そのうえで、C言語とbashシェルで書かれた約380キロステップ規模のアプリケーションについて、どこが実際に影響を受けるのかを特定しています。続く実行フェーズでは、洗い出した非互換情報をもとに、ソースコードの修正作業そのものにも生成AIを適用する取り組みが続いています。
出典:日本総合研究所と富士通が、三井住友銀行のシステムバージョンアップに生成AIを用いた共同実証で生産性向上を実現 | 株式会社日本総合研究所のプレスリリース 発行元:株式会社日本総合研究所
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
基盤ソフトのバージョンアップでは、更新によってどこが動かなくなるかを事前に見極める作業が避けて通れません。金融機関の基幹システムは止まること自体が重大な事故につながるうえ、経済安全保障推進法に基づく特定重要設備を保有する立場となれば、安定稼働を保ちながら更新を進める要求はいっそう強くなります。その調査は、リリースノートなどの技術文書を人の目で追い、自社のプログラムに関わる記述を拾い上げる形で行われてきました。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は文書の量そのものではなく、見落としがゼロであることを人手だけで保証しなければならない構造にあったのではないでしょうか。一件でも取りこぼせば停止リスクに直結するため、担当者は重要度の判断がつかない記述にも同じ密度で目を通すことになります。時間がかかるのは作業が多いからというより、手を抜ける箇所が一つもない点に理由があったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
生成AIの担当範囲を、技術文書から非互換の情報を拾い出す工程に絞り込んだ設計が、まず効いていると考えられます。バージョンアップ対応は、情報の抽出、影響範囲の判断、修正、動作確認と、性質の異なる作業が連なる仕事です。そのうち文書の読み込みは、量が膨大なわりに探すものの型が定まっている部分であり、機械に向いた領域を先に切り出した格好になります。担当範囲が明確であれば、人がAIの出力を確かめるときの観点も、抜けと誤りの有無という一点に定まります。
抽出した非互換情報を、C言語とbashシェルで書かれた約380キロステップ規模のアプリケーションに突き合わせ、影響箇所の特定まで一続きの工程として扱った点も見逃せません。一般的な変更点の一覧を手にしても、それが自社のどのコードに刺さるのかが分からなければ、結局は人が全量を追うことになります。自社の資産に接地させて初めて調査が前に進むという順序を、工程の組み立てに反映させた設計だと読み取れます。
検証と実行を分け、抽出の品質を見極めてからソースコード修正へ適用範囲を広げる段取りも、この領域では理にかなっています。止められないシステムを相手に、いきなり修正まで任せる進め方は取りにくい。加えて、システム開発を担う日本総合研究所と、生成AIを組み込んだ独自システムを開発した富士通が組む体制は、業務側が持つ勘所とAI側の作り込みを一つの検証の中で突き合わせられる形になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検証フェーズでは、従来は目視と手作業で精査していたリリースノートからの非互換情報の抽出について、所要時間を約65%削減しています。ソースコード修正への適用は実行フェーズとして進行中であり、その効果はまだ確定していません。今後は品質評価の結果をもとに、大規模な金融システムで得た知見をグループ内のさまざまなシステム開発プロジェクトへ広げていく方針が示されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、更新による変更点がベンダーの文書としてまとまって公開されていて、影響を受ける側の資産、つまり自社のプログラムや設定が特定できる形で残っている場合です。読ませる材料と突き合わせる対象がそろっていれば、業種は問いません。レガシーシステムの移行やミドルウェアの入れ替えなども同じ構図に当てはまります。
反対に、変更点が文書化されておらず担当者の記憶や口頭の申し送りに頼っている場合や、設計書と実際に動いているコードが食い違っている場合は、AIに渡す材料の段階でつまずきます。抽出結果の正誤を最終的に判断できる技術者が社内にいることも前提条件です。まず試すなら、次の更新で読むことになる資料を一本だけAIに読ませ、自分が拾った変更点と照らし合わせてみる。取りこぼしの傾向がつかめれば、任せられる範囲の輪郭が見えてきます。
この事例は2024年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:情シス・社内DX
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日本総合研究所
情報通信業。本社は東京都品川区、代表取締役社長は谷崎勝教。資本金100億円、未上場。大規模金融システムの知見やノウハウを活かし、SMBCグループのシステム開発プロジェクトに取り組む。
株式会社三井住友銀行
出典・参考情報
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